最近またストーンズ(ジャニーズのじゃない方)ばっかり聴いている。
80年代以降は自分の中では別物なので、専ら60~70年代のみ。それも基本的には「メインストリートのならず者」まで(プラス「山羊の頭のスープ」時代のツアー音源)しか聞かないのだが、「イッツ・オンリー・ロックンロール」はスライダーズがこの頃のスタイルを真似た参考にしたような気がする。個人的にはスライダーズは「イッツ・オンリー・ロックンロール」時代のストーンズ(ミック・テイラーとキースのダブル・ギター・スタイル)の発展形というか完成形な気がしている。
ミック・テイラー時代のアーシーな(このフレーズ好き)ロックンロールもいいが、やっぱり最終的にはブライアン・ジョーンズ時代に戻ってしまう。
ロバート・ジョンソンが悪魔に魂を売ったように、悪魔に魂を売った白人が一人いたとすれば、それはブライアン・ジョーンズだろう。
彼はそれと引き換えにブルースの魔力を手に入れた。
ブライアンの演奏には、テクニックの巧拙を超えた魔力のようなものがある。
ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれたビートルズ以降の英国バンドの中でストーンズを傑出した存在にしたのは、ミックのカリスマ性、ミックとキースのソングライティング能力に加え、ブライアンの音の魔力だったと思う。キースがキャラクター的にも音楽的にもカリスマ性を帯びてくるのはブライアンがフロントから完全に退いた『ベガーズ・バンケット』以降だ。
この「ベガーズ」と次の「レット・イット・ブリード」から立ち込めてくる「死の臭い」としかいいようのないものは間違いなくブライアンから発せられたものであろう。
ブライアンはレギュラーギター、スライドギター、ハーモニカの他に、マリンバ、シタール、ダルシマー、ピアノ、オルガン、メロトロンを含む様々な鍵盤楽器、サックス、リコーダー、オートハープ、レコードでは様々な打楽器を演奏した。
しかし、これらの楽器の多くはミックとキースの曲に色を加え、味つけのために一度か二度使用されただけで、その後は二度と使用されなかった。
彼が本当に弾きこなしたのはギター、キーボード、ハーモニカで、どれも名手というほどではなかった(バンドにはイアン・スチュワートとニッキー・ホプキンスというキーボードの名手がいた)。
彼が演奏したパートの一部は、「ルビー・チューズデイ」のリコーダー(マリアンヌ・フェイスフルはミックではなく彼がキースと一緒に書いたと語っている)や「レディ・ジェーン」のダルシマー、「We Love You」のメロトロン・パート。
「ペイント・イット・ブラック」、「レディ・ジェーン」、「ノー・エクスペクテーションズ」などの曲では、リード・ボーカルのラインはブライアンの演奏とほぼ一致することから、これらのフレーズを先に思いついたのはブライアンではないかという説もある。ブライアンには作詞作曲ができなかったが、印象的なフレーズを生み出すことはできたかもしれない。
だが、ブライアンにせよ、ミック・テイラーにせよ、ギタリストとしてストーンズの音楽にあれほど貢献しながら、ミックとキースの磁場から弾き飛ばされてしまったのは、あの二人(ジャガー&リチャード)の持つ運命的と言ってよいパワーに依るのだろう。
そんなことを思いつつロン・ウッド時代の最高傑作ライブといってよいだろう「El Mocambo 1977」を聴いて至福みたいな感覚に陥る今日この頃なのでした。