“母親にならなければよかった”?女性たちの葛藤6000 人アンケート結果
ことし春出版された1冊の本『母親になって後悔してる』が反響を呼んでいます。
「子どもは愛している、それでも母親であることを後悔してしまう」という女性たちの思いがまとめられています。
こうした思いを抱える母親はどのくらいいるのか、なぜそう思っているのかを知りたいと、
NHKではアンケートを実施しました。
そこから見えてきたのは・・・?
(クローズアップ現代 取材班)
クローズアップ現代「“母親の後悔” その向こうに何が」
取材した内容は、2022年12月13日(火)に放送しました。
3人に1人が「母親にならなければよかった」と思ったことがある
「母親にならなければよかった」という思いを抱える母親はどのくらいいるのか、NHKでは先月、全国の10代から70代の母親にインターネットを通じたアンケート調査を実施し、6528人が回答しました。
インターネットによる調査(NHK・2022年11月実施)
全国の18歳から79歳の女性が対象
1次調査:母親6528人が回答
2次調査:「母親にならなければよかった」と思ったことのある1149人が回答
6528人の母親に、これまでに「『母親にならなければよかった』と思ったことがありますか?」と聞いたところ、64%の人が「1回もない」と回答しました。
一方で「1回だけある」が2%、「何回かある」が23%、「数え切れないほど何回もある」が7%となり、「思ったことがある」という人はあわせて32%、3人に1人という結果になりました。
7割が“子どものことを愛している”
「母親にならなければよかった」と1回以上思ったことがあると回答した人のうち、1149人に2次調査を実施しました。
「自身の子どもに対して、愛情や大切だという思いを持っているか」と尋ねたところ、「とてもあてはまる」と答えたのは72%、「ややあてはまる」は24%となり、96%の母親が「あてはまる」と回答。「母親にならなければよかった」と思ったことがあるという人の多くが、「子どもには愛情を持っている」ことがわかりました。
母親の後悔という感情と、子どもへの愛情という一見矛盾するような感情が両立していることを示す結果となりました。
母親にならなければよかった理由 「よい母親になれない」が最多
なぜ「母親にならなればよかった」と感じたのか、理由を複数回答で聞きました。
最も多かったのは「自分はよい母親になれないと思う」という回答で42%となりました。次いで「子どもを育てる責任が重いこと」が40%、「子どもとのコミュニケーションがうまくいかないこと」が39%となりました。
アンケートの自由記述欄には、「自分は良い母親になれない」という声がつづられていました。
「自分がいい母親でないと感じるから。ほかのお母さんをみているとすごいなと感心する」(30代)
「自分の思ういいお母さんにはなれなかった。もっと自分がしっかりしていたらとか考えてしまう。子どもがかわいそうだと思う事がしばしばある」(50代)
「自分は子育てに向いていない」という声もありました。
「家事も思うように進まない。子どもを連れてスーパーで買い物することもままならない。母親に向いてないのかと感じた」(30代)
「子どものわがまま等に怒ってしまったりした時に、子育てに向いていないのかなと思った」(20代)
「母親らしい細やかな対応が苦手な性格なので、向いてないのではと思うことがある」(60代)
「自分らしい生き方ができなくなった」という声もありました。
「『~ちゃんのママ』と言われるようになり、名前で呼ばれることすらなくなって自分のアイデンティティーが完全に失われた気分になった」(30代)
「常に自分を後回しにしなくてはならない。自分自身の学びや成長は考えられない」(60代)
“口に出せない” その裏に何が
「『母親にならなければよかった』という気持ちを誰かに伝えたことがあるか」と聞くと、
56%が「いいえ」と回答しました。
「伝えなかった理由」を複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「口に出してはいけないことだと思ったから」の55%でした。
次いで「母親になることを決めたのは自分だから」の35%、「子どもへの影響を心配したから」の24%となりました。
何を変える必要があるか? 「自分自身」が6割
「母親になったことを後悔しないようになるためには、誰が変わる、または何を変える必要があるか」尋ねたところ、最も多い回答は「自分自身」で61%という結果になりました。
次いで「子どもの父親・パートナー」が56%、「社会の価値観・意識」は46%でした。
自由記述欄には、社会や周囲が変わってほしいという意見も記されていました。
「子は宝だとみんな言うが、なにも支援されている気がしない。子育てするには大変すぎる。意見を言えば、考えずに勝手に産んだんだろうと批難され、ヘルプを出せない親が多いと思う」(30代)
「子育てしている時、とても苦しい時があった。毎日いつまで続くのかと悲しかった。子育て世帯の相談、支援機関があれば救われたかもしれない」(60代)
「社会が変わらないといつまでたっても子育ては母親だけに負担がかかる。父親が育児参加するための育休制度ももっと普通に使えるようになってほしい」(50代)
「当たり前に親、社会が子育てにかかわる。イクメンと言う言葉が無くなるような世の中になってほしい」(50代)
「一人一人がもっと余裕を持って生きられる社会になる事で、思いやりの心が持てるようになり、子育て中の人にも手を差し伸べられるようになると思う」(60代)
こうした結果について、家族社会学が専門で母親に関する研究をしている大阪大学の元橋利恵 招へい研究員は、「母親にならなければ良かった」と思ったことのある母親たちが、その感情を自分の責任と捉える傾向があることについて以下のように指摘しています。
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大阪大学大学院人間科学研究科 招へい研究員 元橋利恵さん
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「『母親にならなければよかったという感情を誰にも伝えなかったのはなぜか』という問いに、“決めたのは自分だから”を選ぶ傾向が強かったことは印象的だった。“母親にならなければよかった”という感情は、世間からは責任の放棄ではないかと受け止められる傾向があるが、アンケート結果からはむしろその逆の傾向がみられる。母親たちが子育てを自分の責任として強く受けとめ、“良い母親として責任を果たしきれていない”と葛藤している様子がうかがえる」
「若い世代にとっては特に、社会を民主的なプロセスで変えていくことへの実感が持ちにくい一方で、『自己責任』として問題を自分に引きつけて捉えて処理することがリアリティーを持ちやすい。今の社会では子どもを産むことが自己責任化していて、“自分で選んだのだからなんとかするべき”、“周りに迷惑をかけないでほしい”といった声に直面し、その結果、母親としてのしんどさや困っている状況があっても、“言ってもしかたない”と思うようになってしまうのではないか」
「自分の人生を生きられていない」が7割
母親が仕事でのキャリアを含む「望む生き方をできていると思うのか」についても聞きました。
「母親になったことで“自分の人生を生きられていない”と感じますか」と聞いたところ、「まったく感じない」が21%だった一方、「たまに感じる」が34%、「時々感じる」が25%、「よく感じるが」11%で、「自分の人生を生きられていない」と感じる人はあわせて7割にのぼりました。
「キャリアに影響」が4割 一方 母親からみた父親は…
「母親になってキャリアに影響があったか」聞いてみたところ、「マイナスの影響があった」は19%、「希望のキャリアを断念した」は18%で、あわせて37%でした。
母親に対して「子どもの父親のキャリアに影響はあったと思うか」と聞いたところ、「マイナスの影響があった」、「希望のキャリアを断念した」は8%でした。
自由記述欄には、キャリアと育児との狭間で悩む声も多く寄せられました。
「もっと思いっきり仕事ができた。夫に負けないくらい稼ぐことができた」(40代)
「子どもに熱が出たら仕事を休まないといけない。職場に迷惑がかかると追い込まれた」(30代)
「子どもが生まれてから職場での査定がマイナスになったり、昇給がなくなった。子持ちはいらないと間接的に言われているみたいで、結局退職した」(50代)
一方、「父親(夫やパートナー)は、子どもを持つ前と変わっていない」という声や、「母親と父親に対して社会が求めるものが違う」という声もありました。
「思い通りにいかない。父親は相変わらず自由にやっているのに私だけやりたいことができないと感じている」(30代)
「仕事は限られ、風邪を引いたら必ず母親が休む流れになったり、常に母親だけが負担をしなければいけない風潮がある」(30代)
「第1連絡先を配偶者にしていても、保育園・幼稚園・学校からの連絡は母親に入り、大事な仕事の最中でも呼び出しがあり、周りに迷惑をかける」(50代)
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大阪大学大学院人間科学研究科 招へい研究員 元橋利恵さん
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「女性が経済的に自立していなければいけないという規範が強くなっているなかで、仕事を続けて生活を支えることと、子どもや家庭を大切にすることとのあいだで、母親が常に引き裂かれながら、調整をして折り合いをつけなければならない社会状況がある。父親が仕事と家庭の調整をするということはあまり進んでいない一方で、母親たちが仕事と家庭の調整をすることが一般的になっている。自分のキャリアと子どもと家庭をどう守り、どこで諦めるのかを考え続けなければならならず、それが母親の役割や責任になっている」
「子どもを産み育てるなかで生まれる母親たちの問題は、母親自身だけが対処すべきものではなく、実際は社会や企業が追うべきものであるということを理解することが非常に大切だ。社会は育児などのケアを担う人が置かれている厳しい状況に無関心で、これまで母親に『タダ乗り』して責任を放り投げていたともいえるのではないか。『母親にならなければよかった』と話す人たちの声を文句やわがままと捉えるのではなく、子育ての責任を現に負っている人からの社会に対する重要な問題提起だと受けとめることがまずは必要だ」
国際NGO「SAVE THE CHILDREN」の「おやこのミカタ」に母親の相談窓口がまとまっています。
リンクはこちら(NHKサイトを離れます)
https://www.savechildren.or.jp/oyakonomikata/anata-no-mikata/soudan/
クローズアップ現代「“母親の後悔” その向こうに何が」
2022年12月13日(火)に放送しました。
みんなのコメント(318件)
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感想トレンドウォッチャー2025年1月5日
- これから産むつもりの人は、よほどの覚悟が必要だろうなーと思います。何の覚悟かというと、子育てでどれだけ苦しんでも、誰からも共感してもらえない孤独の中で生きる覚悟です。
職場で、世間で、子持ち様からさんざんマウントを取られたり蔑(さげす)まれたり、業務分担で割を食ってきた子なし勢・独身勢は、今まで受けた被害の分、子持ちの苦労を冷ややかに見る傾向があります。
「産まない」ではなく「産めない」女性に関して、社会全体が「石女」(うまずめ)などと称して長いこと蔑んできた歴史的背景もありますしね。
産まない人が増えるのに反比例して、産んだ人の苦労に共感できる人が減っていく。それが今後数十年間のトレンドかなと思っています。
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感想次世代2025年1月5日
- 「離婚したくても仕事につけなかった。小さい子がいると面接さえしてもらえない。子どもさえいなければ」と、母の愚痴のゴミ箱として十代を過ごした娘です。
女って、「都合のいい女になってはいけない」というくせに、家事も育児も介護も賃金なしで引き受ける、「男社会にとって」都合のいい女に易々となり下がりますよね。
押しつけられた?「引き受けた」んでしょ?世間並みになりたい、赤ちゃん抱っこしたいとかいうしょうもない理由で。誰かがあなたを監禁して、引き受けないと殺すと脅しましたか?
人間はお人よしの上に胡坐(あぐら)をかく生き物。その程度の理解をいい年した大人が持っていないことにあきれます。
こうした陥穽(かんせい)に陥ったのは、単に愚かだから。自分の愚かさを愛情や優しさというラベルでマスキングして次世代に間違った情報を伝えないで。
次世代が「自分を無にして誰かの犠牲になることが愛」と洗脳されて、同じことを繰り返さないように。
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悩みツラい2025年1月5日
- シングルなのですが、中学生になってから長男は周りにウソばかりついて悲劇のヒーローになり家出をして、その時もウソばかり言う長男に心身共に疲れ果ててたのですがそれから1年後、次は妹の長女がネットで知らない人にモノを買ってもらうという事を隠れてしていた事が発覚。
今までいろいろ向き合って伝えてきてたけどもう無理。口には出してないけど産まなければ良かったと思うし、このまま育ってもロクな人間にならないんじゃないか?と思うと一家心中するか。って考えがよぎることがある。
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感想同じく2025年1月4日
- 本当に思う。口に出せない、出してはいけない。でもおさえておけない
子供に言ってしまう悪い自分が本当に嫌。
でも放棄したい。
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悩みととろ2025年1月4日
- この記事を読んで、安心しました。子供を産んで苦しんでいるのは私だけじゃないんだと。
私は子供はかわいいけど、周りの目を気にしすぎて親でいることがつらくなることがある。お金もかかるし、キャリアも捨てた。子供を育てるのに、精神的、金銭的、時間的な負担が大きすぎる。楽しさより苦しさが上回ってる。
けど、自分が産んだんだから耐えなければ…と思って何ともない顔して生きてます。
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体験談月餅娘2025年1月4日
- お正月に祖父母の家に遊びに行くと、私の母とその姉である伯母との間がぎくしゃくするのが苦痛です。伯母は普通にしているのですが、夕食の席でお酒が入ると、母が「結婚もできなかったくせに」「子どもがいないくせに」と伯母に絡み始めるのです。
伯母は、そんな母を適当にいなして、祖父母に気を遣っています。寒くないか、おいしいか、何か取ってきてほしいものはないか、等々。
悪いけど、私のロールモデルは母ではなく伯母です。私の憧れの外資系某大手の部長職で、ワインセラー付きのマンションを所有し、ついこの間、キャッシュで北海道の別荘を買ったそうです。2か月もあるという有給休暇は、いつも海外に撮影旅行に行っており、アフリカや東南アジアの珍しい風景や植物の写真をたくさん見せてもらいました。写真のコンペでも何度も表彰されています。
結婚したとか、子どもを産んだとか、そんなことしか自慢することがないような人間にはなりたくないです。
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悩みトンビから生まれた鷹2025年1月4日
- 両親の仲が悪く、けんかすると母が「プチ家出」と称していなくなります。お金がないから、家出と言っても実家に逃げるだけなんですけどね。十代の子どもがいる大の大人が「プチ家出」…。反抗期の子どもレベルじゃん、とわが親ながら情けなくなります。
経済力を手放せば、夫は妻を見下し始める。こんなこと、私の祖母の時代から分かっていたことなのに、なぜ学習しないのでしょうか。父に見下されて傷ついた自尊心を慰めるため、おかしな意識高い系のオンラインサロンだかに課金して、それがこの間父にバレて叱責されたのがプチ家出の原因です。
頭の悪い親にウンザリです。もっといい家の養子になりたいな。
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感想令和っ子世にはばかる2025年1月4日
- 仕事でも有能で子どもは男女両方いて…みたいな女が「格上」という変な宗教に染まりきっている上司がいます。隙さえあれば、家庭と仕事の両立がいかに大変か、長々しい自分語りが始まり、最後は必ず、自分が女としていかに格上かをひけらかします。
でも、この間友達とデパートに行ったとき、見ちゃったんです。フロアに転がってギャン泣きする子どもを鬼の形相でどなりつけている上司を。現実の自分を捻じ曲げて、ひと昔前の格上女像どおりに取り繕って、いいお母さんぶらなきゃならない上司が気の毒になってきました。
「男はウザい」「結婚とか無理ゲー」「義理親といい関係つくるとかマジでありえん」「稼ぎも時間も自分のため。誰かのために、というなら、ペットの一択」というのが今の価値観だと思います。
ほんと、あの上司は、一体誰に対して、何のために、ああまでして格上女アピールしたいんだろうねと、友達とよくネタにして笑っています。
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悩みやめたい2025年1月4日
- シングルで子どもは2人。中学生と高校生。元夫は自由を求めて、子どもが小さい頃に職場の女と不倫して出て行った。養育費もなし。
子どもたちはその事実を知らずに育ち、今でも元夫と仲良く年に数回遊んでいます。私はシングルになってから休みは月2回程度で必死に仕事してきたけど、子どもたちは一緒に暮らしていないパパのほうがいいんだって。一緒に生活してたら、楽しいことだけじゃないもんね。
何のために、誰のために必死こいて生きてきたのか。私は何を守ろうと思ってたのか。一家心中のニュースを見て、すごく気持ちがわかってしまう。限界を超えて理性を無くしたら、ダメだと思う気持ちもなくなるんだろうな。
義母も高齢になり、「孫に使う体力もお金もないから、あんたが子供を産まなくて助かった」「自分たちのために生きられてうらやましい」と本音を漏らすようになりました。祖母は亡くなるときまで、私が好きな仕事に就いて、夫婦仲良く、ずっとおしゃれで若々しいことを本当に喜んでくれていました。「いい時代になったね」と。
母はスポーツ選手でしたが私を妊娠して引退しました。ずっと厳しく陰気な母親でしたが、子育てを終えて生き返りました。私が結婚してからは孫の面倒を見させられるのではないかと心配していたようですが、その心配もなくなり今は全てから解放されたように穏やかです。
今とても幸せですが、後ろめたさでいっぱいでもあります。