一日の終わりにベッドに入るとき、自分がどんな環境で眠りについているかを意識したことはあるだろうか? マットレスの掃除をちゃんとしていないと、シーツの下には絶対一緒に寝たくないもの、例えば、目には見えないレベルの虫のフンなどが隠れているかもしれない。
米ニューヨークのアレルギー専門医パイエル・グプタ博士(MD)はこう指摘する。「ダニはマットレスの奥深くに潜り込み、そこで排泄を続けます。その結果、マットレス全体が排泄物に覆われるのです」。特にハウスダストアレルギー持ちの人々にとって、ダニの排泄物こそアレルギーの原因であると、彼女は付け加える。
ここまで読んですぐにアマゾンで新しいマットレスを注文しようとしているなら、ちょっと待ってほしい。その前にマットレスの掃除方法を知っておいて損はない。洗濯機に放り込むわけにはいかないのは確かだが、実は意外と簡単にきれいにできるのだ。
マットレスを掃除すべき4つの理由
汚れたマットレスは、同じベッドに寝る相手に嫌な思いさせるだけじゃ済まない。あなた自身の睡眠の質、さらには健康そのものに跳ね返ってくる可能性だってある。
日中、ほこりは知らず知らずのうちに髪の毛や頭に溜まっている。そのままベッドに入った場合、私たち自身がダニにとっての“ごちそう”を提供していることになる。ニューヨークのランドリーサービス「ジュリエット」の創業者レシェル・バランザットは、寝る時にそのほこりがダニを引き寄せると指摘している。
ハーバード大学医学大学院とマサチューセッツ総合病院の博士研究員で、睡眠の研究をしているケイティ・マッカラー(PhD)は、マットレスを定期的に掃除しないと、ダニの排泄物が時間の経過とともに溜まり、寝ている間にそれが放出されることになると警告する。「これがアレルギーや呼吸器系の問題を引き起こし、くしゃみや咳、目のかゆみなどの症状が現れて、睡眠の質を低下させる原因になるのです」
特に、アレルギー性喘息(咳や喘鳴、息切れ、胸の圧迫感)やアレルギー性鼻炎(鼻水、鼻詰まり、口呼吸、後鼻漏)、アレルギー性結膜炎(目のかゆみや流涙症)などの症状が悪化する可能性があり、これらの症状が夜間の睡眠を妨げ、健康にも影響を及ぼすことになるとグプタ博士は指摘している。
ベッドで朝食を楽しむことは贅沢な週末の始まりかもしれないが、実はこれがマットレスのシミの原因となることが多い、とバランザットは言う。また、こぼした食べ物は、害虫を引き寄せる原因にもなる。特にゴキブリやアリは、ベッドでの夜食が大好きだ。さらに、これらの虫は体臭にも引き寄せられるので、汚れたマットレスは彼らにとって最高の“ごちそう”となる。
横向きやうつ伏せで寝る人は、朝起きるとマットレスに何かしら残していることが多い。よだれだけでなく、汗や寝尿、さらにはセックス時にオイルやローションを使った場合、汚れがマットレスに染み込み、時間が経つにつれてマットレスを傷めていく、とマッカラー博士は説明する。たとえ寝床が汚れていないと自分では思っていても、「肌や髪から出る油分やバクテリアがマットレスに残ることが、汚れを加速する原因になる」と彼女は言う。特に裸で寝る習慣がある場合は、より注意が必要だ。このことから、専門家たちはマットレスを8~10年で交換することを勧めている。
ペットと毎晩一緒に寝ることは、フケや毛がベッドに入り込む原因となり、さらに不運な事故を招く可能性もある。「自分が犬や猫にアレルギーがあると知っていても、それを認めたくない人も少なくありません」と、グプタ博士は言う。「でも、アレルゲンの浸入を絶対に避けるべき場所があるとすれば、それは寝室です」。犬アレルギーを起こしにくいといわれるドゥードル犬でも、症状を引き起こす可能性はあると博士は述べている。
マットレスの掃除に必要なもの
言うまでもなく、マットレスは洗濯機で洗うことはできない。しかし、高機能な道具に投資せずにマットレスを掃除するにはどうすれば良いのだろうか? 幸い、マットレスを洗うために必要な道具は、おそらくすでにあなたのクローゼットのどこかに眠っているはずだ。バランザットは、マットレスの掃除に必要な基本的なアイテムを次のように挙げている。
- 食器用洗剤
- 重曹(ベーキングソーダ)
- ホワイトビネガー
- 掃除機
- 清潔な布
- 過酸化水素(オキシドール)
落ちにくい汚れには、スチームクリーナーが必要になることもある。
マットレスの掃除方法:3つの簡単なステップ
マットレスの掃除はそれほど手間のかかる作業ではない。バランザットが推奨する、月に一度行うべきマットレス掃除の方法を紹介する。
- 掃除機をかける
シーツを取り外した後、マットレスの上に掃除機をかけて、ほこりや髪の毛、食べかすなどを取り除く。 - ホワイトビネガーをスプレーする
ホワイトビネガーと水を1:1の割合でスプレーボトルに入れ、マットレスの上に吹きかけて消毒と消臭を行う。より良い香りを求める場合は、エッセンシャルオイルを数滴加えるか、ファブリーズのような家庭用の消臭スプレーを使うと良い。 - 重曹を振りかける
さらなる消毒と消臭を行うため、重曹を軽く振りかける。30分以上そのまま放置し、その後掃除機で吸い取る。新しいシーツをかけるときは、マットレスが完全に乾いてからにする。
もちろん、定期的な掃除だけでは対処できない場合もある。もし何かをこぼしてマットレスにシミがついた場合、バランザットはすぐに対処することを勧めている。シミの程度に応じて、以下の3つの方法がある。
- 表面のシミをふき取る
液体がシミを残した場合、すぐに食器用洗剤と温水を少量注ぎ、清潔な布で優しく叩くようにして吸い取る。「シミを押し込むのではなく、吸い取るような感じで」とバランザットは言う。カビを防ぐためにも、シーツを戻す前に完全に乾かすことを忘れずに。乾湿両用掃除機を使えば、液体や洗剤も取り除ける。 - 頑固なシミにはペーストで対応
尿などの頑固な汚れには、過酸化水素、重曹、食器用洗剤を混ぜてペーストを作り、軽く叩くようにして落とすのが効果的だとバランザットは勧めている。必要であれば、歯ブラシを使うと効果的だ。 - 深く染み込んだ汚れはスチームクリーナーを使う
家にあるカーペット用のスチームクリーナーを使えば、マットレスに染み込んだシミも取り除くことができる。
マットレスを普段から清潔に保つ方法
マットレスの洗い方はわかったが、頻繁にきれいにするのは面倒だと感じる人も多いだろう。しかし、少し工夫するだけで、マットレスをできるだけ長く清潔に保つことも可能だ。賢く取り入れたい方法を以下に紹介する。
- 防水マットレスプロテクターを活用する
マッカラー博士は、「防水マットレスプロテクターを使用すれば、マットレスと周囲の環境(ほこりやアレルゲン、その他の汚れ)との間にバリアが作られる」と説明する。また、これらのプロテクターは比較的安価ながら効果的であるため、非常に実用的だともいう。対アレルギー特性があり、密に織られたものを選ぶと、ダニやその仲間が出すアレルゲンの影響をさらに減らすことができる。ほこりやダニから守るために、防ダニ加工の枕カバーに投資するのもおすすめだ。バランザットによれば、これらのプロテクターは簡単に取り外して洗うことができるため、「汚れを落とすよりも洗濯機に入れるだけなので、生活がかなり楽になる」とのことだ。 - 除湿機を活用する
グプタ博士によると、ダニは湿気を好み、湿度の高い環境で繁殖するため、湿度を適切に管理することでマットレスがダニの排泄物まみれになるのを防ぐことができるという。米国環境保護庁(EPA)は、相対湿度を60%未満、理想的には30%から50%の範囲に保つことを推奨している。 - 寝具を過剰に重ねるのを避ける
夜間の体温上昇は、寝汗をかくリスクが高まるとマッカラー博士は指摘している。 - シーツは1~2週間ごとに取り替え、お湯で洗う
ベッドリネンにほこりや汚れが溜まらないようにすれば、それらがマットレスまで浸透する可能性は低くなる。 - 清潔な状態でベッドに入る
外出先の服を着たままベッドに入るのは避け、靴を脱いでから、寝る前にシャワーを浴びることをバランザットは推奨している。 - ベッドで食べない
例えば、ベッドでNetflixを観ながらおやつを食べたくなったとしても、我慢しよう。「食べ物のカスが残ると、クモや虫を引き寄せてしまう」とバランザットは指摘している。
確かに、マットレスを清潔に保つには少し手間がかかるかもしれない。しかし、ベッドが清潔だとわかっていれば、文字通り安心して眠れるようになる。それだけの価値はあると言えるだろう。
まとめのFAQ
マットレスを掃除する最適な方法は?
まず掃除機をかけ、その後、ホワイトビネガーと水を1:1の割合で混ぜたものをスプレーし、重曹をふりかける。そのまま最低30分、もしくは乾くまで放置し、最後にもう一度掃除機をかける。
マットレスを消毒し、臭いを取る方法は?
重曹とホワイトビネガーはどちらもマットレスを消毒し、臭いを取る効果がある。重曹は臭いの原因となる分子の化学構造を破壊し、臭いを中和する。ホワイトビネガーの酢酸は細菌を殺す効果があると、バランザットは説明する。
電化製品を使わずにマットレスを徹底的に清掃する方法は?
尿や血液など体液の頑固な汚れには、過酸化水素、重曹、食器用洗剤を混ぜたペーストを作り、汚れを拭き取る方法がある、とバランザット。これで効果がない場合は、スチームクリーナーを試してみよう。
マットレスはいつ掃除すべきか?
バランザットは、シーツを交換したり洗ったりする際に、マットレスも月に一度掃除することを勧めている。
本記事の執筆に関わった専門家について
ニューヨークのSUNY ダウンステート メディカルセンターおよびマウントサイナイ メディカルセンターで臨床助教授を務めている医学博士。3つの専門医資格を保有し、米国アレルギー免疫学会、米国内科学会、米国小児科学会の認定を受けている。
ニューヨーク市に拠点を置くランドリーサービス「ジュリエット」の創業者。ランドリーおよびドライクリーニング業界を21世紀型にアップデートすることを目指している。
ハーバード大学医学大学院およびマサチューセッツ総合病院の博士研究員。主に睡眠と生体リズムの研究に取り組んでいる。ブラウン大学で博士号を取得し、博士論文では連夜のアルコール摂取が人間の睡眠に与える影響について研究した。
この記事はまた、オーブリー・ウェルズ博士によって医学的にレビューされている。ウェルズ博士は睡眠医学の学会認定を受けており、閉塞性睡眠時無呼吸症候群や不眠症に悩む人々に特化した教育、サポート、グループコーチングを提供するオンラインプラットフォーム「Super Sleep MD」の創設者でもある。
From GQ.COM
By Jennifer Heimlich
Translated and Adapted by Fraze Craze