1883年地球は一度滅亡しかけた!?

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  • author satomi
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1883年地球は一度滅亡しかけた!?

1883年8月12日、彗星群が地球にあわやぶつかる寸前だったらしいですよ?

それを偶然目撃したと思しいメキシコの天文学者José Bonilla(ホセ・ボニージャ)氏の観測報告を再検証したメキシコ国立自治大学(UNAM、Universidad Nacional Autónoma de México)が、そう書いてるんです

1883年、ボニージャ氏は2日間で447個もの物体が太陽の前をビュンビュン通過するのをメキシコのサカテカス(Zacatecas)天文台で呆然と観測し、フランスの天文学ジャーナル「L'Astronomie」に発表しました。

が、プエブラやメキシコシティにある大きな天文台ではもっと一流の科学者たちが夜間も監視していたのにこれらの物体は一切観察されなかったんですね。なぜか? 当時は誰も確かなところは分からずじまい...。論文掲載先のL'Astronomieの編集者も、鳥とか虫とか塵が望遠鏡の前を通過したんじゃね?...てなこと言って濁していたのです。

しかし、今回UNAMが辿り着いたのはまったく別のシナリオです。ボニージャ氏が観測した物体はおそらく巨大な重量10億トンもの彗星が粉々になった破片で、ほかに誰もこれを観測できなかったのは地球にあまりにも近いところを通過したため地表の極狭いエリアの人にしか見えなかったんじゃないか、というんですね。要するに視差(パララックス)で見える人と見えない人にわかれた、と。

そこまではともかく目が点になるのは、この先です。

プエブラとメキシコシティはどちらもサカテカスから約400(644km)しか離れてないんですね。これをもとにUNAMが彗星の通過地点を計算したら、なんと地球からたったの300~5000マイル(483~8047km)だったのです! 300マイル(483km)というとフィラデルフィア-ボストン間東京-岩手テスラが1回の充電で走れる距離ぐらいですよ。人類滅亡まで483kmのところまで来ていたとは...うむ~。

「2日に447個の謎の物体を目撃した」というボニージャ氏ですが、実際に氏が数えていたのは延べ3.5時間だけなんですね(数えくたびれてしまったんでしょうか...)。そこでUNAMでは実際の破片の延べ数を計算するため、ボニージャ博士が精根尽き果てるまで観測した破片の1時間あたりの平均数をとって2日に積算してみたんです。そしたらばな~んと総勢3275個になってしまったんです、オーマイガー! そりゃ途中で数えるの嫌になるよね!

しかもそれが1個1個全部、1908年のツングースカ大爆発の彗星並みかそれを上回るデカさだったと思われるらしい...。

ツングースカ(Tunguska)の衝撃は控え目に見積もって約15メガトン、広島の原爆の1000倍のパワー。それが2日に計3275個も地球に降ってきた日にゃ...論文執筆者じゃなくても「あわや人類絶滅の一大事」(論文)って思っちゃいますよね。

彗星の破片は1883年には既知の現象でしたが、観察されたのはまだ2例だけだったのです。2と447ではあまりにも隔たりがあるし、ボニラ博士も野鳥愛好家の編集者もきっとこの両者を結びつけて考えられなかったんでしょう。

因みにボニージャ氏が観測したのと同じ年、偶然同じ軌道で観測された別の彗星もあるんですよ。同じぐらい巨大な彗星が誰も知らないところで間一髪(天文学の世界にはこれを「a galactic hair's breadth」と呼ぶ)通過してたのかもしれませんよ?

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上記公開後、原文には懐疑論がアップデートされてます。Bad AstronomyブログのPhil Plaitさんは「これだけのサイズの物体が何百とあるからには、直径数cmもの小さな破片は何百万個とあるはずだし、一部は地球大気に飛んできて日中見えたはず。数千km先を長さ百万kmの彗星が通っていながら、流星雨の報告は何もあがってない」と書いてますよ。う~ん、やっぱり世界最古のUFOだったのかも~。

[Cornell University Library via Technology Review, SlashDot; Science; Bad Astronomy; Image credit: NASA, ESA, H. Weaver (APL/JHU), M. Mutchler and Z. Levay (STScI) via APOD]

KYLE WAGNER(原文/satomi)