『量産型リコ』第3作は“私たち”に寄り添う物語に 与田祐希の真剣な眼差しに射抜かれる
乃木坂46の与田祐希が主演を務めるドラマ『量産型リコ』シリーズ(テレビ東京系)が完結してはや5カ月が経とうとしている。もう続編が出ないと思うと悲しい気持ちになるが、ファン待望のシリーズ3作目『量産型リコ -最後のプラモ女子の人生組み立て記-』のBlu-ray&DVD BOXが12月6日に発売される。
本作はどこにでもいる至って普通の主人公・小向璃子(与田祐希)が、あるきっかけでプラモデルと出会い、様々な人たちと心を通わせながら成長していく物語。シリーズを通して、『ポケットに冒険をつめこんで』(テレビ東京系)や『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)と同じBABEL LABELの畑中翔太が企画・プロデュースを手がけており、乃木坂46ファンにとっては馴染みがあるかもしれない。
2022年にシリーズ第1作目となる『量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-』が放送されると、アイドルファンやプラモデルファンから大きな反響を呼び、2023年には続編となる『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』が放送された。2作目はスタートアップ企業「ドリームクレイジー」の社長となったリコがプラモ作りを通して、企業人として成長していく、大幅にスケールアップした作品になっていたが、1作目の温度感はそのまま維持されており、前作のファンも継続して楽しめる作品となった。
3作目は自然豊かな田舎が舞台。祖父の死をきっかけに実家に帰省したリコが、遺品となっていたプラモデルの「ガンダム・バルバトス」を完成させるために、矢島模型店へと向かう。きっかけこそこれまでと異なるものの、プラモ作りを通してリコが周囲の人と心を通わせていくというストーリーの軸は同じだ。だが、本作では「家族」がテーマということで、リコが家族と向き合い、そして絆をより深めていく過程が丁寧に描かれており、最終話を観た後にはじんわりと目頭が熱くなるような作品となっている。
3作目には主演の与田祐希をはじめ、田中要次やマギー、与座よしあき、望月歩など、過去シリーズの俳優たちも出演しているが、パラレルワールドという設定上、過去作とのつながりはない。しかし、別の世界線とのつながりを思わせる小ネタもあり、シリーズファンも楽しめるのが嬉しいところだ。
本作で印象に残るのは、リコがおなじみの矢島模型店でプラモデルを作るシーンである。第1話では、リコが祖父の作りかけのプラモデル「ガンダム・バルバトス」を作ることになる。毎回、やっさんこと矢島一(田中要次)によるプラモデルの説明に始まり、「ご開帳ー!」という恒例の掛け声とともに、プラモデルの箱を開けて、プラモのパーツを一つひとつ丁寧にニッパーで切り離していく。プラモデルのファンであっても退屈になってしまいそうな映像ではあるのだが、それでも最後まで見られてしまうのは、ニッパーで切る際に発生するリズミカルな音の心地よさはもちろん、主演の与田が真剣なまなざしでプラモデルと向き合っている姿が絵になるのだ。与田のプラモデルに没頭する表情からは息遣いまでもが聞こえてきそうで、手に汗握る緊張感とともについ最後まで見てしまう。そして作り終えたときには、同じような達成感を得ることができる。「アイドル」×「ホビー」の掛け合わせがここまで相乗効果を生み出すとは、本作に出会うまでは想像すらしていなかった。