DX人材への第一歩、国も推す3つのディーライト資格 受験者はうなぎ登り
デジタル迷子のリスキリングデジタルトランスフォーメーション(DX)時代を迎え、リスキリングを迫られながら、何をどのように学んだらいいか分からないと悩む人は少なくない。そこで「デジタル迷子のリスキリング」という連載をお届けする。第4回では、ITの人材教育・研修サービスを手掛けるトレノケート社長の早津昌夫さんと人材育成コンサルタントとして、数多くのクライアントのDX人材育成を支援してきた三浦美緒さんにDX人材に求められるリテラシーやスキルについて対談してもらった。
ITパスポート、G検定、DS検定でDXリテラシー向上
早津 生成AIをはじめとする革新的な技術が次々と登場しています。このような技術変革を推進するために、国や企業はリスキリングを促し、DX人材の育成に努めています。しかし、「DX人材」と一言で言っても、その範囲は非常に広い。DX人材に求められる具体的な要件や評価の指標があれば教えてください。
三浦 DX人材とはそもそも何か、どう育成しようか、と迷っている企業は少なくありません。その一助として、経済産業省がまとめている「デジタルスキル標準(DSS)」が役立つと思います。この中にはDXに関わる全てのビジネスパーソンが身につけるべき知識とスキルを定義した「DXリテラシー標準(DSS-L)」と、実際にDXを推進する人材を定義した「DX推進スキル標準(DSS-P)」の2つがまとめられています。これらの標準は、分かりやすく説明されており、非常に役立ちます。
早津 DX人材になる前提条件としてリテラシーを身に付けることが必要ですが、そのためには具体的に何を学べばいいですか。
三浦 体系的な知識の土台を学習するには、まず資格取得を目指してみるのも良いでしょう。経済産業省が支援する「Di-Lite(ディーライト)」と呼ばれる3つの基礎的なIT資格があります。1つは「ITパスポート」というITの初級国家試験です。次は「G検定」ですね。これは日本ディープラーニング協会が実施するAIに関する民間資格です。最後は「データサイエンティスト(DS)検定」ですね。この3資格を取得すれば、IT、AI、データ分析のリテラシーが身についていることを客観的に評価されやすくなります。
資格取得をおすすめするのは、リテラシーは身につけてすぐに具体的な成果につながるわけではないので、勉強の達成度合いが分かりにくい面があるためです。その点、資格取得であれば、一定以上の知識があることを客観的に測ることができます。
早津 デジタル分野以外の仕事をしてきた一般のビジネスパーソンでも取得は可能ですか。
三浦 ITパスポートは、プログラミングなどの実践的なITスキルを問うものではなく、デジタル関連の基礎知識を問う試験です。一般のビジネスパーソンの受験者もかなり増えています。勉強時間は50~100時間と言われます。15時間程度の専門の研修を受ければ、20~30時間の独学でも合格は可能でしょう。
G検定は、身近なテーマを含む幅広い内容を試験問題として取り扱っていますが、AIの歴史や専門用語も含まれるので、最初は難しく感じるかもしれません。DS検定は数学Ⅰ以上の知識はあった方がいいと思います。数学に苦手意識のある方は時間を要するかもしれません。
最近、政府は「DX推進パスポート」と称して、この3つの試験合格者にデジタルバッジを発行して、普及を促しています。このバッジがあれば、社内でDX事業の担当者として手を挙げたり、アピールしたりしやすくなるかもしれません。