Intelは6月4日、COMPUTEX TAIPEI 2024の基調講演において、次世代のモバイル向けCPU「Lunar Lake」(開発コード名)の技術な概要を明らかにした。
本製品はCPUコアやGPUコアの設計を刷新しており、今後のIntel製CPUの主流アーキテクチャになると推測され、大きな注目を集めている。ただし、本製品は現行の「Core Ultraプロセッサ(シリーズ1)」(開発コード名:Meteor Lake)の純粋な後継製品というよりも、より薄型の“リアルモバイルPC”向けのCPUになるのだという。
Lunar Lakeの製品名、仕様や詳細なラインアップは2024年秋以降に明らかとなる見通しだが、いわゆる「AI PC」としての性能を強調していることもあり、順当に行けば現行製品と同様に「Core Ultraプロセッサ」として登場することになる。
本発表に先立って、同社は報道関係者向けの説明イベント「Intel Technology Tour 2024(ITT 2024)」を開催した。この記事では、イベントの基調講演で明らかとなったLunar Lakeの基本情報と概要、そして重要なポイントについて詳細な情報をお届けする。
なお、内部の各機能やアーキテクチャの詳細については、追って別の記事としてお届けする予定だ。
Intelは2006年から、「Core」ブランドをメインに据えてCPU製品を展開している。2008年に「Core i3/i5/i7」のグレードを導入して以来、途中に最上位グレードとして「Core i9」を追加したことを除いて14世代(≒14年間)に渡って、いわゆる「Core iプロセッサ」を展開してきた。
しかし2023年、同社はCoreプロセッサの“リブランド”を発表。従来のCoreブランドからは“i”が取り除かれ、上位モデル向けブランドとして「Core Ultraプロセッサ」が登場することになった。
今回の話題の中心となるLunar Lakeは、(まだ)新しいブランドであるCore Ultraプロセッサの新製品として登場する見通しだ。ただし、先述の通り現行のシリーズ1と比べると、より高い省電力性を求められる、リアルモバイルPC向けの製品として訴求される。
なお、2024年内にはデスクトップ向けとして初のCore Ultraプロセッサとなる予定の「Arrow Lake」(開発コード名)の登場も控えており、こちらは「最高性能のCore Ultraプロセッサ」として、期待が高まる。
Lunar Lake/Arrow Lakeの次のCPUは、2025年に登場予定の「Panther Lake」(開発コード名)となる。Panther Lakeは名前こそ出てきているものの、その詳細は明らかとなっていない。今回のイベントで使われた図版を見る限り、現行のCore Ultraプロセッサ(シリーズ1)と同様に性能重視のモバイル向けCPUとして登場するものと思われる。
5月に掲載された記事にもある通り、Lunar Lakeの量産は既に始まっている。Intelのミッシェル・ジョンストン・ホルタウス氏(クライアントコンピューティンググループ エクゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー)によると、20以上のPCメーカーが、80種類以上の製品の開発を進めているという。
また、ソフトウェア開発者向けに「Lunar Lake開発者キット」という小型デスクトップPCを提供し、アプリにおけるAIの利用を促進していくという。
Lunar Lakeでは、Meteor Lakeと同様に異なる種類のタイル(ダイ)を“連結”する「タイルアーキテクチャ」(チップレット技術)を採用している。タイルの連結にIntel独自の「Foveros技術」を適用していることも同様だ。
本CPUの場合、メインとなる「Computeタイル」と、周辺I/Oをつかさどるチップセット的な役割を果たす「Platform Controllerタイル」を「Baseタイル」を介して連結する構造となっている。
ComputeタイルはTSMCの「N3Bプロセス(3nm)」、Platform Controllerタイルは同じくTSMCの「N6プロセス(6nm)」を採用している。後者が数世代枯れたプロセスを採用しているのは、コスト的な理由とComputeタイルよりも高い電圧を取り扱うダイとなるため、配線幅が太い方が電気的に安定するためだ。
一方、BaseタイルはIntel内製で、事実上「配線しかないダイ」(トランジスタのないダイ)となる。「配線の微細度が高い基板」だと考えればいいだろう。製造プロセスには「1227.1」という記号名称が与えられているが、実態としては22nmプロセスだそうだ。
Lunar Lakeのパッケージ上には、LPDDR5X-8500規格のメモリチップが直接スタックされている。総容量は最大32GBで、半分の16GBモデルも設定される見込みだ。
メモリインターフェースは16bit×4チャンネルとのことで、64bitバス接続ということになる。メモリー帯域は毎秒68GB。Meteor Lakeでは毎秒120GB(LPDDR5X-7500メモリ利用時)だったので、速度的には約半分程度となる。
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