本当に同じ人が作ったのか――2つの動画を再生すると、楽曲のクオリティの差に驚くだろう。
2007年に投稿された「中二の俺がスーパーマリオブラザーズを頑張って耳コピしてみた」と、その7年後、2014年に投稿された「【カービィアレンジ】そらをこえていくたび」。両方とも同じ人の作品だが、前者はリズムも音も珍妙で、聞くだけで笑いがこみ上げてくる仕上がり。後者は原曲のメロディと雰囲気を再現しながら、広がりのある美しいアレンジになっている。
その成長ぶりはネットユーザーを驚かせ、ニュース記事で取り上げられるなどして話題に。後者の動画には「マリオ見てからこっちくると別人だわ」「人ってこんなに成長できるのか」「ここまで変われるのはスゴイよ、ほんと」など、驚きと賞賛のコメントがあふれている。
「曲を作るのが楽しくて好きで、夢中でやっていたからこそ、今があると思います」――2曲の作者で、現在は都内でフリーランスの作曲家として活動している黒魔さん(21)は、控えめな物腰でこう語る。成長の秘訣は「とにかく作ること」。曲作りにひたすら打ち込み、年間100曲以上作った年もある。
出身は青森県八戸市。小さいころは友達が少なく、いじめられっ子だったが、絵を描いたり物語を考えたり、音楽を作るのが好きだった。初めて“作曲”したのは小学3〜4年生のころ。6つ歳上の兄に教わりながら、ループ素材を張り付けるだけで簡単に曲が作れるWindowsソフトをいじっていた。
テレビゲームも好きだった。「お小遣いがあまりもらえなかったので、兄が持ってた古いハードで遊ばせてもらっていました。ファミコンのスーパーマリオで遊んだり、周りがポケモンのルビー/サファイア(04年発売)で盛り上がっているころ、金/銀(99年発売)で遊んだり」
ゲームで遊んでいる最中も、音楽を聴いていた。ゲームのBGMを再生できる「サウンドルーム」コーナーのあるソフトに出合うとテンションが上がったし、RPG「クロノトリガー」のフィールドBGMが好きで、キャラをフィールドに立たせたままゲームを放置し、宿題をしながら聴いていたこともある。
作ることなら何でも好きだった。中学のころ、小説やイラストを公開しているチャット仲間に触発されて個人サイトを開設し、ペンタブレットで描いた自作のイラストを公開したり、ブログで小説を公開していた。プログラミングをかじり、簡単なWindowsアプリを作ったこともある。
「中二の俺がスーパーマリオブラザーズを頑張って耳コピしてみた」を作ったのは、実際に中学2年生だったころ。兄に紹介してもらった作曲ソフト「Singer Song Writer」を使い、マリオの地上BGM(「1-1」など地上面で流れるBGM)を譜面に再現する“耳コピ”を試していた。当初は公開するつもりはなく、遊びで作っていたという。
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