彼(山中さん)も何か思うことがあるのだろう。僕からは何も聞けなかった。冬の空気はひどく澄んでいて、ひどく悲しい色をしていた。それにしても、いつも一緒に居た人(猫)が居なくなるというのはどういう気持ちなのだろう。僕には想像することも出来ない。ただわかるのは、そこにある“現実”と、残された“想い”。「何て顔をしてるんだ? 北極に置き去りにされた犬みたいな顔をしてるぞ?」山中さん(猫)はチーズの入ったササミのようなものを食べながら僕を見て笑った。…置き去りにされたのは南極だが、僕は笑顔を保ち、山中さん(猫)と少しばかり世間話をして、帰路についた。「あいつはいつも、“唄うように” 鳴くんだ。」山中さん(猫)のひとことが耳の奥で鳴り響いていた。
彼(山中さん)も何か思うことがあるのだろう。僕からは何も聞けなかった。冬の空気はひどく澄んでいて、ひどく悲しい色をしていた。それにしても、いつも一緒に居た人(猫)が居なくなるというのはどういう気持ちなのだろう。僕には想像することも出来ない。ただわかるのは、そこにある“現実”と、残された“想い”。「何て顔をしてるんだ? 北極に置き去りにされた犬みたいな顔をしてるぞ?」山中さん(猫)はチーズの入ったササミのようなものを食べながら僕を見て笑った。…置き去りにされたのは南極だが、僕は笑顔を保ち、山中さん(猫)と少しばかり世間話をして、帰路についた。「あいつはいつも、“唄うように” 鳴くんだ。」山中さん(猫)のひとことが耳の奥で鳴り響いていた。