「全部明け透けに書いた」芸人・川西賢志郎ーーM-1、海外、そして未来、漫才師の肩書が外れて今思うこと

芸人・川西賢志郎 エッセイについて語る
川西賢志郎『はじまりと おわりと はじまりと ―まだ見ぬままになった弟子へ―』(KADOKAWA)

 2016年から3年連続で『M-1グランプリ』準優勝を果たすなど、漫才コンビとして輝かしい実績を築きながら2024年3月に解散した和牛。そのひとり、川西賢志郎のエッセイ本『はじまりと おわりと はじまりと ―まだ見ぬままになった弟子へ―』(KADOKAWA)が2月15日に発売される。

 それに先駆けて、本にまつわるエピソード、M-1連覇を果たした令和ロマンや自身が作って来た漫才をめぐる話、日本と海外で異なる笑いの文化、今後のヴィジョンなど、現在の率直な思いを語ってもらった。

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■思考を言語化する気持ち良さ

ヘアメイク:山内マサヒロ スタイリング:神山トモヒロ

――新刊、想像以上の読み応えでした。本を執筆する中でご自身の思いや考えが整理されていった部分もありますか?

川西:気持ちの整理がついてから本格的に執筆を始めたので、書いていく中で変わっていったみたいなことはないです。正式にコンビを解散するまでの段階を踏んで、その間にじっくりと素材を揃えて、1年くらいかけて今回の本に向かっていますからね。

 ただ、もちろん今一度自分の歩みを具体的に書きながら、思考を言語化できた気持ち良さはあります。書くって作業は大変だと思ってたけど、想像以上に大変で。書き終えた後は本当にスッキリしました!

――「思考を停止せず、自分の感性を大事に」というメッセージがすごく伝わって来ました。芸人を志す前から、常識を疑ってみたり言葉に敏感だったりしたのでしょうか?

川西:厳密には芸人を始める前からあったんだと思うんですけど、その性質を育んだのはお笑いでしょうね。芸人をやっていく中で「どうやったら笑いになるんだろう」「何でこれを面白いと思ったんだろう」とかってことを突き詰めて考えるようになったんだと思います。

 良いのか悪いのかわかりませんけど、その都度「言語化する」って作業を繰り返す中で、もともと自分の中に備わっていた性質がどんどん開花していったというか。言葉に対する執着であったり、「自分は言葉が好きな人間なんだな」って感覚は、芸人になって改めて気付きましたね。

■M-1王者たちへの影響

――昨年は、令和ロマンがM-1連覇を果たしました。1本目にしゃべくり漫才、2本目に漫才コントを披露しての優勝は、歴代王者からすると珍しいパターンですよね?

川西:「本来はこういうスタイルだ」ってことが、僕はあんま気にならないんですよね。たぶん、それは(髙比良)くるまくんのボケ方に一貫したものを感じるからだと思う。それに1本目でも、「保護者会で漫才したいだろ!」とかって笑いをとりにいくフレーズは、ちょっと素のくるまくんとは違うコミカルな言い方じゃないですか。

 やっぱり、部分的にはコントっぽい。だから、そこまで違いを感じないんだと思います。くるまくんが“くるまくんらしくないことをしたとき”には観ている側にも違和感があるんだろうけど、決勝の2本とも「この子やったらやりそうやな」って思わされる漫才でしたからね。

――昨年発売された髙比良くるまさんの『漫才過剰考察』(辰巳出版)、NON STYLE・石田明さんの『答え合わせ』(マガジンハウス新書)では、どちらも川西さんたちの漫才がM-1に与えた影響の大きさについて触れられています。

川西:僕らとしては、「コントの手法を取り入れてやろう」なんて意識で漫才を作ってたわけじゃなくて、自然と「このネタはコント形式がいいか」となっていっただけです。

 例えば、2019年のM-1決勝でやった不動産屋の漫才。物件を去るたびに2人でステージ後方に歩くあのネタを見て「舞台を横にも縦にも使う点がよく考えられている」とか言う人がいるけど、僕らは考えてそうしたんじゃないんですよ。まず全体の流れがあって、演出をかけていく中でそうなっただけなんですよね。

 もちろん、「どっちに動こうか」「どういう呼吸でお辞儀を揃えようか」みたいな細かいところは、すごい意識して作ってます。ただ、そこはネタの精度とか演出の部分で、最初から「縦の動きを入れたほうが面白い」と思ってネタを作ったわけじゃないんです。

 とはいえ、1回だけ狙いにいったときもあって。「昨年こんな感じやったから、もっとポップにこういう感じの……」と作ったら何にも面白くなかった(笑)。たぶん、そういう気持ちで作ったネタってどっかでバレますよ。狙いが透けて見えて「面白い」を食って来ると思う。

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