フランスの極右、有権者の不満活用 しかし大統領選は
- Author, ヒュー・スコーフィールド
- Role, BBCニュース、パリ
仏地方選の一次投票が示した結論はシンプルで明白だった。またしても、極右政党がトップに立ったのだ。
1年半の間で3回、同じ結論が出た。国民戦線がフランスで最も人気の高い政党だと、マリーヌ・ル・ペンは堂々と主張していい。
まずは昨年の欧州議会戦で、続いて今年3月の地方行政区画選挙で、そして今回の地方議会選第一次投票で、国民戦線は繰り返しライバル各党に上回ってきた。
ごく最近まで弱小扱いされていた政党にとって、驚くべき大躍進だ。
今回の結果にパリ連続襲撃も影響している。
襲撃によって国の最優先課題となった移民対策や安全保障の問題は、極右政党の得意分野だ。
国民戦線は「そら見たことか」と言えば、それで十分だ。一方で社会党やサルコジ前大統領の共和党がこれに反論するのは、大変だった。
しかしル・ペン党首に勝利をもたらしたのは国民のテロへの恐怖のみ、それだけだというのは間違いだ。
国民戦線は4年前から順調に成長してきた。
有権者が心配する問題は安全保障関連だけでなく、経済や社会の問題も同じくらい重要だ。
経済や社会の諸問題について2大政党が示す解決策はほとんど見分けがつかないと、そう認識する有権者が日に日に増えている。フランスにはエスタブリッシュメント(体制)に対する強い反発と不満があり、反体制政党そのものといえる国民戦線はこの国民感情を最大限に活用しているのだ。
もちろん、今回の国民戦線の勝利がそのまま権力掌握につながるわけではない。
フランスの州議会議員選挙は(フランスのほとんどの選挙同様)2段階で行われる。13日の決選投票には、有権者は2大政党を大いに支持するのかもしれない。
しかし少なくとも北部と南部の2地域圏で国民戦線が勝利するのはほぼ確実だ。アルザスでもかなり有力だ。ほかの地域圏でも勝利は不可能ではない。
理屈から言えば、2大政党による国民戦線締め出し策は可能だ。社会党でも共和党でも、各地域圏で3位につける党が決選投票から退き、国民線の勝利阻止を支持者に呼びかけることができる。
しかし現実には、これは実現しなさそうだ。両党とも、撤退しないことが民主主義のためだと考えている。たとえそれで極右勝利の可能性が高くなったとしても。
フランスで唯一本当に重大な意味を持つ選挙といえば大統領選だが、3政党が画策し得るこの選挙の形は大統領選では無縁だ。大統領選が例外なのは公職選挙法の規定がたまたまそうなっているからというだけの話なのだが、大統領選の決選投票は常に、2人の候補の一騎打ちと決まっている。3者入り乱れての形には決してならない。
なのでたとえマリーヌ・ル・ペン党首が2017年5月大統領選で決選投票までたどりついたとしても、最終的に勝利する可能性は低い。他の候補の支持者たちが必ず結束して、対立候補に投票するはずだからだ。
ル・ペン党首のライバルたちは、心底ホッとしているに違いない!