真夏にぴったりのスペシャルなライス
夏は暑い。
暑いといえばカレーだ。
ファミリーレストランが始めたカレーフェアが「夏=カレー」というイメージを定着させたと言われているが、たしかに暑い夏はカレーが食べたくなる。
そんなカレーにぴったりのスペシャルなライスがあった。
▲ カレーはおいしい
暑いインドで食べられているカレーが、夏にピッタリなのは当たり前かもしれない。
インドの気候はいつも日本の夏みたいなものなのかな、と思って詳しく調べたら、地域によってかなり異なるそうだ。
北はヒマラヤ山脈の山岳地域から、南はインド洋に面した亜熱帯地域まで広大な国土を持つため、地域によりインドの気候は大きく異なる。
そして、実はカレーの種類も南北でまったく違う。
ざっくり言ってしまうと、北インドのカレーはドロッとしていて、南インドのカレーはサラッとしているし、南ではナンをあまり食べないと聞く。
さらに、南インドには「レモンライス」という食べものがあり、どうやら家庭では一般的な料理らしい。これがカレーととにかくよく合うとも聞いた。
作ってみよう。
▲ 南インド風のカレー
カレーにハマる人は多い。
スパイスを買いそろえたら「カレー沼」の始まりだ。
かくいう私もカレーにハマってから、長い時間が経過した。
週末になると台所に立ち黙々と玉ねぎを炒め続ける。
おいしいカレーを作りたいという目的に向かって一心不乱に鍋をかき混ぜる。
ただ、カレーに正解はないし、どんなカレーもおいしい。
一神教ではなく多神教。
終わりはない。
▲ 祈祷(きとう)に使用されるスパイスたち。余談だが私は吉岡里帆も信仰している
カレーにハマると、味の追求が始まる。
まずはスパイスの調合に凝り始める。
あれやこれやとスパイスを買いそろえて、配合を研究し始める。
次に隠し味を探し始める。
カシューナッツを入れるとおいしいという記事を書いたら多く読まれたので、カレーをさらにおいしくしたいと考えている人は多いことがわかる。
そんなある日、私は気がついてしまった。
美味なるカレーを作るための道は一つではないことに。
ごはんにかけるルウを改造するのも楽しいが、カレーライスの根幹をなす「ライス」をチューンナップする手法もあるのだと。
そして私はレモンライスに出合った。
▲ カレーをごはんからおいしくする。ピッチャーが、まず下半身を鍛えるようなものだ
レモンライスは「レモン味の炒めごはん」といったイメージらしい。
スパイスなどもたくさん使った方がうまくなるし、本格的にはなるのだろうが、今回は最低限の材料で作ってみたい。
レモンライスをつくってみる
材料はこちらだ。
【材料・2人前】
- マスタードシード 小さじ1(なくても大丈夫)
- ホールのブラックペッパー 小さじ1
- ニンニクペースト 小さじ1
- ショウガペースト 小さじ1
- ターメリック 小さじ1/2
- ごはん 2膳
- サラダ油(オリーブオイルでも) 小さじ1
- レモン(できれば無農薬のもの) 1個
- 塩 適宜
▲ 近くの八百屋さんに行ったら、おいしいレモンを用意してくれた
レモンライスは、言うならば「レモン味のチャーハン」である。
ニンニク、ショウガはもちろん、カレーとの相性を考えた結果、マスタードシードとホールのブラックペッパーを使った方がおいしいと判断した。
マスタードシードがなければ省いて、ブラックペッパーだけでもいけると思う。
まず、油でニンニクペースト、ショウガペーストと、ホールのプラックペッパーを2〜3分ほど弱火で炒める。
マスタードシードは今回はイエローのものを使用。これも油で一緒に炒める。
じっくりとスパイスの香りを引き出したら、そこにごはんを投入してさらに炒める。
全体に油が回ったら、ターメリックを入れ、しばらく炒めて土っぽさを消す。
▲中火にして3分ほど軽く炒める。この後の手順はのちほど
ところで、今日は友達が遊びにきている。
有名ライターの地主くんだ。
過去に『妄想彼女』という本を一緒に作ったこともあり(フジテレビでドラマにもなった)、公私に渡って仲良くしている、と言いたいところだが、最近は全然仕事をしていないので、ただの遊び仲間になりつつある。
この前は昼から一緒に競艇に行った。
彼はいつもお腹をすかせているので、彼にもレモンライスを食べてもらおうと思う。
▲ 6歳の息子が愛読する『コロコロ』を読み込む地主くん
ごはんを十分に炒めたら、ここでレモンを投入しよう。
まずはレモンの皮をすりおろして、さらにレモン汁(レモン汁は1/4個程度)を絞って入れる。
汁を入れすぎると水っぽくなるので気をつけたい。
レモンの皮は、たくさん入れると風味が増すから、じゃんじゃん入れたい。
どうせなら無農薬のレモンがいい。
▲ 皮を入れて、汁を入れる
▲ 最後に塩で味を調えて完成である。美しい
黄色いのはターメリックのイエローだ。
レモンの風味と相待って爽やかさを感じさせる仕上がりである。
▲ その間、地主くんはじっと待っていた
▲ レトルトのカレールウをかけてみる
▲ そして完成したレモンライスを使った「ごちそうカレーライス」
なんというか、もう、すでにこの状態で佇まいがただ者ではないことが伝わってくる。
黄色い色味もそうだし、ほのかに香るレモンの爽やかさが食欲をかきたてる。
さっそく食べてみる。
ライスを口に入れた瞬間、レモンの爽やかさが鼻から抜ける。
同時に油のうま味と、スパイスの香ばしさが口いっぱいに広がる。
ニンニクは香ばしく、レモンの皮の歯応えもいいアクセントになっている。
カレーの甘さと、ほどよく酸味がきいたごはんが混ざると、カレーのうまさがさらに引き立つ気がする。
▲ これはうまい!
脇役どころか、もはや主役級のうまさじゃないか。
そのままでもバクバクいける。あはは、こりゃうまい。
▲地主くんもレモンライスのおいしさに感動している。よっぽどお腹が空いていたらしい
ひょっとしたらカレー以外にも合うのではないか
▲ レモンライスを酢飯に見立てて、手巻き寿司にしてもぴったりなので試して欲しい
レモンライスはカレー以外でももちろんおいしい。
無限に広がるレモンライスの可能性。
ビジネスチャンスを感じなかったといえばうそになるだろう。
フリーランス・40歳。お金はいくらだって必要だ。
まだまだお腹をすかせた地主くんに茶碗を渡す。
地主くんは納豆と海苔で巻いたレモンライスを口に入れた。
「どう?」
▲「おいしいけど納豆よりもカレーの方がいいと思います!」
私もそう思います。
カレーにはレモンライス。
名前だけでも覚えて帰ってください。
本当にカレーと合いますから!
書いた人:キンマサタカ
編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)