これは空飛ぶ潜水艦か、それとも海に潜る飛行機か?
この究極の問いに答える最先端技術を満載した攻撃機が、ついに長年の夢から現実に変わろうとしていますよ。やっぱり時代の進歩というのは恐ろしいものですね!
今回のレポートでは、米国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が、威信をかけて数年以内に完成を目指すという、驚きの潜水艦&戦闘機合体システムの全容に迫ってみたいと思います。こんなものが世界を飛び回る(いや潜り回るのか...)なんて危ない時代が、もうまもなく本当にやって来ますよ~
まずは、夢の戦闘機&潜水艦合体システムの歴史からクローズアップしてみることにいたしましょう。
当然ながら、米軍が全力で開発を目指してるんだったら、対するロシア(旧ソビエト連邦)だって、やっぱり同じ目標で研究開発に挑んできてますよ。上の動画は、なんと古くは1934年という昔に、ソ連軍のエンジニアだった、若きボリス・ペトローヴィチ・ウシャーコフ君が発案した、水中に潜れる戦闘機のアイディアをCGで再現したものです。
目標とする敵艦に近づいたところで、戦闘機は秘かに着水し、水中に没した後、まったく敵にとっては不意打ちの攻撃を仕掛け、その後は再び空中を飛行して帰還するというコンセプトでして、本気でアイディアを練りまくったウシャーコフ君は、上官に1936年に試作機の開発を提案したとのことですが、あえなく却下されてしまい、その後は日の目を見ることもなかったんだとか。
しかしながら、こんなものがマジで第二次世界大戦中に姿を現わして、大活躍するだなんてことがなくてよかったのかもしれませんけどね~
それから時代を下ること数十年...。今度は米国のエンジニアのドナルド・リードさんが、ただ頭の中で思い描くのみならず、実際に仕事の合間に飛行機から必要パーツを寄せ集めて、世界初の空飛ぶ潜水艦の試作機となるReid Flying Submarine(RFS-1)を作り上げちゃいましたよ。趣味のラジコン潜水艦を製作中に、ふわりと棚から落ちてきたプラモデルの飛行機の翼が潜水艦のサイドに偶然くっついたことから、本当に空飛ぶ潜水艦が作れるのではってアイディアが瞬時にひらめいたんだそうです。
RFS-1は、1962年に完成して、川面で初のテスト飛行が実施されました。記念すべきパイロットには、ドナルドさんの息子のブルース君が乗り込み、わずか数十メートルではありましたが、水上を飛行することに成功しました。その後、マニュアル工程ではあるものの、手際よくプロペラを取り外してエンジンをカバーで覆い、水深3メートルを潜行してみせて、見事な拍手喝采を得たのでした!
これは夢の空飛ぶ潜水艦の誕生への記念すべき第一歩ではありましたが、やはり課題も多かったことは否めません。水中に潜る時、パイロットはアクアラングを使って呼吸を維持することが求められました。おまけに潜水艦としての装備が重すぎて、その後も数々の改良が加えられたにもかかわらず、結局のところは空中を長時間長距離飛行できる性能を備えるには至りませんでした...
そもそも飛行機と潜水艦の構造そのものに、互いには相いれないポイントというものがあります。飛行機というのは、浮力を得るためにも、とにかく軽量化に努めなければなりません。一方、水中に深く沈むことを求められる潜水艦は、どうしても水圧にも耐え得る重厚な装備にならざるを得ません。
この相反する特徴に対して、どのように上手にバランスを取っていくことができるのか? その課題がエンジニアの眼前に突きつけられており、この難問の究極の答えは見出せていないのです。
軍関係者に対して、RFS-1のアピールを続けて、なんとか政府からの支援で夢の空飛ぶ潜水艦を完成させたかったドナルドさんですが、残念ながら、数多くの課題は未解決のまま残り、冷戦下の米軍からも強力なサポートを獲得することなく、失意のうちに1991年に79歳でこの世を去っていきました。
こうした背景を持つ幻の潜水艦&戦闘機合体システムの歴史なのですが、どうやらDARPAは、約2年前に立ち上げたプロジェクトを通じて、この度は今後数年以内に実用化も可能であるとの判断を下せるまでに順調な開発を進めており、いよいよ正式に2011年から試作機の製作に着手する準備を整えたようです。
ほんのちょっと前までは、こんなものを作るだなんて、ばかげた取り組みにしか思えなかったでしょう。でも、今では時代が変わりました。かなり実現へと近づいてきてますよ。
そう語る、今回の研究開発プロジェクトでも中心的な位置を占めるエンジニアのグラハム・ホークスさんは、以前は克服できなかった様々な課題が、新たなアプローチなどによって、次々と解決されてきたことを挙げています。
たとえば、近年のカーポンファイバーを始めとする軽量素材を用いることで、飛行機としての性能を持たせやすくなったことに加えて、どうやらDARPAでは、水中の潜水艦としての推進力に、重量がかさむバッテリーシステムではなく、飛行機のジェットエンジンを応用し、そのまま水中でも稼動させられるような仕組みを考案しているようです。
また、軽量化に努めると、浮力が強すぎて水中深くは潜行できないという課題に対しては、そのまま飛行機の翼を上手に活用して、空中とは逆方向に働く、水面下へと潜るための力を生み出せるような翼にスイッチ可能にする「Super Falcon」なるアイディアが、有力候補とされているみたいですよ。
原点に戻って考えると、やはり飛行機をベースにスタートするのが最善であると思う。空飛ぶ潜水艦というコンセプトは難しすぎる。しかしながら、海の中にでも潜れる飛行機というコンセプトならばあり得る。
そう述べた、海軍戦略技術分野の元専属アドバイザーのノーマン・ポルマーさんは、決して前途は容易でないものの、必ずやDARPAが、潜水艦としても機能する次世代戦闘機を完成させられると確信しているそうです。今後の進展からも目が離せませんね!
[DARPA]
Adam Frucci(原文/湯木進悟)
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