「ネットの1万アクセスが、本当に愛しい」――日本テレビ放送網の担当者はこう漏らす。テレビ局は、何千万人もを惹きつける番組制作ノウハウを持つ。しかし“ネット視聴者”は、数万人をつかみ取るのも難しい。
テレビ局ならではのネットコンテンツとは何か――「ニュース・プラス1」の当日配信が、答えの1つだ。ニュース動画のネット配信は珍しくないが、テレビで放送した番組をそのまま、2時間後に配信するのは国内初の試みだ(関連記事参照)。
東京・汐留にある日テレ本社。午後5時50分の放送開始と同時に、ネット配信向けエンコードが始まる。編集ブースでは、権利の関係で配信できないコンテンツが抜かれ、再エンコードに回る。
例えば、トリノ五輪の映像はネット配信が一切不可。著作権のある音楽やタレントの出演部分など、権利者との合意が取れていない内容も全カットだ。27分間の番組を数十分で編集し、配信可能なコンテンツに仕上げる。テレビとネットのスタッフが協力し、時計をにらみながら作業を進める。
権利フリーの素材だけを使った“ネット専用品”を作れば楽になるかもしれない。しかしそうはしないし、そうしたくない。「プロの手による完成品」を、ネットに乗せたいからだ。
ニュース・プラス1は、日テレが創業から50年以上かけて培ってきたノウハウを駆使し、計算し尽くして構成した自信作。これをまるごと見せることが、テレビ局としての矜持(きょうじ)であり、“ネット的”な見せ方へのささやかな反抗でもある。
「新聞や雑誌は、これまで培ってきたノウハウを、ネット上では簡単に捨てている。それが理解できない」――同社報道局デジタル戦略担当部長の若井真介さんは言う。新聞のネット媒体の多くは、個々のニュースの見出しリンクを平坦に並べる構成。見せ方を工夫する余地は、紙の紙面ほどにはない。
「“ネット的”なことは、やろうと思えばできると思う」――若井さんは、自らが「ネットの素人」と認めた上でこう話す。短いニュースを分野別に整理し、リンクをずらりと並べ、検索窓やランキングを付ける――そんなシンプルなサイトを作ることは、難しくはない。
ただ、そんなサイトはおそらく、新参のネット企業でも作れる。ニュース・プラス1は、日テレでないと作れない。“テレビ局でないとできない何か”をネットに持ち込もうと、日テレは試行錯誤を続ける。
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