「それ、手抜きだよ」社会人1ヶ月目で学んで今でも大切にしていること
「xxx君。それ、手抜きだよ」
とあるIT企業になんとか就職して1ヶ月。
ようやく仕事に慣れてきたと思いはじめた頃。
必死になってキーボードを叩いていた僕に向かって、チームリーダである杉田先輩が冒頭の言葉を投げかけてきた。
「えっ...(そんなつもりじゃ...)」
困惑した表情を浮かべる僕の心を見透かすように、杉田先輩はこう続けた。
「xxx君は一生懸命やっているつもりかもしれないけれど、そのやり方では非常に効率が悪い」
「この一ヶ月、xxx君がどうしたら効率よく作業が出来るようになるか、何度かアドバイスしてきた。でもxxx君はそれを全く実践していない。もう少し自分でも考えて」
「これはお勉強じゃなくて仕事なんだから。決められた期間内に終わらないといけないんだよ。その中でいかに効率よく出来るか考えないのは、手抜きと同じだよ」
作業は効率よく終わらせるべき。
当たり前のことだ。
だけど、ひたすらガムシャラにやっていた当時の僕にはそんなことも分からなかった。同時期に入社した新人の中でも作業スピードが遅いほうなのは分かっていたけれど、その分残業してカバーすれば良いとすら思っていた。
「そんなので残業してても頑張ってるって言えないからね」
そう言い残して、杉田先輩は自分の席に戻っていった。
正直なところ、当時の僕は
「そんなこと言われても、遅いものは遅いんだし、すぐには出来ないよ...」
と少々ふてくされていた。
だが、仕事を続ければ続けるほど杉田先輩の言葉の重要さが身にしみて分かってきた。
いかに効率よく作業のサイクルをまわすか?
時間のかかることが当たり前で、今が限界だなんて簡単に思わないこと。
常に模索すること。
それが将来的には自分を助けてくれるようになるのだ。
あれから10年近くがたった。
作業が行き詰まったり、忙しくて余裕がなくなった時。
ふと我に返った瞬間に、僕は杉田さんの言葉を思い出す。
そしてそっと自分に問いかけるようにしている。
「それ、手抜きじゃないか?」
(終)