フランスの医療・介護従事者、「歴史的」賃上げへ 月平均2.2万円
フランス政府は13日、新型コロナウイルスとの闘いで大きな役割を担っている保健医療従事者の賃上げ策として、総額80億ユーロ(約9730億円)を支出することで労働組合側と合意した。
政府と保健医療従事者の組合は、7週間にわたって緊迫した交渉を続けていた。この日、合意に達し、文書に署名した。
フランスでは新型ウイルスの大流行が続くなか、保健医療従事者は英雄とたたえられ、多くの国民から日常的に感謝を表明されている。
ただ、保健医療従事者は人々からの評価以上のものを求めており、給与アップや病院の財源強化を掲げて抗議デモを開いてきた。参加者の一部には、社会的距離に関する規則に違反したとして罰金を科される人も出ている。
フランスで確認された新型ウイルスの累計感染者は20万人、死者は3万人をそれぞれ超えている。欧州の中でも、同国はかなり大きな影響を受けている。
月平均2.2万円増
保健医療従事者の組合の多くが署名した今回の合意では、給与は平均で月183ユーロ(約2万2000円)増額される。
就任間もないジャン・カステックス首相は署名式で、「この国の保健制度にとって歴史的な瞬間だ」と合意を称賛した。
「これは第一に、新型ウイルス流行との闘いの前線にいる人たちへの感謝を示すものだ」、「さらに、おそらく私を含めたみんなに責任の一端がある、遅れを取り戻すものだ」。
賃上げ対策の予算の大部分は、看護師や介護従事者のほか、医療機関で働く非医療従事者のために充てられる。
また、約4億5000万ユーロは公的機関だけで働く医師を対象にしている。
14日はフランスの革命記念日で、パリのコンコルド広場ではパレードが予定されている。約1400人の医療・看護従事者が来賓として招かれる予定だ。
政治的背景は
エマニュエル・マクロン大統領は、任期前半の多くの時間を組合との交渉に費やしてきた。
マクロン氏は今月6日の新内閣の発足を前に、残りの任期では社会正義の問題に取り組みたいとの意向を示した。
一方、エドゥアール・フィリップ前首相は、マクロン氏を支持率で上回るとみられていたにもかかわらず、今月初めに辞職した。
後任として指名されたカステックス首相は、知名度は低いが、政府の新型ウイルス対策で重要な役割を果たしてきた。
3年前に大統領に就任したマクロン氏は、新型ウイルスの影響による経済危機に直面している。次の大統領選挙は2022年4月に予定されている。