アメリカ映画の愛国心
昨日家に帰ってテレビをつけると「エアフォース・ワン」をやっておりました。
今さら解説するまでもないですが、まあ、「ひどい」映画です。
で、ムカムカしてすぐにチャンネルを変え……たかとおもいきや、最後まで見てしまいました。だって面白いんだもん。日本の「愛国モノ」よりずっと。
面白いのはもちろんそれだけカネをかけているから、というのもあるし、また「他国の愛国心」だからこそノンキに眺めていられる、というのもあるんでしょうが、でも、なんか、感動するんですよね、この手のハリウッドモノには。
これも今さら言うまでもないですが、ハリウッド「愛国モノ」にはパターンがあって、
問題発生
↓
アメリカの暗部をかいま見せる
↓
ヒーローが現れて、問題解決
↓
オレたちやっぱり、そんなアメリカが好きだぜ、WE LOVE AMERICA!!
という順序を辿ります。このうち「暗部をかいま見せる」のがポイント。「エアフォース・ワン」でも、直接的には出てきませんが、ゲーリー・オールドマン(彼はイギリス人ですが)演じるロシア人テロリストが「アメリカがロシアにカネ儲けやセックスやドラッグを持ち込んだせいで、母なるロシアはボロボロになってしまった」みたいなセリフを吐く場面があります。
「なんだ、よくわかってんじゃん」という感じ。
あとはお馬鹿映画ですが、「チーム・アメリカ/ワールドポリス」もそんな感じ。冒頭、「チーム・アメリカ」の面々はフランスに忍び込んだテロリストを退治するために、エッフェル塔やらルーヴル美術館を木っ葉みじんに破壊しまくる、ここではまさに、アメリカの行いを完璧に皮肉っているわけですが、しかしあれやこれやの結果、「オレたちやっぱり、そんなアメリカが好きだぜ」へと収斂してしまう。見事なバカっぷりです。
こういうバカっぷりを見ていると、「ああ、やっぱアメリカにはかなわねえな」と本気で思います。アメリカが汚れのない「美しい」国だなんて、アメリカ国民のうち、実はほとんど誰も信じていない。それこそ「カネ儲けとセックスとドラッグにまみれた、お節介焼きの、困った国」だと思っている。腐った人間も大勢いる。でも、オレたちやっぱり、そんなアメリカが好きだ。
……ハリウッドの「愛国モノ」は、こういうメタ・メッセージを、流し続けているような気がします。
こういう風に開き直られたら、ちょっともう太刀打ちできません。どんなひどいことをしても、どんなに論理がむちゃくちゃでも、「でも、オレたちやっぱり、そんなアメリカが好きだぜ」といわれれば、それ以上何がいえるでしょう。
翻って日本は……なんかちょっと違うんですよね、やっぱり。「日本国民なら国旗・国歌に敬意を表するのは当たり前」とか、「美しい国」みたいに、間口をどんどん締めて、純化させる方向にいってしまう。「愛国モノ映画」もそう。一生懸命「清らかな日本」「汚れなき日本」を映し出そうとしている、それがなんともイタい。「ウソっぽい」という以前に、その方向性がなんともムズ痒いのです。
ハリウッドの「愛国モノ」が、アメリカ人以外が見ても面白くできているのに、日本の「愛国モノ」は、おそらく日本人以外にはまったく受け容れられないだろうのは、たんに「映画の作り」とか「かけたカネ」だけの問題じゃなくて、その「愛国心」の質の違い、なんじゃないでしょうかね。もちろん、どっちがより良い愛国心か、などということはいえないにしても。