国内最大級のPC生産体制を誇る島根富士通が、2024年度の企業方針として「みがき上げる」を掲げた。2025年度以降に国内におけるPC需要が大幅に増えるという見通しが強まる中、「ものづくりのブラッシュアップ」「ロボットによる生産性向上」「人の成長支援」の3点を軸に、旺盛な需要に応える生産体制の強化に取り組む1年と位置付けた格好だ。
その一環として、同社は「ものづくりセンター」を新設し、デスクトップPCの生産ラインに「パレタイズロボット」を新たに導入した。同社の神門(ごうど)明社長は、「いま一度、基礎を徹底することで、ものづくりをブラッシュアップしていきたい」と語る。
この記事では、FMV(LIFEBOOK/ESPRIMO)の“ふるさと”でもある島根富士通の、2024年度の取り組みを追う。
神門社長が「みがき上げる」というメッセージを打ち出した背景には、ものづくり企業として、改めて原点回帰を図る狙いがあるという。
神門社長 島根富士通ではここ数年、「スマートファクトリー」を実現するための取り組みを強化してきた。プリント基板製造の完全無人化や、AGV(無人運搬車)による運搬の自動化、組立ラインにおけるロボットの導入、データを活用したものづくりの改善などに取り組んできた。
これらのベースにあるのは“カイゼン”への取り組みだが、そのマインドが薄れているという危機感がある。2024年度は、カイゼンマインドを改めてみがき上げ、その上でスマートなものづくりを推進していく姿勢を打ち出した。
その象徴的な取り組みが、神門社長の肝入りで新設された「ものづくりセンター」である。同センターは4月に設置されたばかりで、長年のものづくり経験者をリーダーに据える一方で、若手社員も参加させているのが特徴だ。
同社ではこれまでにも、トヨタ生産方式をベースにした「富士通生産方式」(FJPS:参考リンク)の定着を図るために「生産革新センター」を設置していた。しかし、FJPSの定着に手応えが得られたことから、この組織を解消した。
ところが、コロナ禍を経て事業環境は大きく変化した。そのことから改めて今回、ものづくりセンターの設置を決断したのだという。
多くの企業は「働き方改革」によって柔軟な勤務体系の実現を目指している。その一方で、主に少子高齢化に起因する「人材不足」も大きな課題として横たわる。生産性の向上は、企業にとって避けては通れない課題の1つだ。
このことは、島根富士通も例外ではない。ものづくり改革を進めると共に、生産性向上への取り組みは必至となっている。
神門社長 若手社員を中心にいま一度、ものづくりの基礎を徹底することで、現場の改革を図っていく。新たな機器を導入したり、デジタルを活用したりといったことだけでは、ものづくりは進化しない。ものづくりの“ブラッシュアップ”が、重要なテーマとなる。
同社では、従業員への教育機会の提供にも継続的に取り組んでいる。2023年度は就業時間の4%分の教育機会を用意し、受講実績は3.4%となった。それに対して、2024年度は就業時間の5%分の教育機会を用意し、3.7%の受講実績を目指すという。具体的には、1人当たり年間70時間の教育を受けてもらうことを目指すそうだ。
この目標を逆算すると、全社員が月平均で約6時間を教育時間に割くことになる。生産ラインが毎日稼働している現場(工場)として、これは十分に高いハードルだ。しかし、この取り組みは全社を挙げた重要な取り組みとして位置付けられており、一般教育だけでなく、現場で役立つ専門教育にも多くの時間を割り当てている。
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