今回は逆ナンとかではなく、月島でもんじゃ焼きを食べた話です。
姉「ねえ、今度お父さんとあたしたちと3人で箱根に旅行に行かない?ほら、紅葉とか綺麗だろうし・・・」
暇「いいよもうそういうの」
姉「・・・え?」
私には母親がいなかったので学校から帰って話す相手も用事を頼む相手も父だけだった。
父の関心を引きたくて勉強も絵も作文も頑張った。とりたてて喜んでくれることも褒めてくれることもなかったが、それ以外にどうすれば振り向いてもらえるのか分からなかった。
私にとって父は絶対的な存在だったので反抗なんてする気も起きなかった。父の言うことはすべて正しいし私の考えることの方が間違っている。色々なことがうまくいかないのもきっと全部自分が悪い。
「大人しい子どもだねえ」等とイヤなことを言われたり、食べられない量のご飯を無理やり食べさせられるからお婆ちゃんの家には行きたくなかったけど、そんなことを言えばお父さんを困らせることになるので黙って行った。
父と姉は気が合うのか、よく二人だけで話していることが多かった。
どうしてかは分からないけれど父と姉はよく一緒になって私のことを笑ったり馬鹿にしたりすることがあった。
友だちの作り方は分からなかったので近所の猫とよく遊んだ。
誰かに愛されていると感じたことはなかったが、学校の先生も近所のおばさんも「あなたのお父さんは真面目で良い人。恵まれている」と言っていたので自分は恵まれているのだと思いこんだ。わたしは恵まれている。
お婆ちゃんの望む「溌剌とした元気な子ども」にはなれないまま、私は中学生になっていた。
そして、私はこの頃から学校に行かなくなった。
中学二年生あたりから色々なことに対するやる気が失せて引きこもるようになった。学校にはもちろん行けないし、家族と一緒に食事をとることもやめた。
「・・・いつかは学校行ってね」
バタン
「全部お前らのせいだ」
「私の人生はもう滅茶苦茶だ」
・・・・・
「ねえねえ」
※「ジャクソン」=大学生の時のあだ名
「あ…夏休み? わたし、マイケルジャクソンの家とか行ってみたい」
「なにそれ!チョーうけるんだけど。あたしなんか実家帰る予定しかないよ~」
逃げるようにして東京の大学に進学したあと、実家を思い出すことはほとんどなくなっていた。電話も必要な時以外はかけなかったし、父からもかかってくることはなかった。
冒頭の姉からの電話はつい最近のことだ
「箱根がいやなら、ご飯でも食べよう。そうだ、お父さんにスカイツリー見せてあげようよ。そんで月島でもんじゃ食べてさ……ねっ!決まり」
そのもんじゃ焼き屋は狭くて汚くて階段も急だった。3人で外食と言えば近所にあるラーメン屋かチェーンのファミリーレストランで食べた記憶しかなかったので、座敷で所在なさげにする父を見るのは不思議だった。
お酒を飲んだら怒られるのではないかと思ったが、何も言われなかった。そういえば20歳なんてとうの昔に超えていたのだと気づく。
父「なんか・・・あんまり食べてる感じがしない。お菓子食ってるみたいだな」
姉「そういうもんなのよ・・・」
食べるのが遅くていつも叱られていたが、もんじゃ焼きを食べるのは父より私の方が得意なようだった。
「・・・お姉ちゃんがお嫁に行っちゃうなんてな。時間の経つのは早いこと」
「お前たちがまだ小さい頃は、お母さんが死んだばっかりで、お父さんひとりで訳も分からないまま無我夢中で育てた・・・仕事にもいかないといけないし・・・本当に辛かった。でも子供ってのはなんやかんやで立派に育っていくもんなんだな。お姉ちゃんは結婚。ひまちゃんは・・・・・・」
「おまえ・・・まだ書いてるのか? なんか文章を。インターネットで」
「・・・書いてるよ」
「・・・そうか。頑張ってるんだな」
「お前は昔から好きだったからな。書くのが」
「そうそう。お父さんの性質は全部あんたに受け継がれたのよ。あたしは理系だし全然似なかったけど・・だからちょっと羨ましかった」
「いいか。良い文章を書くにはインプットの量が大切だ。たくさん本を読みなさい。お前にはまだまだポテンシャルはあるはずなんだから」
「…それから、余裕ができたら帰って来て、お母さんのお墓に参んなさい。仕事が忙しいなら別にいいけど・・・。まあ、どういうのを書いてるか、お父さん全然知らないけど」
「そうよ、ねえ、いい加減なんていうブログ書いてんのか教えなさいよ」
「・・・・・・やだ。」
その日、家族と一緒に忘れられないもんじゃ焼きを食べた。
暇な女子大生(id:aku_soshiki)
「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を書いている女子大生もといフリーライター。好きな男性のタイプは洗濯物の畳み方が几帳面そうな人で、好きな食べ物はエビチリです。
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