2024年にフジテレビを退社した元アナウンサー渡邊渚さんによるエッセイ『透明を満たす』(講談社)が1月29日に発売。たちまちベストセラーとなって書店では売り切れとなっている。その本を読んだコラムニストの藤井セイラさんは「5万字あるエッセイでは、若い女性がパワハラ色が濃く残るTV業界で働き、その結果、受けた傷について書かれている」という――。

ヤフコメは二次加害の嵐「PTSDなのにグラビア写真か」

1月29日発行の『透明を満たす』(著・渡邊渚、発行・講談社)を読んだ。フジテレビを2024年に退職したフリーアナウンサーによる初書籍だ。

この本のレビューがとにかく荒れている。Yahoo!ニュースのコメントからいくつか拾おう。
「グラビア写真を公開するなんて、PTSDとは思えない」
「タイトルの“透明さ”とは真逆の印象」
「金になるのが正義というやり口がどうしても伝わってしまう出版」
「いつかブックオフで100円になっていたら読みたいと思います」

詳細は書かれていないが、この書籍の主軸は、渡邊渚さんが仕事の延長線上で、ある出来事に遭遇し、そこからPTSDを発症、過酷な入院生活を送り、精神科治療を受け、日常生活を取り戻すまでをつづったエッセイだ。

心的外傷を受けて立ち直ろうとしている人に対する、これらのコメントこそ、まさにいま問題となっている「二次加害」だろう。

渡邊渚さんが入社したフジテレビ
撮影=プレジデントオンライン編集部
お台場のフジテレビ社屋

男性向けの写真との噂も、露出は少なく内容とリンク

フォトエッセイと銘打たれ、事前の噂では「男性向けのグラビア」との話もあったが、肌の露出は比較的少なく、長袖・ロングパンツの写真もある。

むしろ5万字エッセイを通読してから写真を見直すと、スタイリングやロケーションが文章の内容とリンクしていることに気づかされる。

例えば、読書をしている写真。

渡邊渚さんは、幼い頃から家で母親に「古典・名文の音読」をするようにしつけられており、それがアナウンスの基礎にもつながった、とつづっている。
 その原点に立ち返る意味で、早逝の女性詩人・金子みすゞの詩集を手に持っているのだ、と読後なら理解できる。多くの写真に、そのような仕掛けがほどこされているようだ。

とはいえ、ベッドルームで真っ白なパジャマシャツを着用している一連のショットは、肌の露出が多めだ。しかしエロティシズムを感じさせるというより、自然光が回りこみ、女性誌風の撮り方で、特に男性向けという印象はない。