もうZ世代にイライラしない。あなたのチームのための“Z世代育成術”

Z世代の心をつかむフィードバックの伝え方

「これ、どう伝えたらいいんだろう......」

会議室の予約画面を見つめながら、溜息をつく。30分後に控えた若手社員との1on1フィードバック。長年のキャリアで数多くの部下を育ててきた自負はある。しかし最近は、これまでの経験が通用しないことが増えている。

先週も「最近の営業活動を見ていて、気になることがあります」と、いつものように切り出したところ、その後は「はい……」と終始うつむき加減。翌日から報告も素っ気なくなり、新しい提案も減ってしまった。

「『はい、わかりました』ばかりで、本当に理解できているのかわからない」「指摘すると途端にモチベーションが下がる。でも、言わないわけにもいかない」——経験豊富なベテラン層ほど、このようなジレンマを抱えているのではないでしょうか。

本記事では、新しい時代の部下育成をより効率的に進めるためのアプローチをご紹介します。明日からすぐに実践できる具体的な方法で、マネジメントの負担を減らしつつ、組織全体のパフォーマンスを高める——そんなヒントをお伝えしていきます。

なぜいまZ世代へのフィードバックが課題なのか

「最近の若手は......」

と、つい口にしながら同時に「こんなふうに言ってはいけない」と自戒する——そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。

長年の経験に裏打ちされた指導方法があるにもかかわらず、若手社員の反応は期待どおりではない。部下育成の手応えが以前と違う。そうした違和感を抱えるベテラン層は少なくありません。

主にZ世代の若手社員の研修を手がける人材育成コンサルタントの北宏志氏は、Z世代特有の課題として「上司など目上の人に対する距離感やコミュニケーションの仕方がわからない」という悩みを抱えているケースが目立つと指摘しています。*1

ベテラン層が感じる戸惑いは、じつは若手社員側も同様に抱えているのです。この状況を打開し、若手社員と建設的な関係を築くには、上司側の意識改革と具体的なアプローチが鍵となります。

机を挟んで対話している様子

Z世代との関係構築がもたらす3つのメリット

「でも、どうして経験もキャリアもない若手側に合わせないといけないんだろう」

そう考えるのも当然です。20年、30年と真摯に仕事に向き合い、数々の困難を乗り越えてきた経験は、何物にも代えがたい価値があります。「最近の若手は……」という声の裏には、これまで組織の成長を支えてきた自負と、それが通用しない状況へのもどかしさがあるのではないでしょうか。

しかし、ここで重要なのは「若手に合わせる」のではなく、組織全体の成果を最大化するための戦略的アプローチとしてとらえることです。若手世代との効果的な関係構築は、以下のような具体的なメリットをもたらします。

  1. チーム全体の生産性向上
    Z世代をはじめとする若手世代は、物心ついた頃からインターネットに親しんできたデジタルネイティブ世代でもあります。たとえば、新しいツールやテクノロジーへの適応力が高く、情報収集や処理が得意です。彼らの特性を活かすことで、チーム全体の業務効率化につながります。
  2. マネジメント工数の削減
    「なぜ言うことを聞かないのか」「なぜ理解してくれないのか」というフラストレーションの蓄積は、上司自身の時間とエネルギーを大きく消耗します。適切なコミュニケーション方法を確立することで、部下への指示や説明の手間を最小限に抑えることができます。
  3. 組織の持続的成長
    当然ながらZ世代の労働市場への参入は年々増加しており、近い将来、職場の重要な構成要素となることは確実です。彼らの特性を理解し、活かせる組織づくりは、これからのビジネス環境において重要な競争優位性となります。

重要なのは、これが「上司が一方的に譲歩する」という話ではないということです。むしろ、組織全体のパフォーマンスを高めるための戦略的投資としてとらえることができます。次章では、その具体的なアプローチ方法をご紹介します。

効果的なフィードバックの2つのアプローチ

1. 「成長機会」としての位置づけ

北氏によれば、Z世代が信頼を寄せるのは「この人は自分を成長させてくれる」と思える上司 *2だといいます。転職が当たり前となった時代に社会人となった彼らは、自身のビジネスパーソンとしての価値を高めることに強い関心を持っているためです。

北氏はZ世代に対する効果的な声かけとして「あなたの成長のためだから言うね」という前置きを推奨しています。*2 

「そんなことも分からないのか」「もっとできるはずだ」と叱りつけても部下を萎縮させるだけ。しかし、「あなたの成長のために」というフレーズを前置きすることで、自身の成長機会として前向きに受け止めてもらいやすくなるのです。

【NG例】「最近の営業活動を見ていて、気になることがあります」

  • マイナス評価から入っている
  • 部下の拒否感や防衛姿勢を引き起こしやすい
  • フィードバックの目的が不明確

【OK例】「◯◯さんの成長のために提案しますね。先日のA社での商談は、お客様のニーズを丁寧にヒアリングできていました。ここからさらにステップアップするために、クロージングでの工夫をお伝えします」

  • 「成長のため」という前置きで、フィードバックの意図を明確に
  • 具体的ないい点の承認から入っている
  • 次のステップを明確に示している

女性同士が対話している様子

2.  「ありたい姿」の言語化

人材育成支援事業を行なう日本能率協会マネジメントセンターでは、「Z世代の特徴を活かして育てるポイント」として「目標をもとに自身の『ありたい姿』を設定させる」ことの重要性を指摘しています。*3

たとえば「もっと提案の質を上げたい」という漠然とした目標を、「お客様の業界動向を理解したうえで、具体的な課題解決策を3つ以上提案できる営業パーソンになる」というように、部下自身の言葉で具体化させていく——そうすることで、自発的な行動計画が生まれ、日々の業務における意思決定の軸も明確になっていくのです。

逆に、上司が描いた「あるべき姿」を一方的に押し付けても、部下の内発的な成長意欲は引き出せません。

【NG例】「いまの営業スタイルだと目標達成は難しいので、もっと積極的に動いてください」

  • 現状否定から入っている
  • 一方的な指示になっている
  • 部下の主体性を引き出していない

【OK例】「半年後、どんな営業パーソンになっていたいですか? 目標金額以外でも、たとえば提案力や業界知識など、具体的に描いているイメージはありますか?」
(部下の回答を受けて)
「なるほど、提案力を高めたいのですね。では、そのためにいまから取り組めることを一緒に考えてみませんか? 私からもいくつかアイデアを提案したいです」

  • 部下自身に「ありたい姿」を考えさせることで主体性を引き出している
  • 具体的なゴール設定を促している
  • 実現に向けた自発的な行動を導き出している

両者を状況に応じて使い分けることで、より効果的なフィードバックが可能になるでしょう。

男性同士が対話している様子

信頼関係を支える日常的な関わり方

ここまで、フィードバック時の具体的なアプローチ方法をご紹介してきました。しかし、効果的なフィードバックの土台となるのは、日々の関係性です。いくら適切な言葉を選んでも、普段から心理的安全性が築けていなければ、真の対話は生まれません。

人事コンサルタントの曽和利光氏は、日頃から部下の意見を受け止めるなど、日常的な関わり方から心理的安全性を構築し、「この上司には自分の意見を素直に言う価値がある」と思わせる*4 ことを勧めます。

具体的には……

  • 業務改善の提案があれば、すぐに実行できることは「やってみよう」と速やかに採用する
  • 実行が難しい提案でも「なるほど、〇〇という課題に着目したんですね」と着眼点を評価し、実現可能な代替案を一緒に考える
  • 部下の提案には「もう少し具体的に聞かせてもらえますか?」と関心を示し、建設的な対話に発展させる

反対に「そんなの前例がないからダメ」「君には難しいだろう」など、日頃からアイデアや意見を一方的に否定してしまえば、「この上司にはなにを言っても無駄だ」と思われて部下の信頼関係を構築することはできないのです。

ディスカッションしている従業員

明日から始められる3つのアクション

1 フィードバックの前に確認すること
  • 部下の成長につながるポイントは何か
  • 具体的ないい点は何か
  • 次のステップをどう示すか
2 短期的な実践ポイント
  • 「成長のため」という前置きを意識する
  • 「ありたい姿」を引き出す質問を準備する
  • 日常的なコミュニケーションを増やす
3 中長期的な関係構築のために
  • 定期的な1on1の機会を設ける
  • 心理的安全性を高める環境づくりを心がける
  • 部下の成長を支援する具体的な機会を提供する

***
フィードバックは、決して一朝一夕に完璧になるものではありません。しかし、この記事で紹介した方法を意識しながら実践することで、より効果的なコミュニケーションへと近づいていくはずです。

そして何より、これまでのキャリアで培ってきた経験は、決して無駄になるわけではありません。むしろ、新しいコミュニケーション方法を身につけることで、豊富な経験と知見をより効果的に次世代に伝えることができるようになるのです。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト