フィンテック「金縛り」のアリババ、市場予想を上回る決算発表 〜今後はローエンド市場を強化:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/4 ページ)
アリババグループは2月2日、2020年第3四半期決算を発表した。中国当局の監視が厳しくなる中、売上高は前年同期比37%増の約3兆5600億円、純利益は同52%増の約1兆2800億円と、市場予想を上回るものとなった。今後は、コロナ禍の消費変化に対応する新事業やのローエンド市場を強化する方針を強調した。
規制の不確実性、現段階では分析不可能
「アント・グループの上場延期とアリババに対する独禁法調査は、冷静に物事を再考し成長するための重要な機会だ。調査には誠実に協力している。激しい市場競争の中で、アリババはイノベーションによって顧客にさらに高い価値を提供していく」
張会長はアリババの現在の環境について、記者にこう説明した。
アリババの金融子会社で、決済アプリ「アリペイ」や信用スコア「セサミ・クレジット」を運営するアント・グループ(螞蟻集団)は20年11月初旬、金融当局の指導を受け上場直前で延期に追い込まれた。
アントは人工知能(AI)やビッグデータを活用した効率的な金融商品をユーザーに提供するとともに、銀行や保険会社にプラットフォームを開放して巨額の手数料を稼いできたが、銀行業界の規制を受けずに金融事業を行っているスキームが問題視され、組織の抜本的な再編に着手した。
親会社のアリババも年末にかけて独禁法違反などで2度の行政処分を受け、現在も当局の調査が続いている。
10月下旬に金融関連のイベントに登壇して以降、3カ月近く沈黙していた創業者のジャック・マー(馬雲)氏が1月下旬にオンラインイベントで姿を見せ、当局とアリババの関係のこじれはある程度解消したと思われる。
しかし、同社は「中国のフィンテック規制環境における最近の重大な変化によって、アントの事業と上場計画は大きな不確実性にさらされている。アリババグループに与える影響は現状では分析できない」とコメントするにとどまった。
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