1903年生まれのエルマー・ホイラーは、20世紀半ばに大活躍した歴史的な営業講師・コンサルタント。10万を超える数のキャッチコピーを分析し、その効果を検証したことで知られています。半世紀以上前という時代性を考えると、この分野における先駆者的な考え方を持った人物であったことがわかるのではないでしょうか。
事実、やがて検証結果は「大多数の人に買わせるフレーズがある」という結論に結びつき、そこから「ホイラーの5つの公式」が生まれます。そしてこれが大きな話題を呼び、大手百貨店をはじめホテルチェーン、石油会社、クリーニングチェーンなど、さまざまな顧客の売り上げ向上を実現しました。
その公式を解説した『ステーキを売るな シズルを売れ!』(エルマー・ホイラー著、Pan Rolling)の原書が出版されたのは、1937年のこと。効果的なセールスのあり方を体系的に記した書籍として全米初のベストセラーとなりましたが、その本質たる「ホイラーの5つの公式」とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
ステーキを売るな、シズルを売れ!
『ステーキを売るな シズルを売れ!』(6ページ)
「シズル」というのは、ステーキを焼くときのジュージューという音のことですが、つまり、ステーキを売る際にはそれら「匂い」や「音」に目を向けろという考え方です。売り込む際に大切なのは「構造」や「作り」や「値段」ではなく、その裏側に潜む「買いたくなる理由」を探り出すことだというわけですね。
手紙を書くな、電報を打て!
『ステーキを売るな シズルを売れ!』(11ページ)
役立たないフレーズを使うことで、せっかくのセールスをだめにしてしまう危険性があるため、手紙は御法度。人は即断しがちなもの。だからこそ、彼らの評価が有利に働くように、できるだけ少ないフレーズを使って10秒で相手の注意を引きつけることが大切であると説いています。「電報」を「メール」に置き換えると、現代感覚にフィットすると思いませんか?
花を添えて言え!
『ステーキを売るな シズルを売れ!』(14ページ)
少しわかりにくいですが、これは「自分の言うことに証拠を添えろ」という意味。例えば、「お誕生日おめでとう」と言う場合でも、そこに花束を添えれば気持ちはより伝わりますよね。ちょっとした配慮が大きな効果に結びつくということです。当たり前すぎるかもしれませんが、当たり前すぎてなかなか実践できないポイントだとも言えそうですね。
もしもと聞くな、どちらと聞け!
『ステーキを売るな シズルを売れ!』(20ページ)
お客様に対して「買うか買わないか」と迫るべきではない。という意味。自分が客の立場だったときのことを考えると、非常にわかりやすい鉄則であるといえます。さらに、大切なのは「どちら」という言葉の価値だとも。「これ」と「あれ」の、「どちらかを選ばせる」ことが重要だということですね。
吠え声に気をつけろ!
『ステーキを売るな シズルを売れ!』(26ページ)
子犬は、吠える声としっぽの振り方だけで驚くほど多くの情報を相手に伝えることができます。つまり、これを応用しない手はないということ。一本調子になりがちな話し方に変化をつけるだけで、話を聞き手に興味深く伝えることがきるというわけです。
いかがでしょう。いまなお営業マン、マーケッターのための古典的名著として読み継がれているという事実にも充分納得できませんか? 活用できる部分は他にも多いので、ぜひご一読をお勧めします。
(印南敦史)