この記事は 弥生 Advent Calendar 2024 の19日目の記事です。
プロダクトデザイナーの "1000old" です。
弥生株式会社では、2024年の10月から「弥生会計 Next」先行体験プログラムを提供しており、私はその開発チームの一員として、プロダクトデザインを担当しています。
昨年の Advent Calendar では、Web 業界からキャリアチェンジした経験談を書きましたが、今年はプロダクトデザインの少し泥臭い部分にフォーカスしてみます。
具体的には、会計知識ゼロだった人間が、どうやって会計システムのプロダクトデザイナーとして「しがみついている」かを書いてみようと思います。
お金と弥生と私
弥生に入るまでは、簿記はおろか、お金の計算自体が好きではなく、毎月定額のお小遣いでちまちまと趣味のものを買うことにささやかな喜びを感じていました。
大事なことですが、お金が嫌いなわけではないです。
むしろ大好きです。愛していると叫ばせてください。
ただ、お金の「計算」に興味がないんです。
じゃあなんで弥生を選んだのか。
これは昨年書いたように、Webディレクターの経験が活かせそうなことに加え、面接でお会いした方々と「一緒に仕事をしてみたい」と思えたからです。
専門用語、資格との格闘
こんな調子なので、入社早々に挫折を味わいます。
これまで聞いたことがない専門用語のオンパレード。
- 仕訳って何?仕分けと違うの?
- 貸借対照表?損益計算書ってナニソレオイシイノ?
でも、実際に画面を考えるならそのまま放置するわけにはいかず。
弥生に入社が決まった時点で簿記3級の勉強を始め、入社後1ヶ月半くらいで取得しました。
これで資格が取れたと意気揚々だったのですが、天狗の鼻は早々にへし折られます。
決算や固定資産など、専門性が高い機能の検討には、3級の知識では役に立たず、2級を一部分だけ勉強しました。
これが意外にスムーズに理解できたので、もしかして2級イケる?との勘違いから資格取得にチャレンジしてみました。
本格的に勉強を始めたら後悔しかなく、何度も止めようと思いましたが、「諦めたらそこで試合終了ですよ」の名言を心に、半年かけて簿記2級を取得しました。
※ 名言の載っている漫画自体はよく知らないんですけどね。
タスク、業務フローの把握
無事に資格は取得できて教科書的な知識を得たものの、会計事務所や経理のタスク、実際の業務フローは全く知らない素人です。
まず最初に、弥生の中にいる業務を熟知した仙人に教えを請い、本で得た知識と自社サービスの各画面の関係を把握しました。
その後、複数の競合他社サービスを使ってみると、同じ条件のタスクでも、完了までのフローはサービスごとに結構異なることがわかり、会計アプリケーションにおけるユーザー体験の判断基準が少しできた気がします。
また、起業して間もない新設法人の代表へのインタビューなどで、会社の日常と経理業務のつながり、会計アプリケーションへのダイレクトなニーズを知ることもできました。
この時点で、さまざまな利用文脈の把握とともに、自社サービスのペインポイントもおぼろげながら見えてきました。
※ 利用文脈 = ユーザーがサービスを使用する状況やその背景、それに付随して起こるさまざまなできごとのつながり
※ ペインポイント = ユーザーが「お金を払ってでも解決したい」と考えている悩みや課題
プロダクトへの反映
業務理解の過程で整理したカスタマージャーニーマップ、ペルソナやサイコグラフィックは、主に以下の2種類のユーザーのさまざまな利用文脈を想定しています。
① 弥生に入りたてのころの私のような「会計初心者」(新設法人の起業家など)
② ①のような人をサポートする会計事務所や税理士などの「会計のプロ」
「弥生会計 Next」は、②をターゲットとする手入力中心の高度な機能だけでなく、新たに自動化などを取り入れて①もターゲットとしているため、初心者向けの分かりやすさと、プロ向けの効率性や柔軟性とのバランスを取る必要があります。
両者の利用シーン、頻度、利用文脈やペインポイントなどは当然かけ離れていますが、ユーザー体験や機能、提供価値などで分類して、それぞれを最適化するための取り組みを行いました。
①の初心者向けの機能は、同じチームのメンバーが昨年の Advent Calendar で公開した「デザインスプリント」を導入して改善を進めました。
私は②のプロ向け機能を担当することが多いのですが、チームの中に弥生会計を使う会計事務所での勤務経験があるメンバーがいて、会計業務で感じる問題点や課題をヒアリングしました。
その中で弥生会計について聞いてみると、大きな不満はないものの、
- ○○の機能は、付随する機能が不足しているため、実はあまり使っていない
- △△の機能は、高機能すぎて逆に「要らぬおせっかい」で使いにくい
- □□機能の一覧は、デフォルトでこういう情報が出ている方がありがたい
のように、意外に多くの改善点やペインポイントが見つかっています。
ヒアリングで得た情報や実際の業務フローをもとに、期待される解決策を検討し、プロの評価やフィードバックから改善を行い、最終的にプロダクトとしてリリースできる形までブラッシュアップを繰り返しました。
また、関連性が高い複数のデータのつながりや、裏側の計算ロジックなどを検討する際には、改めて簿記の知識が役に立ちました。
進化は続くよ、どこまでも
ここまで書いてきた通り、会計知識ゼロで弥生に入社して、離脱することなく、なんとか「弥生会計 Next」先行体験プログラムのリリースを迎えられました。 辛うじて振り落とされていなくても、引きずられてケガだらけかもしれませんが。
リリースは「ゴール」ではなく「スタート」である ー 今さらな言葉ですが、先行体験プログラムをご利用中のお客様からはさまざまなお声をいただいており、それらを検証、改善につなげる動きを開始しています。
それと並行して、いずれ迎える正式リリースに向けた追加機能の開発も着々と進行中です。
まだまだ産まれたてのヒヨコ状態の「弥生会計 Next」ですが、今後どんどん進化していきますので、ぜひご期待ください。
弥生では一緒に働く仲間を募集しています。興味のある方はぜひご連絡ください。