最新SoC「Snapdragon 8 Gen 1」では何が変わるのか? カメラからセキュリティまでを解説Qualcomm Snapdragon Tech Summit 2021(2/3 ページ)

» 2021年12月10日 17時36分 公開

カメラの撮影性能とセキュリティも向上

 Snapdragon 8 Gen 1に話を戻すと、新製品ではネットワーク機能がさらに強化されている。「5G NR Release 16」に対応したSnapdragon X65 5G Modemを搭載し、下り最大10Gbps、上り最大3.5Gpbsの高速通信が可能になる。Qualcommでは特に“上り”速度の高速化をアピールしており、コロナ禍でビデオ会議のようなソリューションの需要が急速に増える中、高画質の会議ソリューションが利用できることを特徴とする。またミリ波の重要性についても重ねて言及しており、Sub-6のみのケースと比較して倍近いダウンロード速度を得られるとしている。インフラ整備が後手後手になるミリ波だが、今後アプリケーションにおける通信需要が逼迫(ひっぱく)するにつれ効果を発揮すると思われ、その有用性を改めてアピールする。

Snapdragon 8 Gen 1 通信面ではアップロードの高速性をアピールする
Snapdragon 8 Gen 1 ミリ波の重要性についても重ねて強調。インフラ整備が拡充されるのはいつになるか

 そして今回最もフォーカスされていたのはカメラ機能だといっていいだろう。異なる種類のレンズやセンサーを搭載してスマートフォンでの画質や撮影の幅を広げる試みは2010年代後半から中国や韓国のベンダーを中心に盛り上がったが、その結果、ミッドレンジ以上の機種で2レンズのカメラはごく当たり前となりつつある。イメージセンサーの高解像度化もさることながら、これらレンズを通して入力される映像信号を同時処理するためにISP(Image Signal Processor)は高機能化、そして多重化されるようになり、SoCの構成要素を大きく占めるようになった。

 この信号はさらに内部処理され、いわゆるAIエンジンと組み合わせることでHDR画像をリアルタイムで生成したり、あるいは“ボケ”を後付けで発生させてポートレート的な効果を生み出したりと、従来のデジタル一眼レフカメラであればレンズ交換や現像処理、撮影時のテクニックなどを駆使してしか得られなかったような効果が誰でも簡単に楽しめるようになっている。Qualcommでは16億台のスマートフォンに同社のカメラ技術を提供しているとしているが、調査会社の最新データによれば、2021年12月時点で世界のスマートフォン台数は64億台とされており、すなわち4分の1ほどがSnapdragonの技術の恩恵を受けていることを意味する。

Snapdragon 8 Gen 1 Snapdragonは世界の16億台のスマートフォンのカメラで活用されているという
Snapdragon 8 Gen 1 Snapdragon 8 Gen 1におけるカメラ機能

 前モデルのSnapdragon 888で採用されていたISPのSpectra 580では初めて3つのISPが同時駆動するトリプルISP機構を備えたが、Snapdragon 8 Gen 1の世代ではさらに処理速度が強化され、従来の秒間2.7ギガピクセルから秒間3.2ギガピクセルまで19%ほど高速化されている。色深度も従来の10bit幅から18bit幅にまで強化されており、特に明暗の激しい映像や、暗所撮影などで効力を特に発揮する。

 画像処理能力が強化された結果、例えば暗所撮影で複数枚の画像を瞬間撮影してAIで合成を行うケースなど、従来まで6枚までの瞬間撮影だったものが、同時に30枚撮影と5倍に増加しており、色深度の18bit化と合わせて大きな効果を得られるようになった。また8K HDR撮影にも対応しており、撮影においてはイメージセンサーから動画部分と静止画部分の同時切り出しが可能になり、動画と静止画で撮影モードをわざわざ切り替えずとも両方の映像を同時に得られるようになった。

Snapdragon 8 Gen 1 画像処理能力の向上により、暗所撮影などでの合成に使う画像の瞬間撮影枚数が大幅に増えている
Snapdragon 8 Gen 1 8K動画と6400万画素の静止画の同時撮影も可能

 AIエンジンとの併用で、4K動画撮影での“ボケ”の自動挿入も可能になっている。これはArcSoftのソフトウェア技術を活用したもので、動画撮影時に対象となる人物などと背景との距離を自動認識し、“ボケ”を有効化することで背景を自動的に“ぼかす”というもの。AppleがiPhone 13 Proでシネマティックモードとして同種の機能をアピールしていたが、誰でも気軽に撮影効果を楽しめるようになったという点で技術の進化は大きい。

Snapdragon 8 Gen 1 4K動画撮影で“ボケ”をリアルタイムで自動挿入する機能

 また地味ではあるものの、「Always-on Camera」という新機構も興味深い。スマートフォンのカメラといえば「静止画や動画を撮影するもの」という認識だが、最近はこれにAppleのFace IDをはじめとして「顔認証」が追加された。後者は主にロック解除時に利用するものだが、Always-on Cameraはさらにセキュリティレベルを向上させる。

 この機能が有効になっている場合、スマートフォンの動作中は常にカメラがオンになっており、画像の撮影などの有無にかかわらずカメラが周囲の映像を自動で取り込んで“認識”している。これにより、利用者がスマートフォンの前にいるときだけ画面が“オン”の状態になってロックが解除され、仮にインカメラの領域内に本人以外のユーザーの顔が侵入してきた場合など、のぞき見防止のために画面がロックされたり、警告メッセージを発したりする。カメラ機能のセキュリティへの応用というわけだ。

Snapdragon 8 Gen 1 のぞき見を防止するセキュリティ機能にカメラを応用

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