大沢たかお、どんな漫画にも染まれる“白”の存在感 『キングダム』王騎将軍で見せた覚悟の肉体改造
大沢たかおが20kg増量で挑んだ王騎役
大沢たかおが、第67回ブルーリボン賞において、助演男優賞を受賞した。『キングダム 大将軍の帰還』における、王騎将軍役を評価されたのだ。大納得である。さすが、選者である東京映画記者会のみなさんはよくわかってらっしゃる。大沢たかお自身は、「映画とエンタメの神様からのごほうび」と謙虚に語っているが(※1)、あの作品を観て涙した多くの『キングダム』ファンから言わせれば、当然の結果だ。
今だから白状するが、当初「『キングダム』映画化決定! 王騎将軍役は大沢たかお!」と聞いた時は、「いやいやいやいや」と思った。当時の大沢たかおの役柄の印象は、憂いを帯びた青年である。世界の中心で、愛をさけんでいるイメージだった。また、彼が「機長」を勤めていた頃の『JET STREAM』(TOKYO FM系)を愛聴していたこともあり、落ち着いたいい声で喋る印象も強かった。王騎将軍要素は微塵もない。『MEN‘S NON-NO』(集英社)体型の王騎将軍なら、勘弁してほしい。ナチュラルにデカい俳優なら、他にいるだろう……。
王騎将軍は、あの世界観での“力”の象徴であり、主人公が乗り越えねばならない大きな大きな壁でなければならない。『北斗の拳』でのラオウ、『魁!!男塾』での大豪院邪鬼のような存在だ。そのオーラのせいで、3mぐらいに見えなければならない。
なぜかこちらが緊張しながら観た『キングダム』第1作。そこにいたのは、まぎれもない王騎将軍だった。大沢たかおは、CGにも特殊メイクにも頼ることなく、自力でデカくなっていた。ちゃんと3mぐらいに見えた。モテる体になるために筋肉だけで増やすのではなく、脂肪もひっくるめて短期間で20㎏増量した。朝からステーキを食べ、プロテインにアイスクリームや生クリームを混ぜたものを飲んだという(※2)。大相撲やプロレスの新弟子のようなバルクアップ法である。もちろん、体には相当悪い。確実に寿命を縮めている。王騎将軍の死には涙したが、大沢たかおの健康長寿を考えた場合、これで良かったのだとも思う。あとは、鈴木亮平の心配をしよう。
1作目でも十分にデカかった王騎将軍だが、その肉体は回を追うごとに成長し続けていた。王騎将軍の鎧はノースリーブなので、腕の太さにごまかしが効かない。最新の『大将軍の帰還』においては、もはや肩から脚が生えているようであった。ぐんぐんデカくなるので、その度に鎧を作り直さねばならなかったようだ(※3)。衣装さんに同情してしまう。