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もしもの時に役立つ防災コラム

2024年 災害・防災を振り返り

こんにちは。国際災害レスキューナースの辻直美です。
私はこれまで国内外合わせて30ヵ所以上の被災地に入って活動をしてきました。私の経験をもとに日頃からの心がけ・備えなどみなさまにお伝えしていきたいと思います。

1月1日の能登半島地震から始まった2024年。8月には宮崎日向灘沖の地震から南海トラフ地震注意が初めて発令されました。そして台風10号やその他の集中豪雨などたくさんの災害が次々に起きました。今までの災害対策では命が助からないというケースもありました。この1年を振り返り、気がついたこと、新たに学んだこと、そしてこれからバージョンアップが必要とされる防災対策についてお話ししたいと思います。

【能登半島地震】

能登半島地震の発生により、国民には多くの教訓がもたらされました。特に震災が元日という特異な日に発生したこと、復興に長期間を要していること、さらには同年の夏に同じ地域で発生した豪雨災害による被害の拡大といった事象は、自然災害への備えについて新たな視点を与えました。これらの経験から導き出される教訓と、今後の災害対策に必要な取り組みについてご提案します。

1. 長期的な災害対策の必要性

能登半島地震では、短期間の応急処置だけではなく、長期的な視点での復旧・復興が求められました。地震発生直後は、避難所の設置や物資の供給が優先事項となりますが、避難生活が長期化することで、さまざまな健康問題や精神的なストレスなどの問題も顕在化します。そんな中、避難生活で必要なものは自治体からボランティアの人を介して近隣で提供されると思っていたら大間違いです。ものがあったとしても、運ぶための道が閉ざされていたり、マンパワーが足りなかったりもします。つまり自分で何とかしなくてはなりません。今までは1週間程度の備蓄で良かった。これからは長期化を踏まえて準備しておく必要があると思われます。そのためにも柔らかい頭が必要です。ものを備蓄するには限界があります。あるものを組み合わせて、欲しいものに近づけるアイデアが必要です。そして頭で考えるだけではなく、実際にやってみて練習することが必要です。

2. 食料・水以外の生活基盤の重要性

災害時の基本的なニーズとして食料や水の供給が強調されがちですが、排泄対策や口腔ケアも同様に重要であることが浮き彫りになりました。避難所での衛生管理が不十分な場合、感染症のリスクが増加し、特に高齢者や子どもにとっては生命に関わる問題に発展する可能性があります。
今までは水と食料の備蓄が注目されていました。しかし能登半島地震によって、トイレについても注目が集まるようになりました。災害時のトイレには、いろいろな商品も出てきていますが、買って安心ではなく、1度は使ってみて欲しい。そして自分にとってそれが使い勝手が良いものなのか、コスパはどうなのかという面でも判断してください。
そして、トイレそのものの利用については、利用者への教育も重要です。避難所のトイレの清掃は誰かがしてくれるわけではありません。みんなが使うためにきれいに使うこと、そしてトイレ掃除を分担してすることなども、改めてみんなで周知していくことが必要だと考えます。今後はトイレを使用した自分も掃除をするのだ、という意識が必要だと思います。

また、口腔ケア用品の備蓄にも注目が集まりました。口腔ケアが行き届かない状況では、感染症や口腔内のトラブルが発生しやすくなります。歯ブラシやうがい薬、口腔保湿剤など、口腔ケアに必要な製品を避難所や家庭で備蓄しておくことが求められます。

3. デリケートゾーンのケアの重要性

特に女性や高齢者にとって、デリケートゾーンのケアは見落とされがちな分野です。しかし災害時における健康維持には欠かせない要素です。避難所生活や長期的な避難でストレスがかかると、しばしば身体的な不調も引き起こされます。
その対策としては、女性や高齢者向けに、デリケートゾーンのケアや衛生管理に関する正しい知識とケア用品の使い方を学ぶことが重要です。また、必要な用品の備蓄として、生理用品やデリケートゾーン用の衛生製品の備蓄をしておきましょう。拭き取り用の専用のシートも最近ではたくさん出てきました。気軽にするのであれば、赤ちゃん用のおしりふきでも充分だと思います。
デリケートゾーンを清潔に保つために水を使うことは控える傾向にあります。代用品をうまく使ってケアしていきましょう。

4. メンタルヘルスのサポート

長期的な避難生活でのストレスや不安は、個々のメンタルヘルスにも大きな影響を与えるため、精神的な支援が不可欠です。専門チームからのケアだけではなくて、個人でも不安やストレスを解消していくことが必要です。防災リュックや在宅備蓄の中に、心のケアやエンタメに関わるグッズを備蓄している人はまだまだ少ない。これを機に、備蓄品は助かるためだけのものではなく、避難生活中でもちょっとした楽しみやストレス解消ができるようなグッズや方法を考えてみてください。
また、避難所では住民同士が気軽に相談できる場を設け、集会を通じて気持ちを共有し、孤立感を軽減する取り組みが重要です。避難所の運営は行政ではなく、被災者自身です。どうしても目先のことばかり気になりますが、長期的なことも考えて、このような取り組みもしなくてはいけないこと、頭に入れておきましょう。

【南海トラフ地震注意 について】

2024年8月8日、日向灘沖地震が発生し、その後南海トラフに関する注意が発令されました。この出来事は、日本全体に緊張感をもたらし、自然災害への備えの重要性を再認識させるものとなりました。今後気をつけなければならないポイントを3つにまとめて述べます。

1. 地震への備えの強化

日向灘沖地震は、南海トラフの活動が活発化している可能性を示唆しています。このため、今後の地震に備えるために、各家庭での備えを強化することが必要です。食料、水、医療品はもちろんのこと、意外に見落とされがちな排泄用品や口腔ケア用品も含めた備蓄を進める。特に、避難が長期化する場合の生活必需品リストを作成し、定期的に見直すことが重要です。
また、家庭や地域コミュニティで定期的に避難訓練を行い、避難経路や避難所の場所を確認しておくことで、地震発生時に迅速かつ冷静に行動できるようにします。前にやったから大丈夫、準備しているから大丈夫。これが危険です。実際に動いてみることが大事。子どもや高齢者の歩ける距離などは年々変わっていきます。定期的な実践は命が助かることにつながります。

2. 防災教育の普及

地震が発生した時の適切な行動についての知識を持つことは、被害を最小限に抑えるために不可欠です。災害が多発しているのに、防災知識や対策はバージョンアップされずそのままになっている人が非常に多く感じられます。今まで大丈夫だったからと過信するのではなく、常に新しい情報やテクニックを更新してください。例えば、地域コミュニティでのワークショップに参加したり、防災専門家から正しい避難方法や心のケアを学ぶことも必要です。

3. 情報収集

地震の発生時、迅速かつ信頼できる情報を速やかに入手するのは、冷静な判断を下すために重要です。情報収集や家族間での共有の仕組みが整っていることは、災害時の混乱を避けるために不可欠です。情報は何を使って調べるのか、家族間での情報共有はどのようにして行うのか?
これを何もない時に相談・練習しておく必要があると思います。

【2024年8月後半に発生した台風10号】

この台風は、日本各地に影響を及ぼしました。このような自然災害からは多くの教訓が得られます。新たに気づいたことと、今後気をつけなければならないポイントをご紹介します。

1. 災害情報の早期収集と確認

台風10号が接近する際、十分な情報収集ができなかったことで被害が拡大した地域もありました。過去の台風とは異なる進路や被害のエリア・規模も変わってきて、特に、気象情報や避難情報をどこで入手するのか。そしてその情報をどのように分析して行動するのかが、命に関わると思います。
テレビやラジオ、SNS、スマートフォンアプリなど、複数の情報源から最新の気象情報を取得することが重要です。特に、公式の気象情報サイトや自治体の情報を優先的に確認する習慣をつけましょう。
そして家族や地域内で緊急連絡手段を事前に決めておくことで、いざというときに迅速に情報を共有できる体制を整えます。

2. 洪水対策の徹底

台風による豪雨が引き金になったり、温暖化の影響で台風の発生以外でも局地的豪雨により、洪水が発生するリスクが高まっています。特に川の氾濫や土砂災害は重大な危険を伴います。過去の台風でも同様の問題が見られましたが、対策が急務です。自宅やよく利用する場所がどのようなリスクにさらされるのか、事前に確認しておくことが必要です。また、ハザードマップを基に、避難場所や安全な移動経路を計画しておくことも大切です。
家庭内や地域での排水設備(排水溝、側溝など)の定期的な点検と清掃を行い、豪雨による水の溜まりを防ぐ対策を講じることが重要です。

【3つの災害からの教訓】

能登半島地震を通じて学んだ教訓は、今後の防災対策の根幹を形成するものです。長期的な備えや生活基盤の多角的なニーズを満たすため、私たち一人ひとりが意識的に準備を進め、地域コミュニティとしての結束を強化することが不可欠です。災害はいつどこで発生するかわからないため、常日頃からの備えが、いざというときの助けとなります。このような取り組みを通じて、まずは自分の命を護る。それから大事な人を護る。それがどんどん広がれば、自分が住む町を守ることにつながると思います。

2024年8月の日向灘沖地震は、南海トラフ地震への警戒感をより一層高めるものでした。ここから私たちが学ぶべきは、備えの重要性と地域社会全体での協力の必要性です。地震に備えた物資の備蓄、教育の普及、迅速な情報共有のための仕組みを築くことで、今後の自然災害に対する備えを強固なものにしていく必要があります。
準備ができていない人は不機嫌で怒り出すことがあります。「慌てない、騒がない、怒らない」人は準備ができている人です。冷静な判断をするためにも、日頃からこのような取り組みを通じて、安全で安心な社会を実現していくことが重要です。

2024年8月後半の台風10号から得た教訓は、災害への備えや地域コミュニティの結束、環境変動への適応の重要性を示しています。災害情報の早期収集、洪水対策の徹底、そして環境変動への意識を高めることで、今後の自然災害に対してより強固な対応ができるようになります。これらのポイントをしっかりと意識し、備えていくことが重要です。

災害はいつ何時でも発生し、規模も大きくなっています。今まで大丈夫だったからと自分を過信するのは危険なことです。しかし新しい防災対策にグッズをどんどん買い込むだけでは、自分の命を護ることにはつながりません。ものを買ったら使ってみる。避難所に歩いて行ってみる。実際に半日でもいいからライフラインを切った生活をしてみる。そのような経験が自分の足りないことを気づかせてくれます。

もともと防災メシで冷凍のギョーザ、焼売を活用していましたが、本コラムを担当するうちに、意識する機会も増えました。

災害対策は大げさ位がちょうどいい。大げさに準備して訓練して、何もなければそれで良いのです。失敗を怖がらず、むしろ小さな失敗をいっぱいして災害に立ち向かっていきましょう。

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2024/12/20掲載