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星落秋風五丈原
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えっフレンチ警視が石油成金に?(違います)
 邦題では、まるでフレンチ警視が警察をやめて石油成金になって暮らすかのようだ。いや、あの庭仕事が趣味の彼が?ないない。原題は英語の慣用句で「うまい儲け口にありつく」という意味と実際に石油を掘り当てる話とを両方踏まえている。

 ロドニー・ヴェールは弁護士として働くはずが、出征して勲章をもらったことから、平凡な日常に物足りなさを覚えていた。常に冒険を追い求めている彼に持ち込まれたのが石油採掘だ。しかし一攫千金の賭けに身を投ずるなら、辺り一帯を買占め、当人たちも別の場所で生活する必要がある。家長でありロドニーの父親サー・リーは合議制で決めようと提案。賛成したのはサー・リーの甥ジョージ、次男のルパート、反対したのは、長男モーリス。中立の立場にいるのが、サー・リーとジョージの妻ポーリン。モーリスは申し分のない長男だが、それだけにお堅い。ルパートは出征したが、弟のロバートより階級が下で、ポーリンに言わせると“一家の黒い羊”らしい。そして数日後、モーリスの死体が踏切で発見。自殺か事故か、はたまた他殺か。

 本来警視になっているフレンチが自ら乗り出す事件ではないのだが、副総監が「風邪ひいてるみたいだから転地療養みたいな感じでちょっと行ってくれば?」と言われ、いそいそと出向く。なんていい上司だ。

本来倒叙方式なので、先に事件の真相が明かされ、フレンチ警視が後追いするパターン。ところが本編ではモーリスが死んだ事のみが明かされ、読者はフレンチ警視と同様、何か隠しているらしい関係者の秘密を探っていく。フレンチもいつものこつこつ捜査で「この人が犯人では?」という相手を早々に見つけるが、能力、動機、状況証拠があっても決定的な目撃証言がないためラスト直前までもつれる。さて、あなたはフレンチより先に犯人を見つけられるか?

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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2228 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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