急速に進化するAI技術により組織内の役割も変化を遂げつつある。特にCFOはこれまでの財務管理だけでなく、AIや新技術の導入をリードして組織全体での戦略的活用を模索する立場も任されており、役割と責任が増している。
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AIは2025年に向けた経営陣の最重要課題となっており、企業はこの技術がどこでどのように最大の利益をもたらすのかを精査している。しかし、数あるベンダーからツールを選ぶだけでは最初の一歩を踏み出したにすぎない。
リース資産最適化サービスを提供するVisual Leaseのエイミー・ダー氏(CPO《最高製品責任者》)は、「通常はツールをどのように活用したのかを明確にし、それが監査可能であることを法務や財務の観点から説明する必要があるが、これはAIにおいては必ずしもできることではない」と述べる。
財務責任者が新しいAIツールを探して導入を検討する際は「ある程度のトレーサビリティーや監査可能性を備えたツールを選ぶ必要があるだろう」とダー氏はインタビューで語った。
AI、特に生成AIは依然としてビジネスリーダーが2025年の戦略を決定する際の最優先事項だ。
「2025年は非常に興味深い時期だ。なぜなら、AIは通常では判断できないような意思決定を促す技術だからだ」(ダー氏)
ダー氏はニュージャージー州ウッドブリッジを拠点とするVisual LeaseのCPOを約2年間務めている。その前はメール送信プラットフォームを提供するSparkPostで10年間のキャリアを積み、経営幹部や製品担当のトップに就いていた。
ビジネスに透明性と監査可能性を備えたAIツールを導入するためには、財務責任者がこのような議論に積極的に関与することが不可欠だとダー氏は言う。また、財務責任者は技術チームやITチームなど経営幹部の他の主要メンバーと緊密に連携し、効果的な戦略を立案する必要がある。
「顧客や市場の中でわれわれが目にする最大の課題の1つは、CFO(最高財務責任者)が『ITや技術について話し合おう』『それは本当はどういう意味なのか』『どのように実行すればいいのか』といった議論を普段からあまりしないことだ。その結果、彼らはこれまで関わりのなかった他部門と協力しなければならない状況に直面している」(ダー氏)
さまざまな部門からのフィードバックを踏まえて慎重かつ段階的なアプローチを取ることは、リーダーがAI戦略をより効果的に実行するのにも役立つ。組織をけん引するのはCEOやCFO、その他の経営幹部のメンバーかもしれないが、「彼らが単にトップダウンで大々的な改革を推し進めるだけでは不十分であり、従業員からの支持を得る必要がある」とダー氏は述べる。
「リーダーは全てを一度に実行することに集中するのではなく、その影響を受ける人たちの支持を得ることに注力すべきだ。われわれはAI技術が特定のある分野で役に立つかどうか、そして実際に影響を与えられるかどうかを見極めようとしている。組織内でこれを主導するのは誰なのか、『ミスターAI』のような人や専門知識を持つ人材を決めておくことが重要だ。AIを新しい方法で活用したり、新たなツールを導入したりする際には、相談する人物が誰であるかを明確にする必要がある」(ダー氏)
ここ数年、CFOはビジネスの戦略立案においてより大きな役割を担うようになっており、そのため技術の導入などの議論にも深く関与するようになっている。
経済的な逆風が続く中、より多くの財務責任者が新技術の影響も含めた長期的なシナリオプランニングに細心の注意を払っている(注1)。McKinsey & Companyが2024年7月に実施した調査によると、CFOが最優先課題として挙げたのはシナリオプランニングと長期的なリソース配分だった。
ダー氏によると、法務や事業運営などの分野を監督し、新技術に関する議論を主導する財務責任者が増えているという。
「CFOはAIや新しい技術に取り組む中で、これらがどのように機能するのかに関してより大きな役割を果たしている。なぜなら結局のところ、それは全てビジネスに対するリスクに関わるものだからだ」(ダー氏)
しかし、そのリスクを管理するためにはCFOが慎重にバランスを取る必要がある。「財務は試験的に何かを試したり、リスクを容認したりできるような分野ではないため、リスクの高い新技術を自社の財務プロセスに導入する場合は特にそれが言える」とダー氏は話す。McKinsey & Companyの調査によると、財務責任者は生成AIが財務機能に価値をもたらすと考えている一方で、彼らの大半は大規模なプロセスのデジタル化にはまだ至っていないことも認めているという(注2)。
「財務部門は厳格な管理体制を維持しなければならないため、データは可能な限り完璧に近いものでなければならない。組織内でこれほどまでに監査を受け、厳重な監視が行われる部門はほとんどない」(ダー氏)
(注1)Toward the long term: CFO perspectives on the future of finance(McKinsey & Company)
(注2)Toward the long term: CFO perspectives on the future of finance(McKinsey & Company)
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