PFUがプログラマ向けにラインアップする「Happy Hacking Keyboard」(以下、HHKB)に、シリーズ生誕10周年を記念した限定モデルが登場する。「HHKB Professional HG JAPAN」と「HHKB Professional HG」の2モデルで、価格は前者が50万円、後者が25万円(ともに税別)。アルミシャーシベースのファーストロットを100台用意し、すべて受注生産となる。
「HHKB Professional HG JAPAN」は、キートップのコーティングに伝統工芸技術である輪島塗を採用した特別モデルだ。石川県の輪島塗工房「大徹漆器工房」の職人が国産の天日黒目漆を用いて1つ1つ丹精を込めて仕上げる、いわば“工芸品”。珪藻土の下地に10回にわたる塗りのプロセスを繰り返し、最後に金粉をまぶすことで、キートップの角の部分にも漆を定着させているという。
基本的なスペックは従来のHHKB Professionalシリーズを踏襲しており、3000万回以上の打鍵に耐える静電容量無接点方式を採用する。US配列の60キーで、キーピッチは19.05ミリ/キーストロークは4ミリ。ただし、アルミシャーシとともにマウント基板の設計も変更し、ビスの数から再調整をしたほか、内部の最下層には吸振素材を張り込むことで静音性にも配慮している。本体サイズは297.4(幅)×123.6(奥行き)×40(高さ)ミリ、重さ1100グラム。なお、製品の出荷は受注から3カ月後となっている。
――輪島塗を採用したのはどうしてですか?
松本氏 PC関連の製品は性能やコストが重視される傾向にありますが、キーボードは人が手を触れる部分です。人によっては箸と同じように毎日でも使うでしょう。それならばとことんまで質感を追求したモノがあってもいい。その点、輪島塗は抗菌性と保湿性だけでなく耐久性が高いことでも知られており、“高級IT文具”としてのキーボードとベストマッチングだと考えました。また、同じ石川県の同郷として、伝統工芸の復興に繋げたいという思いもあります。
――限定モデルとはいえ、量産されるキーボードで50万円という価格設定は前代未聞ですが。
松本氏 実は100万円にしようというプランもあったんですよ。今回のモデルは無刻印(キートップに文字の刻印がない)となっていますが、その部分を金の蒔絵で刻印したり、もっと細部を作り込んだりするというアイデアはありました。しかし、やはり実際に購入して使っていただきたいということで、現実的なぎりぎりのラインが50万円という提示になっています。ちなみにこの価格なので、側面には盗難防止のケンジントンロックがあります(笑)
――気になるのはやはり耐久性です。電気的な部分は3000万回以上を謳われていますが、“塗り”の部分はどうなのでしょうか。
松本氏 輪島塗というのは非常に耐久性の高いコーティングで、通常のタイピングで“塗り”が剥げることはありません。10年は確実にもつと言われています。もちろん経年変化はしますが、これは“味”の部分で、金が沈み赤が鮮やかに際立ってきますし、表面は飴色に変わり、透明感が増してきます。ただ、強い衝撃などで破損した場合などは、有料での修復サービスなども予定しています。
実際に50万円のキーを叩かせてもらったが、しっとりと指に吸い付くような質感は、毎日でも触っていたい気分にさせてくれる。なお、同じシャーシを採用する「HHKB Professional HG」の仕様は、キートップの仕上げ以外はHHKB Professional HG JAPANと共通。カラーリングは白と墨で、標準と無刻印の計4モデルが用意される。こちらは受注から出荷まで1.5カ月となっている。
実際に触れてみたいという方は、東京南青山の筆記具専門店「Pen Boutique 書斎館 Aoyama」と、東京原宿の提案型雑貨店「AssistOn」で展示・販売が行われるので、足を運んでみてはいかがだろうか。
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