RTKに必要な基準局を設置してみよう!
はじめに
こんにちは、AITOYA株式会社の小川です!
初心者が始めるcm測位もついに第3回を迎えました!前回はRTKを利用して高速なcm測位を試してみました。RTKを使用し高精度測位に挑戦してみよう!
今回は、そのRTKを利用するために必要な基準局を、ZED-F9P と u-center を使用して自分でセッティングしてみよう!という試みです。
解説
前回はRTKの仕組みについて解説を行いました。そのときに補正情報を取得し、移動局に送信する基準局というのが出てきましたね。基準局は固定されていることが大半で、位置は既知であることが前提になります。
上の図を見ると、ネットワークを使って補正情報を送っているのですが、どのようなネットワークを介して送っているのでしょうか。簡単に解説したいと思います。
GNSS の補正情報や観測情報をインターネット経由で送受信する際に使用するプロトコルをNtrip(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol/エヌトリップ)といい、 その情報を配信するサーバを Ntrip Caster (エヌトリップ・キャスター)と呼称します。
基本的に善意の基準局からのデータも Ntrip Caster を経由して配信されています。Ntrip は3つの項目から成り立っています。
- Ntrip Server (基準局/エヌトリップ・サーバ)
- Ntrip Caster (配信/エヌトリップ・キャスター)
- Ntrip Client (移動局/エヌトリップ・クライアント)
Ntrip はHTTPをベースとしているTCPプロトコルで、ネットワークに接続されているデバイスであれば基本的にどのデバイスからでもデータ自身にアクセスは可能です。この辺は普通のサーバと一緒ですね。基本的なデータの流れは下記のとおりです。
Ntrip Clinet はもちろん Ntrip Server から情報を受け取るのですが、この図の中でTCPサーバは Ntrip Caster だけになります。Ntrip Server と Ntrip Client は共にTCPクライアントとなります。Ntrip Server は名前ではサーバなのですが……この辺は少しわかりにくいですね。
また、所謂サーバを新規に開設するわけではありません。世間一般で言うサーバ的機能を持っているのは Ntrip Caster で、実は色んな人が有志で立ち上げてくれています。つまり、自身の基準局(Ntrip Server)から Ntrip Caster に情報を送ってあげれば、その基準局でのRTKが可能になる、という仕組みです。
(もちろん自身で Ntrip Caster を立ち上げることも可能なのですが、かなり専門的な知識が必要となるため今回は省略します。)
今回は、「RTK2GO」という、無料の Ntrip Caster を利用して、自身の基準局をセッティングしてみましょう!
準備
まず、RTK2GO に自身の基準局から情報を配信する準備をしましょう。
RTK2GO は特に会員登録等は必要ありませんが、さまざまな人が同じ Ntrip Caster を使用しているため、それらを区別するための「Mount Point」というものを作る必要があります。Mount Point は基準局データの名前みたいなもので、これを指定することでアクセスしたいデータを選択することができます。基本的にどの Ntrip Caster にもありますので、覚えておきましょう!
RTK2GO に Mount Point を設定するには、まず下記にアクセスします。
New Base Station Reservation – RTK2GO
基本的にすべて英語ではあるのですが、使用上の注意等が書いてありますのでGoogle翻訳等を使用しながら読んでください。ざっくり訳すと、
- 登録後に自動的にメールが来るから、それに何らかの返信をしないと本登録にならない
- 単純なパスワードは許可されない場合がある
- 登録は8時間以下で終わる(週末は多少時間がかかる)
- メールアドレスにエラーレポートを送るので正しいメールアドレスを入力してほしい
的なことが記載されています。
そして、入力フォームに情報を入力します。
required と書いてあるものは必須、Optional と書いてあるものは任意での入力になります。「Message Format」は「Auto Parse」、「Ntrip Protocol to Use」は「Ntrip Rev1」にチェックを入れてください。
最後まで入力しフォームを送信すると、すぐに入力したメールアドレス宛に自動送信メールが届きます。このメールに対して返信を行わないと Mount Point が本登録されません。48時間以内にかならず返信するようにしてください。
メールの内容を引用してそのまま返信するだけでOKです。
その後、本完了のメールが届きますので、これで晴れて自分がセッティングした Mount Point を使用する準備が出来ました。
注意点
基準局の位置は知識がある人が使用すると場所が分かってしまいますので、自宅等のプライバシーを守りたい場所では使用しないようにお気をつけください。
そうしたら、まずアンテナを評価ボードに接続し、通常通りセッティングを行います。この際に、一度 u-center を起動して、しっかりと位置情報が取得できているか確認しましょう。
基準局は基本的に動かず、位置も固定されていることが前提となります。RTK client として他の基準局に対してRTKをかけ、自分のアンテナの位置が FIX するかどうか確認しましょう。FLOAT のままだと、基準局にした際に正しい補正情報を移動局に送ることが出来ない場合があります。また、アンテナは動かないように固定するようにしましょう。補正情報を取得している最中にアンテナが動いてしまうと、それも正しい補正情報の妨げになってしまいます。
次に、データを配信するためのソフトウェア設定にいきましょう。配信するためには、RTKLIB というRTK測位をするためのライブラリ内にある、strsvr.exe というアプリケーションを使用します。
ダウンロードするためには、まず下記URLにアクセスします(Github のリポジトリです)。https://github.com/tomojitakasu/RTKLIB_bin/tree/rtklib_2.4.3
その後、右にある緑色の「Clone or download」というところをクリックし、「Download ZIP」を選択すると自動的にソフトウェア全体のダウンロードが始まります。ダウンロードが完了したら、zip ファイルを展開し、bin フォルダの中になる「strsvr.exe」を起動します。起動すると、以下の画面になります。
「(0)のInput」欄には、情報の入力ソースを選ぶ必要があります。今回は ZED-F9P の評価ボードを使用するので、「Type」は「Serial」を選択を選択します(USBでの接続のため)。デバイスマネージャー内の ZED-F9P が割り当てられている「COM5」を選択しました。選択度は、Opt(Option)の下にある「…」をクリックすると、オプションの設定画面が出てきます。「BandRate」は、ZED-F9P に設定されているものを選択してください。u-center の「Message View-UBX-cfg-port」で確認が可能です。
次にOutputの設定を行いましょう。Output先は「NTRIP Server」に設定してください。こちらもOpt(Option)の下にある「…」をクリックし、オプションの設定画面に進みましょう。
- NTRIP Caster Host : rtk2go.com
- Port : 2101
- Mountpoint : 自身で設定した名前
- Password : 自身で設定したパスワード
以上の項目を設定し、メイン画面に戻って「Start」を押すと基準局としての機能が開始されます。「Upload」が配信、「Download」が受信です。実際に移動局からRTKを行い両方ともデータが流れていれば、RTK出来ている証拠になります。実際に基準局として機能し始めると、RTK2GO のHPに情報が掲載される状態になります。http://www.rtk2go.com:2101/ にアクセスし、自分が設定した Mountpoint の情報が出てくればOKです!
注意点
strsvr.exeを起動中には、u-centerは基本的に同時に起動しないようにしましょう。
うまく起動しない場合があります。
次回
さて、今回はRTKの基準局を設定してみました。使用する機会は少ないかもしれませんが、是非トライしてみてください!次回は u-center 内のさまざまなツールを紹介する【保存版】u-center 徹底解説!です。お楽しみに!
製品紹介
当社が開発した、GNSS(全球測位衛星システム)を利用したIoT対応センチメートル級位置情報サービス「iChidori®」です。デバイス等の詳しい紹介はこちらよりご覧ください。

当社が公開している、RTK-GNSS基準局「AITOYA BASE」です。詳しい紹介はAITOYA BASE HPよりご覧ください。