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「今年こそ、『使える英語』を身に付けよう」と誓い、テキストを買っては挫折する――。そんな経験がある人は少なくないはずだ。本当に実践に役立つ英語を効率的に身に付ける方法はあるのだろうか。

本書『脳を活かす英会話』は、生成AI(人工知能)を使った学習法、ビジネス英語のノウハウ、プライベートの会話におけるラリーの続け方など、実践的な英語の「効率的な」学習法を紹介する。英語のプレゼンを気持ちよく始める第一声、会議で自分の意見を言いたいときに、周囲にいやな印象を与えない割り込み方など、かゆいところに手が届く文例が豊富なのが特徴だ。

著者の星友啓氏は、米国の中高一貫校スタンフォード・オンラインハイスクール校長としてテクノロジーと教育の実践の最前線で活躍する人物。同校はオンライン学校でありながら全米トップの進学校として知られる。24歳で渡米し、テキサスA&M大学哲学修士修了、スタンフォード大学哲学博士修了の経歴を持つが、当時、自然な会話に苦労した経験が本書に生かされている。

ChatGPT相手に実践的レッスン

まず著者は、日本人が英語の発音や文法にこだわり過ぎていると指摘する。日本における英語のテストでは、単語の発音やアクセントの場所を問う問題が頻出する。しかし実際には、「seat」「sit」のように母音の音が長いか短いかが重要である一方、アクセントの違いや日本語なまりの発音は、理解に支障がないことが研究からわかっているという。

たしかに、日本語にも地域によってアクセントが異なる単語は多くあるし、外国語なまりの日本語も、意味を理解するのに支障は少ない。英語の上達には、ネーティブ英語にこだわる従来の学習法から解放されることが最も大切だと、著者は述べる。

不要なこだわりを捨てたあとは、アウトプットの機会を増やすことがカギになる。国際交流バーや英会話カフェに足を運び、対面で人と会話するのが早道という。とはいえ、ハードルが高いと感じる人も多いだろう。そこで役立つのが、生成AIを使った独学法だ。

無料の範囲で十分使える。例えば、Chat(チャット)GPTのアプリをインストールし、マイクを使って会話するもの。「私は英会話の初心者です。今日はあなたと英会話の練習をさせてください」と日本語で話しかければ、挨拶から自然な英会話を続ける練習ができる。さらに、ChatGPTにレストランのウエーター役を頼み、自分が客の設定で話をするなど、場面を設定して練習するのも効果的という。本書では、就職面接、空港での対応、銀行業務など、おすすめの設定18パターンを紹介する。

実際に、スマホのChatGPTアプリで試してみた。生成される英語は文字になって表示されるので、聞き取れなかった単語の確認や、スペルチェックも可能だ。本書にも紹介される通り、会話を終えたあとに良かったところや改善点を聞けば、褒めてくれるので自信がつくし、アドバイスもくれる。誰にも聞かれることなく練習でき、繰り返すうちに失敗への抵抗も減っていく。

このほか、ChatGPTに自分だけの単語の復習テストを作ってもらったり、オリジナルのリーディングやリスニングの問題を作ってもらったりする方法も紹介される。自分の苦手分野を強化できるようカスタマイズや改善もでき、まさに「効率的」独学法だ。英語の勉強法もテクノロジーで進化していることを実感する。

「みんなで頑張ろう!」は何と言う?

ビジネスパーソンは、英語の会議やプレゼン、さらに普段の何気ない雑談における英語の瞬発力を身に付けたいという方も多いだろう。誰かの圧倒的なパフォーマンスのあとに「みんなのハードルが上がっちゃいますね!(You're raising the bar for all of us.)」と一言添えられればスマートだ。「みんなで頑張ろう!」と言うときの頻出フレーズ(We're all in this together.)など、ネーティブの使う自然な表現も知っておきたい。

プレゼンについては、自信がなさそうに見えたり、誤解を与えてしまったりする「NGフレーズ」は必修だ。さらに、本題に切り込んでいくための常套(じょうとう)句、クロージングの決まり文句ベスト5など、ここでも徹底的に実用的な例が、それぞれ複数パターン記される。

会議も慣れるまでは口を挟みにくいものだが、「あなたの意見が聞けたら幸いです(I'd love to hear your input.)」などは、初歩的な英語で参加者の発言を促せる便利な一言なので、覚えておきたい。

日常で自然な会話をつなげるテクニックも豊富だ。例えば「なるほど(I see.)」「そうですね(Right.)」「たしかに(Certainly.)」といった合いの手のフレーズは、複数覚えておけば自然な相づちが打て、会話を続けてもらいやすくなる。会議の休憩時間やパーティーの席の雑談では、気まずい沈黙を避けるスモールトークのネタや切り出し方も役立ちそうだ。

英語の学び方は、一昔前に比べて各段に進化している。最新のテクノロジーや知見を活用した効率的な学習法を、試してみてはどうだろうか。

(情報工場エディター 前田真織)

情報工場
広い視野と創造力を育成する「きっかけ」として、様々な分野から厳選した書籍をダイジェストにして配信するサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を展開している。「リスキリングbooks」は、「SERENDIP」で培った同社ならではの選書力を生かし、リスキリングに役立つ書籍を紹介する。

脳を活かす英会話 スタンフォード博士が教える超速英語学習法 (朝日新書)

著者 : 星 友啓
出版 : 朝日新聞出版
価格 : 990 円(税込み)

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