
ウクライナ情勢をめぐり2025年2月末から3月初めにかけ、極めて重要な2つの出来事が相次いだ。1つは、ホワイトハウスで2月28日に行われたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談。両首脳による激論の末に決裂という異例な結果となった。
2つ目は、この決裂に危機感を抱いたイギリスのスターマー首相がヨーロッパの各国首脳を急遽集めて開催した3月2日の欧州サミットだ。イギリスとフランスを中心に有志国連合を結成してウクライナを支援、さらに停戦と和平締結に向け独自の計画を策定することを発表した。
これらの展開が持つ意味と、ウクライナ情勢の今後の見通しについて掘り下げてみた。
アメリカ側との大きな溝
最側近であるイエルマーク大統領府長官や閣僚など大型代表団を引き連れてワシントンに乗り込んだゼレンスキーだったが、味わったのは、決裂による大きな失望感だった。決裂の背景にあったのは、ロシアとの停戦実現を目指すうえでの基本的認識をめぐり、アメリカ側との間にあった大きな溝だ。
「あなたは停戦を望んでいない」。口論の中でこう非難したトランプに対し、ゼレンスキーは語気強く反論した。「もちろん戦争を止めたい。でもウクライナへの安全保障が必要なんだ」。このやり取りがすべてを象徴していた。
戦闘行為の停止を優先するトランプに対し、米欧による停戦監視体制など強力な安全保障策がなければ、停戦は維持できないというゼレンスキーとの考えの違いは大きかった。
3年以上に及ぶ戦闘を止めることでノーベル平和賞の受賞を狙っているといわれるトランプにとって、停戦は喫緊の課題だ。ただロシア側とウクライナ側に対し、停戦に同意させる調停案をまだ提示できていない。
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