寒い日が続く冬場に気を付けなければいけないのが「ヒートショック」だ。内科医の梶尚志さんは「高血圧や糖尿病といった基礎疾患がある人や、寒冷への感覚が鈍くなっている高齢者は特に注意が必要だが、41℃以上の高温で長風呂をする若い世代にもリスクがある」という――。
風呂
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入浴中の事故が増えるのは11~2月

今の季節、私たちの身体は気温の急激な変化にさらされます。近年、冬場の入浴中やトイレで発生する「ヒートショック」と呼ばれる現象が、大きな健康リスクとして注目されています。

今回は、ヒートショックとはどのような体の状態のことをいうのか、そして、そのメカニズムと効果的な日常生活での予防策について詳しく解説します。

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる現象によって、失神や心筋梗塞、脳卒中などの重篤な症状が引き起こされることです。

冬場の暖かいリビングから冷えた浴室やトイレといった空間での急激な温度の変化によって発生しやすく、高齢者や基礎疾患を抱える方々にとって致命的な結果をもたらす可能性があります。

日本の「寒い家」が引き金となる

日本の冬は気温が低く、屋内と屋外の温度差が大きくなります。この温度差が、身体にとって大きなストレスとなります。また、日本の住宅構造の影響もあります。

日本の住宅では、浴室やトイレが十分に暖房されていないことが一般的です。これにより、暖かいリビングルームから寒い浴室へ移動する際、身体が急激な冷気にさらされます。

国立循環器病研究センターの報告によると、寒冷環境が血管収縮を促し、急激な血圧上昇を引き起こすことが確認されています(※)

※週刊日本医事新報 4827号

このような背景から、高血圧や糖尿病、動脈硬化といった基礎疾患がある方、年齢が高い方は、血管の柔軟性の低下が、気温の変化に伴う血圧の急激な変化に耐えられないことが示唆されています。また、高齢者は感覚が鈍くなり、寒冷刺激に対する感覚が低下することもリスク要因となります。