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黙食が見直された給食の時間。机を向かい合わせにして談笑する子どもの姿が見られた=神戸市西区、井吹の丘小学校
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黙食が見直された給食の時間。机を向かい合わせにして談笑する子どもの姿が見られた=神戸市西区、井吹の丘小学校
児童数の多いクラスでは、前を向いて食べるスタイルが続く=神戸市西区、井吹の丘小学校
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児童数の多いクラスでは、前を向いて食べるスタイルが続く=神戸市西区、井吹の丘小学校

 「学校給食の黙食が見直されたのに、子どもたちは全員前を向いて座り、静かに食べています。これでは黙食のままではないでしょうか」。神戸新聞社の双方向型報道「スクープラボ」に、兵庫県明石市の保護者からこんな疑問が寄せられた。先月、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類となり、「黙食は必要ない」とする国の指針も示された。学校現場を訪れてみると、すんなりとはコロナ禍前に戻せない事情が見えてきた。(大橋凜太郎)

 取材に協力してくれたのは、神戸市西区の井吹の丘小学校。給食については一律の対応をせず、担任が各学級の状況に合わせて指導しているという。

 1年生のクラスをのぞくと、少し距離を取りつつも、コロナ禍前のように机を向かい合わせにしている子どもたちがいた。

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 「今日のおかずはひじきかあ」「ちょっと量が多いんちゃう?」。配膳から和気あいあいとした雰囲気で、「いただきます」の号令の後も会話が弾む。保育園では前を向いて食べていたという1年生の男子児童(7)は「静かな給食はさみしい。やっぱりこっちの方がいい」と満足そうだった。

 同校は「子どもの気持ちを第一にする」方針で、「班ごとに食べたい」という児童からの提案を受けて向かい合わせにするクラスもある。

 一方、6年生のクラスでは、全員が前を向いて食べていた。他学年に比べて1学級あたりの児童数が多く、適度に距離を取りながら机を向かい合わせにするスペースがないという。

 小学校での3年間の黙食が習慣化した高学年の児童には、「コロナ禍前」に戻すことへの抵抗感もあるようだ。6年生の男子児童(11)は「友達とはしゃべりたいけど、ちょっと戸惑うところもある。にぎやかな給食の時間に戻るのに、1年くらいはかかりそう」と話していた。

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 新型コロナの拡大後、政府は対処方針に「飲食は黙食を基本」と明記した。文部科学省のマニュアルも「机を向かい合わせにしない」「大声での会話を控える」といった表現になり、実質的に黙食が行われた。

 潮目が変わったのは昨年11月。政府の方針から黙食の記述が削除され、文科省も「給食中の会話は可能」とした。今年5月の5類移行後は、黙食は不要とし、各市町の教育委員会も、段階的に方針を変えた。

 神戸市教育委員会は、昨年度の3学期から「大声は控えてもらうが、会話は可能」と緩和し、今年4月からは、1メートルの間隔を空ける条件付きで、向かい合って食べることを認めた。5類移行後は「特別な対策は必要ない」としている。

 同県姫路、西宮、尼崎、明石の各市教委も、同様の対応をとる。ただ、いずれの担当者も「1学級の児童数や子どもたちの様子など、学校によって状況が異なるため、すぐにコロナ禍前に戻すことはできない」と強調する。

 5類移行後の給食指導について、井吹の丘小学校の空井淳子校長は「『おいしいね』と言い合いながら食べることは、体と心の栄養を取る大切な時間で、人とのつながりも生まれる。時間はかかっても、コロナ前の状況に戻していくのが理想だ」と話す。

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