第1回5リットルウイスキーを2週間で コロナ禍でみたアルコール依存の淵
缶ビールを1本空けたとき、窓の外はまだ明るかった。「今日ぐらいはいいや」という軽い気持ちだった。
ふんわりと心地よい酔いがまわった。不安や孤独が和らいだ気がした。
緊急事態宣言中の2020年春のことだった。
そのうち家で飲む酒の量が増え、5リットルの業務用ウイスキーを通販で買った。「ビールより、糖質が少ないウイスキーの方が体にいいのでは」と言い訳しながら……。自宅で炭酸水を作る装置も買った。
飲み始める時間が午後5時から、4時、3時へと、日を追うごとに早まっていった。少量では酔わなくなり、2杯目、3杯目と進むにつれて、濃いめのハイボールを作った。
5リットルのウイスキーが、2週間でなくなった。
酒ジャーナリストの葉石かおりさん(56)は、自他ともに認める酒豪。たまに二日酔いをしても、自分は決して酒に溺れはしない――。そう信じていた。
新型コロナウイルスの感染者が日本で最初に確認されてから約3カ月後の20年4月。感染の広がりを防ぐため、緊急事態宣言が出た。不要不急の外出自粛や、飲食店の時短営業が要請された。
コロナ禍の孤独やストレスをアルコールで解消するようになった葉石さん。新型コロナの国内初確認から3年、人生が変わった人々の物語をつむぐ長期連載の第1回です。
酒が「悪者」に
すべてが一変した。
全国の酒蔵を巡って取材し…
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