“スガコバ”コンビ復活が大きい
1か月超のハワイ自主トレでは、「毎日200メートルダッシュ10本」という走り込みに加え、肩周りや胸郭などの柔軟性や可動域を広げるトレーニングに取り組んだ。握る力と捻る力を鍛えることにも重点を置いた。
「体の軸がしっかりしたことで、トップの形をしっかり作ることができています。タメが生まれて左肩の開きが抑えられ、ボールを上からリリースできるようになった。体重移動もスムーズで、ストレートの威力とキレが増し、持ち球のスライダーやシュートの制球力もよくなりました。特にフォークボールの精度が上がって要所を締めることができる。すべてがいい方向に向かっています」(前出・西本氏)
「同級生の小林誠司との“スガコバ”コンビ復活が大きい」と話すのは阪神で“江夏豊の専属捕手”と呼ばれた辻恭彦氏だ。
「安心感からか、小林の構えたミットに投げようとする菅野に余分な動作がなくなりました。投球がシンプルになったことで、2年連続で沢村賞(2017、2018年)を獲得した頃のピッチングに戻った。私も江夏とバッテリーを組んでいた時代、どうすれば力が発揮できるかを考えてリードし、結果を出すことで江夏も安心して投げ込んできました。小林も同じで、スッと構えるから菅野も迷いなく投げる。そんな信頼関係が構築されています」(辻氏)
前出・西本氏も、「安心感があるのでしょう。小林が次に何を要求するかわかっているから菅野も首を振ることも少なく、いい投球リズムで投げています」と、2人を組ませた阿部慎之助監督の采配を評価している。
ペナントレースも大詰めを迎え、完全復活したエースにV奪還が託されている。
取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2024年10月4日号