初期研修医 修了(令和4年度)
筑波大学卒業 / 茨城県出身
「地獄でした」
初めての当直で患者さまが運ばれてきたときのことを、小出はそう振り返る。
「激しく苦しまれている高齢の患者さまを目の前にして私は何もできず、ただ立ち尽くすだけだったんです」
学生時代の実習でも同じシチュエーションはあった。そのときは先輩研修医の立ち振る舞いを、余裕を持って見ることができた。
だがいざ自分が研修医として前に立つと、頭は真っ白で、何をどうすべきか、まったく考えられなかったのだ。
「傍観者と当事者。その違いの大きさに驚き、何もできなくて落ち込みました」
もちろん指導医やコメディカルはしっかりフォローしてくれた。だが立ち直るかどうか、最終的には自分次第だ。場数を踏み、自分で強くなっていくしかない。
「その点、茨城西南医療センター病院はまさしく症例が降ってくるから、いくらでも経験が積めます。東京の大病院だと症例の取り合いになるとも聞きました。ここは自分を鍛えるには最高の環境です」
場数を踏んだ分、小出はずいぶん成長したことを実感している。
2年目の今、新しく入ってきた後輩の研修医を見て、小出は1年前の自分自身を懐かしく振り返っている。
小出が医療の道を志したのは、自分自身が幼い頃に小児ぜんそくで苦しんだ経験があったからだった。
今も実家から病院に通っているように、生まれ育ったのは隣の市。幼い頃お世話になった恩返しをしたいという思いが、地域の医療に尽くしたいという志につながっている。
「茨城県は医師が不足している一方で、地域の人々の病院までの足取りも重いんです。ちょっとぐらい体調が悪くても“大丈夫だろう”と医者に行かない。いよいよ悪くなって病院のドアをノックするときには、もう手の施しようがなくなっていることもあります」
医療を通じて地域に恩返しをするには、こうした意識を変えていくことも必要だと考えている。
今、小出がめざしているのは産婦人科医だ。
初期研修2年目になって念願の産婦人科での研修もスタート。まさに“症例が降ってくる”環境ならではのやりがいを実感している。
めざしているのは、女性の様々な悩みにしっかり寄り添える産婦人科医だ。
「一緒に働いている看護師さんから“私も困ったときはあなたに診てもらいたいな”と言われたんですよ」と小出は嬉しそうに笑う。
その明るい笑顔は、やがて地域医療を変えていく光となるだろう。