駅構内やショッピングモール、デパートなどに設置されているゴミ箱が満杯で「ゴミが入れられなかった」という経験はないだろうか。
無理やり押し込むにも他のゴミを触ってまで片付けたくないという意識から、仕方なく下に置いたり、中途半端に入れたまま立ち去ったりしたことがある人もいるだろう。
今回は、そんな問題を解決し、さらに清掃員の負担も解消してくれる「スマートなIoTゴミ箱」が、シンガポールで試験導入されているのでご紹介したい。
シンガポール西部ブキバトックにある地域住民が集まる施設「ホンカー・コミュニティー・クラブ」で試験的に導入されているスマートなゴミ箱「Clean CUBE」は、満杯のまま放置されることがない。
Clean CUBEはゴミの量を3段階に分けて検知し、少ない順に「緑」「黄」「赤」のサインを出してゴミ箱の外側に表示してくれる。次に、Clean CUBEは容量の満杯が近づくと担当清掃員の携帯にショートメッセージを送信。ゴミがあふれる前に対処できるのだ。
また、ゴミを圧縮できる機能も付いているため、容量も通常の同じサイズのゴミ箱と比べて約8倍だという。
日中は常に30度を超える熱帯雨林気候のシンガポールでは、ゴミ箱のチェックのために毎回足を運ぶ清掃員にとって体に負担がかかる。しかも、彼らの多くは年配者たちだ。清掃員にとってゴミの量を通知してくれるClean CUBEは「作業効率が上がる」と好評だ。
シンガポール大手紙「The Straits Times」によると、試験的に設置されているコミュニティ・クラブではたらく清掃員は、以前は1日に3、4回ゴミ箱のある場所まで行って確認していたが、現在はゴミ箱のカラーサインを遠くからチェックするだけで済むという。また近くに住む女性は、「あふれたゴミに群がる鳥や虫がいなくなり衛生環境も改善した」と、実用化を歓迎している。
ただ、これだけ高機能なゴミ箱だと、気になるのは設置するための初期費用だ。シンガポールで使用されている通常のゴミ箱の値段は120〜130シンガポールドル(約1万円)。それに比べて、Clean CUBEは3500シンガポールドル(約28万円)。コストが高すぎると、実用化のハードルになってしまう。
開発元である韓国の企業「Ecube Labs」は、ゴミ箱側面のLEDディスプレイからの広告収入や、ゴミ収集作業の効率化から生まれる人件費削減で、どうしても高くなってしまう初期費用に解決策を見出そうとしている。ソーラーシステムが内蔵されているため、ランニングコストの削減にも一役買いそうだ。
シンガポールでは2015年、チャンギ空港第3旅客ターミナルやスポーツ総合施設「シンガポール・スポーツ・ハブ」などでも試験的に導入され、今後もさまざまな場所で試験利用される予定だ。
同国のゴミのポイ捨てに対する罰金は最高1万シンガポールドル、日本円にすると約80万円。Clean CUBEの実用化が広がれば、国民の美化意識が高いシンガポールの街並みもますますきれいになるだろう。
(※相場は全て2016年3月1日現在)
執筆:中井千尋(編集協力:岡徳之)
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