「平成男子図鑑」と篠房六郎の描く「最近のげんしけん」
深澤真紀『平成男子図鑑』を読みました。もともと日経ビジネスオンラインで連載されていたコラム「U35男子マーケティング図鑑」をまとめたものです。
内容は団塊ジュニアをはじめとした1970年以降に生まれたUNDER35世代を「U35男子」と名付け、「リスペクト男子」「草食男子」などいくつかのパターンに分類してその特徴を論じたものです。
まあよくある「最近の若い者は」的な本ですが*1、げんしけん公式同人誌「PROJECT G2」*2で篠房六郎が描いている「最近のオタクサークルの若者」と共通する部分があるのが興味深かったので取り上げてみることにします。
スラムダンク男子
書籍では「ジャンプ男子」にタイトルが変更されています。
U35男子に大きな影響を与えたジャンプ漫画には、「キャプテン翼」「北斗の拳」「ドラゴンボール」「スラムダンク」などがあげられます。
そのなかでもバスケットボール漫画の「スラムダンク」は、そのストーリーの面白さ、多くのキャラクターの魅力、バスケの試合の描き方、画力7などで圧倒的な支持を得ました。
そして、U35男子の「成長観」や「友情観」に大きな影響を与えたのです。
実際、この連載の取材のために出会った多くのU35男子は、「人生に影響を受けたのはスラムダンク」「大人になっても困難なことにぶつかるとスラムダンクを再読する」と語っていました。
篠房六郎のマンガでは後輩たちがオタクを堂々と公言しています。確かに、以前に比べて「マンガに影響を受けてる」とか「マンガを読んでる」ということに後ろめたさを覚えない環境になっているかもしれません*3。
チェック男子
たとえば筆者に「CSで『傷だらけの天使』チェックしましたよ、ショーケンって渋いですね」などと言ってくるU35男子がいます。
しかし、「ああ、あの最終回が衝撃ですよね」と答えると、「何話か見ただけなので、最終回は見てないんすよね」と言われてしまう。
映画でも「『エイリアン2』をチェックして面白かった」と興奮しているのに、続編の「3」や「4」どころか、第1作さえ見ていなかったりします。
チェック男子は、面白いからといって、原作や第1作まで遡ったり、最後まで追いかけるということにもそんなにこだわりません。
そのこだわりのなさはどこからくるのか。
それは「見たくなれば、いつでもどこかで見られる」と思っているからです。
彼らにとって情報は「あとで読む」「いつか見る」ことができるものなのです。
まさにこの場面と同じです。
動画を「いつでもどこでも」見ることができる環境が整備されてきていますので、昔に比べて「いま見逃すと一生見ることができないかも!」という危機感は薄れているのかも。
で、最後。
素面男子
酒席で語る代わりに、素面男子は散歩したりおしゃべりしたりします。
彼らが人間関係を構築するうえで、散歩やおしゃべりはとても重要な要素です。
彼らは、たばこ臭い居酒屋で高いお金を払って、飲み会に参加するよりも、ファミレスの禁煙席で、ドリンクバーで飲みながら、何時間でもあれこれおしゃべりするのです。
これはどうなんでしょうねぇ?確かに篠房六郎もこんな風に描いています。
まあ以前に比べて「酒の席でなければ言いたいことが言えない!」という風潮は薄くなっているかと思われます*4。
『平成男子図鑑』単体ですと「なんかこじつけっぽいなぁ」と思うのですが、別々の場所からこういう若者論が挙がっているところを見ると「言われてみればそうかもしれないなぁ」と思ってしまいました。
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