ミルクマンとあだ名される青年が、自分の家族のルーツを探し出す話
と一応まとめられるが、ほんとはもう少し複雑
呉明益『自転車泥棒』(天野健太郎訳) - logical cypher scape2につづいて、プロットが面白い系文学だった。
本作については橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』 - logical cypher scape2で存在を知っていた(し、そこでもプロットの面白さについて触れられていた)が、『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 短編コレクション1』 - logical cypher scape2で実際にトニ・モリスンの短編を読んで、トニ・モリスン面白いなとなり、読もうかなと思うようになっていた。
第一章から第九章が第一部
第十章から第十五章が第二部
という構成になっており、第一部は、ミルクマンが生まれてから30代くらいになるまで
第二部は、ミルクマンが叔母が隠したかもしれない金塊を探して旅に出る話
ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』(藤平育子・訳) - logical cypher scape2が南部で成り上がった白人の話だったけど、本作は、北部で成り上がった黒人の息子の話
アメリカの人種問題を描いている作品ではあるけれど、単に黒人が差別されているという話ではない。
まず、主人公・ミルクマンの父親は、不動産で財をなしており、ミルクマンはわりとボンボンだったりする。彼は父の後継ぎとして父の仕事を手伝い始めるが、父親の金ではなく自分の力で生きていきてぇと言うのがこの物語中盤での彼の目下の悩みとなる。あんまり人種とか社会とかの問題には目を向けていない感がある。
また、彼の父親は家賃とか取り立てて財をなしてきたので、黒人だが魂は白人なんじゃないのか、と言われていたりして、黒人なんだけど白人側と思われている。息子であるミルクマンもその点ボンクラ感がある。
白人はあまり出てこなくて、むしろアメリカ国内での南北格差というか、都会と田舎の差が描かれていて、物語の後半でミルクマンは南部に旅立つのだけど、その際ミルクマンは南部の黒人はみんないい人たちで南部いいとこだな、と素朴に思ったりするのだが、彼の金持ちムーブが敵意を誘うことになったりする。
また、ミルクマンが、歳の離れた姉から、男であることで、無自覚に他の家族に対して権威的な振る舞いをしていることを詰問されるシーンなどもある。
つまり、差別されている黒人、ではなくて、黒人の中での貧富の差、性差を描いてる。
もっとも、では黒人差別の話がないかといえばそういうこともなくて、それについては、ミルクマンの友人ギターが担っている。
ということを扱いつつ、この作品は一種のファミリーサーガみたいなところがあって、読んでいて少しフォークナーを想起したりもしたが、モリスンは学生時代にフォークナーとウルフについて研究していたみたい。
ミルクマンは、(明らかに経済的には恵まれているのだけれど)周囲の人々(家族)から自分の存在は望まれていないと感じ、今いる町から出て一人立ちしたいと思っていて、そのために金塊探しにいくのだが、そこで自分の先祖(祖父母)について知っていくことで、自分のルーツに誇りを持つようになっていく
ミルクマンがこの町から出ていきたいなあと思うのは、両親の確執、ふった女性から命を狙われていることとかが要因になっていて、それらの展開の仕方、そして後半、金塊探しがルーツ探しへとなって、ミステリの謎解きのようなことが成されていく展開などが面白い。
結構あっという間に作中の時間が過ぎる(10年くらいがすっとスキップされたりする)
あれ、これ何のことだ? と思った記述が、次の次の章くらいでさらっと解説されたりする(初出っぽい登場人物がさも当然知っているかのような言及されてて、どっか読み飛ばしたかなと思っていると、むしろそれより後の方でちゃんと出てきたりするなど)
商品名などの固有名詞がわりと多めの印象があって、それも特徴かなと思う。
物語は、ミルクマンが生まれる前日から始まる。
とある男が、空を飛ぶといって建物の屋根から飛び降りるのである。
この「飛ぶ」ということは、ミルクマン自身のテーマとなっていく。幼い頃、自分が空を飛べないということに絶望する。
物語は、ミルクマンが「飛ぶ」ところで終わる。しかし、この最後の「飛ぶ」が一体何を意味しているのかは、読者の解釈に委ねられている。
さて、話を戻すと、この冒頭のシーン、あとから読み返すと、ミルクマンの母と姉たち、叔母、後の友人が集っていたりする。
ミルクマンの父親はメイコン・デッドというが、その父親(つまりミルクマンの祖父)も、ミルクマン自身も名はメイコン・デッドという(つまりミルクマンはメイコン・デッド3世)
元奴隷だった祖父が自由民として登録される際、「生まれは?」「メイコン」「父親は?」「死んだ(デッド)」という会話があり、酔っ払った役人がそれを勝手に姓名にした、という経緯で名付けられた名前である。
祖父は農場主をしていたが、白人に射殺される。父はその後、ミシガンに出てきて不動産業(家賃収入)で財をなしていく。
ミルクマンの母親であるルースは、医者の娘。その家がある通りは、黒人たちによってドクター・ストリートと呼ばれていたが、白人がその名で呼ぶことを禁じたため、以後は、ノット・ドクター・ストリートと呼ばれるようになっている。
父・メイコンには、パイロットという妹がいる。
このパイロットという名前も由来がテキトーで、字の読めない父親が聖書の中から適当に指さした名前(ピラトー)をとったのである。
メイコンとパイロットは子どもの頃は仲のよい兄妹であったのだが、父親が射殺されたしばらく後に仲違いし、パイロットは放浪するようになる。
ずっと音信不通であったが、ミルクマンが生まれてくる少し前くらいに、メイコンのいる町にやってきて住み着くようになる。その頃パイロットには、娘と孫娘ヘイガーがいた。
パイロットには、生まれつき、へそがなくて、そのことによって人から(魔女の類いとして)恐れられている。実際彼女は、父親の幽霊を見てたり、魔術っぽいことを時々することがある。
パイロットは密造酒によって生計をたてており、掘っ立て小屋のようなところに娘、孫娘と3人でくらしている。パイロットもその娘も夫はいない。パイロットと娘はヘイガーのことをめちゃくちゃ溺愛していて、ヘイガーが欲しいものは何でも買ってあげている。
パイロット、ヘイガーを泣かした男だったかに対して、心臓にナイフ突き立てて脅す、とかもやっていて、とにかく、強キャラ
で、メイコンはパイロットのことを嫌っているので、ミルクマンにも会わせないようにしていたが、ある時、友人のギターに連れられてパイロットの家を訪れることになる。
ミルクマンという名前は、彼が少年になっても、母親の乳を飲んでいた(飲まされていた)ことに由来する。
ミルクマンは、大きくなってくると父親の仕事を手伝うようになり、わりとそれ自体は順調で、容姿もよいので、わりと女性にもモテる。
もともと父親が絶対な家だったのだけれど、ある時、ミルクマンが父親を殴るという事件が起こる。その日の夜、父親はミルクマンに対して、何故自分が妻(ミルクマンの母)に冷たくしているのかを話し始める。妻が自身の父親(医者、ミルクマンにとっての祖父)を愛しており、メイコンは彼女に対して近親相姦の疑惑を抱いているのである。
ミルクマンとしては、そんな話聞きたくなかった~なのだが、母親の行動を調べ始める。果たして、深夜に祖父の墓参りをしている母親を目撃する。
ところが今度は、母親ルースから、医者である父とはそういう関係はなく、逆にメイコンとのレスの話をされる。で、ミルクマンは、姉2人とだいぶ年が離れているのだが、ミルクマンの出生にパイロットが関わっていたことを知る。
夫との関係に悩んでいたルースに対して、パイロットは媚薬のようなものを与え、その結果、数日間だけメイコンがルースに迫り、それによって生まれたのがミルクマンなのである。その後もパイロットがルースを守ったことによって、ミルクマンは無事産まれることができたのだった。
母親が、大きくなってからもミルクマンに乳を吸わせていたのは、夫とのレスの代償行為だったのかーということに気付かされて、やっぱりこんな話聞きたくなかったなあ、となる。
ミルクマンは、パイロットの家によく行くようになってから、彼女の孫娘であるヘイガー(ミルクマンより年長)と関係を持つようになる。ただ、ちゃんと恋人関係になったわけではなく、ミルクマンはヘイガー以外の女性と付き合っていたりする時期もあるのだが、なんだかんだ一番長く関係をもっているのがヘイガーで、しかし、あるクリスマスの時、手紙で感謝と別れを告げる。
しかし、これがヘイガーを傷付け、以降、ヘイガーはミルクマンの命を狙うようになる(ヘイガーは何度かミルクマンを襲撃しているが、毎回失敗している。ミルクマンもヘイガーが来ることが分かって一人になったりしている)。
章がかわると、突然、ミルクマンが命を狙われていて、一体何だと読み進めていくうちに、実はヘイガーが、と分かるように書かれていて、他にもあるけど、展開のさせかたが上手い。
一方、友人のギターが変わり始める。
10代の頃は悪友で、年上のギターから色々と遊びを教えてもらっていたのだが、ある時期からギターは人種問題に関心をもつようになり、酒なども飲まないようになる。
2人は異なる意見・価値観を持つようになるが、しかし、友情自体が変わることはなかった。
そしてある時ミルクマンは、ギターから過激思想を告白される。
曰く、白人というのはいかれた人種である、と。理由のない異様な殺人などをおかす。黒人はああいう殺人はしない、と。そして、人数のバランスをとる必要がある。白人が理不尽に黒人を殺した場合、同じ数だけ白人を殺すのだ、と。そのための仲間がいる。それは完全な秘密結社で、曜日ごとのメンバーがいるので七曜日と呼ばれている。日曜日に黒人が殺されたのであれば、日曜日のメンバーが白人を殺す。
ギターはこの思想を、黒人への愛なのだと説くが、ミルクマンには理解不能で、その考えを批判する。それ以上にミルクマンは、果たしてギターが既に人を殺してしまったのか、まだ殺していないのかという点を気に病んでおり、友情が決裂するような状態にはなっていない。
ミルクマンには2人の年の離れた姉がいる。
姉のエピソードは、あまり本編と絡んでこないサブプロットという感じなのだが、これはこれで面白い。2人の姉のうち2番目の姉は、大学まで行っている。これは結婚相手を探すための進学だったのだが、それは果たされない。で、大卒未婚黒人女性というのは、変にスペックが高いせいで働き先も嫁ぎ先もないのである(教養はあるが家事ができない)。
しかし、そうも言っていられなくなって、結局メイドとして働き始めるのだが、周囲にはメイドということは隠している。そして、通勤時間で出会った男性と恋に落ちる(この男性、確か最初の方にも出てきていて、父メイコンの所有する物件に暮らしている人ではなかったかと思うのだが、ちゃんと確認していない)。
本編とあまり絡んでこないといったが、親に頼らず自力で労働する喜びみたいなのを感じるあたり、後に親からの独立を望むようになるミルクマンと並行関係にあるプロットなのかもしれない。
で、彼女はしかしこの恋人のことを父親に明かすわけにはいかないなと思っているのだけど、どうもミルクマンが父親にチクったらしくて、長姉の方がミルクマンに対してキレる。
さて、父親と母親、どっちもアレな感じだし、姉からもキレられるし、ヘイガーは自分を殺そうとするし、もうこんな町から出ていきたいな、とミルクマンは思うようになる。
そんなところに舞い込んでくるこんな話(時系列的には、この話と姉からキレられるのは順序逆だけど)
パイロットの家に緑の布にくるまれた荷物があるという話にメイコンが反応する。
そしてメイコンはミルクマンに対して、何故自分がパイロットを嫌っているのかという話を始める。
2人の父親が殺され、2人だけで生活していた頃、行きがかり上メイコンがとある白人を洞窟で殺してしまう。洞窟の中に金塊があって、メイコンはこれを持ち出そうとするのだが、パイロットがそれを止める。ところが、後日、パイロットと金塊は姿を消してしまった、と。
メイコンは、ミルクマンにパイロットの家から金塊を盗ってくるように命じる。メイコンがその金塊を換金して、山分けしよう、と。
ミルクマンはこの話を密かにギターに話して、2人で決行するのだが、しかし緑の袋の中にあったのはなんと誰かの骨であった。2人は警察に逮捕されるが、パイロットが警察と話して釈放される。
金塊は一体どこへ行ったのか。
第二部でミルクマンは、金塊を見つけるために、メイコンとパイロットの生まれ故郷へ向かい、その金塊があったという洞窟を探す旅に出るのである。
ネットで人の感想を見ていると、第一部は読むのが大変だったが第二部から面白い、という感じのが多い。個人的には、第一部も十分に面白いと思うのだが(父親から、母親から、親友から次々とヤベー告白されていく展開が)、確かに第二部からは一気に弾みがついていく。
第一部はミルクマンが生まれてから南部で旅立つことになるまでの経緯を描いているので、章が変わると一気に時間が10年くらい飛んでいたりするのに対して、第二部はそれこそ数日間くらいの話のはず。
まず、ミシガン州からペンシルベニア州へ
メイコン・デッド1世のことを覚えている老人たちが残っていて、孫であるミルクマンの来訪はおおいに歓迎される(父親のことを彼らに話すと「それでこそ、メイコン・デッドだ!」ってみんな喜ぶ)。
ミルクマンは、父親や自分は直接会ったことない祖父が慕われていたことを知り、自分も誇らしく感じるようになる。
メイコン(2世)とパイロットは、父親が射殺されたあと、産婆であり隣家のバトラー家で家政婦をしていたサーシーという女性にいっとき匿われていた。メイコンとパイロットは、誰が父親を殺したのか知らなかったが、バトラー家の者だということが分かる。
サーシーは既に死んでいるといわれ、もし生きているとしたら100歳をゆうに超えるのだが、ミルクマンがその家を訪れてみると、なんとサーシー1人が犬たちとともに暮らしていたのだった。
このサーシーが一体何なのか、つまり幽霊の類いなのか、超高齢なのか、といったことは明らかにされない。
ところで、まだこの家に住み続けて、バトラー家に義理立てしてんのかと訝しむミルクマンに対して、サーシーは、そうではなくて、この家が朽ちていくところを見届けるんだ的なことを言っている。バトラー家の一人娘は、親が死に、家が次第に没落していくと、貧しさに耐えられなくなって自殺している。これについてサーシーは、お嬢さんはわたしのようになる(サーシーのような労働者になる)くらいなら死を選んだんだよ、とも言っている
サーシーから、祖父母の名前がジェイクとシングであることが分かる
パイロットは、父親の幽霊から「歌え」と言われていたが、これが実は単に妻の名前を言っていたのだと気付かされる
(ところでパイロットは母娘3代でしょっちゅう歌っている)
それはそれとして、サーシーの話を聞いた後、実際に洞窟へとおもむく。洞窟にまだ金塊が残されているのではないかとミルクマンは考えていたのだが、洞窟に金塊は残されていなかった。
また、サーシーの話から、パイロットの箱に入っていた箱は、メイコン1世の骨だろうと思い当たる。
ミルクマンは、さらにメイコン1世の生まれ故郷とされるヴァージニア州シャリマーへ向かう。
これは、パイロットも、兄と別れた後ヴァージアへ行っていたからである。
ここでミルクマンは、無意識に金持ちムーヴをとってしまい、人々はこれを侮辱されたと受け取り、喧嘩が始まる。
また、お前銃は使えるのかと聞かれて、ほんとは使えないのに使えると見栄張ったところ、じゃあ今夜、狩猟に付き合えという話になる。
一方、ギターが自分を追いかけてここまで来ているようだ、ということを知る。
都会のボンクラであるミルクマンは、夜の山歩きの仕方などまるで分からず、同行者とはぐれ、さらにそこをギターに襲われる。
という、ハラハラのアクションシーンがあり、その後、怒濤のミステリ展開が待っている。
シングという人を知らないかと尋ねると、スーザン・バードという女性を紹介される。バード家は、インディアン系で黒人とは距離を置いて暮らしている。
果たしてシングは、まさしくバード家の人間であった(スーザンにとってシングは叔母にあたる)
さらにミルクマンは、シャリマーの子どもたちが歌っているわらべ歌が、パイロットが歌っている歌と一部の歌詞が違うだけで同じ歌だと気付く。さらにその中に、ジェイクの名前が含まれていることも。
再び、スーザンのもとへと訪れると、かつてこの土地にはソロモンという男がいて、彼はアフリカへと「飛び」去ってしまった。ソロモンの妻は泣き暮らして死んでしまうが、それがシャリマー近郊の山の名前として残されている。ソロモンが残していった子どもの一人がジェイクで、バード家は彼を引き取って育てた。ということを教えてもらう。
一方その頃ミシガンでは、ミルクマンがいなくなり、ヘイガーはずっと泣き暮らしていた。が、突如立ち直ったかと思うと、なりふり構わず衣服や化粧品を買い漁り始める。しかし、やはり立ち直ったわけではなく、それもある種の狂気の発露か何かで、亡くなってしまう。
ミルクマンが帰郷する。ヘイガーが死んだことでパイロットに殺されかけるが、パイロットのもっている骨がパイロットの父のものであることを告げ、二人でその骨を埋葬するために再びシャリマーへと向かう。
しかしてシャリマーで待ち受けていたのは、ギターであった。
最後、パイロットは銃弾に倒れるのだが、訳者あとがきによると、これには2つの解釈がある。
訳者はもともと、パイロットが自らを撃ったのだと解釈した上で、ピストルの弾と訳していたが、ギターが撃ったという解釈についても知り、どちらともとれる銃弾に訳し直したという。
ただし、訳者自身はパイロット自身のキャラクター造形(特に、人は死なない、人は自分で死んでもいいと思ったときに死ぬのだ的な台詞が中盤にあること)や、銃弾を受けた後のリアクションなどから、パイロット自身が撃ったという解釈を変わらず支持しているようである。
自分は読んだ時、ギターが撃ったものだと思って読んで、パイロットが自身で撃った可能性に全く思い当たらなかったので、訳者あとがきを読んで驚いたが、確かにギターが撃ったと考えると物語的には筋が悪いという指摘は頷けるところがある。
ところで、ギターはミルクマンに「誰もが黒人の命を欲しがっている」と語るシーンがある(死んだ命ではなく生きた命だというので、殺すという意味合いだけでなく、むしろ奴隷として搾取するという意味合いかと思う。また、ミルクマンが家族から疎まれヘイガーから命を狙われという話からの流れでもある)。
この一連のギターの台詞は、後にミルクマンが、狩猟の獲物である山猫が解体されているシーンで反復される。
ここでギターの台詞が(傍点で強調されながら)反復される意味はちゃんとは分からないのだが、ここのシーンは明らかに1つのクライマックスになっていて、北部の都会で経済的には何不自由なく暮らしながらも、その生活からの脱出を望んでいたミルクマンが、自分のルーツでもある南部の町で、しかも山の中で一晩過ごしたことで、何らかの精神的変化が起きている(アイデンティティの回復なのかもしれない)。
その後、ミステリ的な感じでも(わらべ歌の歌詞からの謎解き!)自らのルーツが明らかになる。
「飛ぶ」というのが、冒頭では飛び降り自殺?を指していたのが、ソロモンのアフリカ帰郷のエピソードによって、やはりアイデンティティ回復的な象徴的な行為になっていて、それがミルクマン自身も「飛ぶ」というラストシーンにつながっていくのだろう。
(ところで、ヘイガーは、ソロモンの妻と同様、愛した男が去ったことによって亡くなる。スーザンは、ソロモンの妻について、昔はそういう、男のために命を失ってしまう女がいたんだ、という言い方をするが、ソロモンの家系における反復となっていて、ファミリー・サーガ感がある)
そういえば、ミルクマンの脚の長さが左右で違う、という設定があって、わりと色々と描写に組み込まれていた気がするけど、あれなんだったんだろ