沢田研二
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ずぬけたロックンロールに艶やかな歌詞が「ジャスト フィット」
このアルバムの中で、個人的にもっともお気に入りで、何度も何度も聴いた曲、といえば「ジャスト フィット」に他ならない。「そうそう、私も」という人も多いのではないか。井上陽水バージョンでも知られ、彼のファンの中でも認知度が高い一曲である...
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井上陽水にしか書けない「ナンセンス・ダンディー」の世界
「意欲作」だ。「問題作」と言い換えてもいい。 「MIS CAST.」というタイトルからして意味深。このアルバム全曲の作詞・作曲を担当した井上陽水が「ミスキャスト」かどうかを問うているような感じがするからだ。 アルバムへの...
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三浦徳子の挑戦的な歌詞が30代の「ヤバい僕」を演出することに成功した
作曲=西平彰、編曲=白井良明という新作家陣に触発されたのだろうか。三浦徳子の歌詞も、かなり挑戦的なものとなっている。 歌われるのは、自分を愛してくれる女性がいるにもかかわらず「眠れない」「生きてない」、つまり満足できないとい...
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聴き手の度肝を抜くイントロなど、編曲・白井良明の手腕が素晴らしい
前々回書いた、この曲が聴き手に与える「どないなってんねん?」という印象は、多分に編曲家・白井良明の手腕によるところが大きい。 いきなり聴き手の度肝を抜くのがイントロである(一般的にイントロは編曲家に委ねられる)。 実...
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この曲の注目は作曲・西平彰が凝ったBメロの不思議な感覚
前回も述べたように、作曲は、この連載的には「4人目のエキゾティクス」=キーボーディストの西平彰。 リアルタイムの私は当然、西平彰という存在を知らない。その後、佐野元春を聴き出したのだが、当時の彼のバックバンド「ハートランド」...
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「どないなってんねん?」初めて聴いたとき、耽美退廃路線にのけ反った
「おいおい、どないなってんねん?」──白状すれば、当時、大阪の高校生にとっては、初めて聴いたときに、そう言いたくなる曲だった。 ジャケットをあらためて見つめる。何かの制服のようなコスチュームに身を包み、アコーディオンを下げて、...
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「STOP WEDDING BELL」のシャウトは必見
前回書いたように、ロックンローラーとしての沢田研二を尊重する立場からいえば、個別楽曲では、3曲目の「STOP WEDDING BELL」とラストの「素肌に星を散りばめて」が好みである。 先に後者について触れておくと、作詞は売...
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「日本人がもっとも小ぎれいだった時代」を反映したサウンド
1982年6月発売、約1年ぶりのオリジナルアルバムとなる。今回はロンドンではなく国内での録音(サウンド・シティ・スタジオ)。 全体を通して「都会的」とか「洗練」などの言葉が浮かんでくる作品だ。 私は82年を「日本人が...
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カップリング曲『ZOKKON』の歌詞に見て取れる佐野元春の影響の断片
この時期の沢田研二のシングルは、カップリング(B面/2面)のレベルも高く、元々はA面候補だったのかもしれないと思わせる出来である。 「渚のラブレター」のカップリング「バイバイジェラシー」や、「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」の「ジャン...
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イントロと歌い出しで不思議に耳に残る9th(ナインス)音のテクニック
沢田研二と佐野元春と大沢(現=大澤)誉志幸と伊藤銀次が、もし一緒に歌ったら──。 そんな豪華な組み合わせのコーラスがごくごく簡単に聴けるのである、「おまえにチェックイン」のイントロで。 この曲の編曲も担当した伊藤銀次...
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大沢誉志幸という巨大な才能を世に押し出した…この曲の最大のトピックだ
「おまえにチェックイン」というシングルの、ある意味、最大のトピックは、大沢(現=大澤)誉志幸という才能を世に出したことではないか。 大沢誉志幸は当時、渡辺プロダクション所属だったので、言ってみれば、沢田研二の内輪。クラウディ・...
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血が騒ぎ出すアメリカンな陽性ロックンロール路線
1982年も5月になった。 余談の多い連載だが、今回はいきなり余談。「おまえにチェックイン」の発売日は5月1日なのだが、同じ日に「スローモーション」というタイトルのシングルも発売されている。そう、この82年5月1日は、中森明...
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タイガースはアマチュア時代、スパイダースのファンクラブに入っていた
いくつか補足を。 この曲、ギターソロがいかにも唐突である。ニューウェーブ感のあるロックサウンドの中で、突然スパニッシュ風のアコースティックギターがソロを担当するのだから。 これには理由があった。はい、また出ました。本...
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この曲のMVPは岸部シロー 難なくこなす超絶高音ロングトーンが凄まじい
作曲はメンバーの森本太郎で、リードボーカルは沢田研二と加橋かつみで分け合っている。 テレビなどに出たときは、センターが沢田研二ではなく加橋かつみで、沢田は加橋の右側のポジションだった。 このあたりにも、「同窓会」プロ...
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「色つき」ちゅうのが…“意識高い系”だった母親の苦言にあえて反論する
作詞は前作「十年ロマンス」に続いて阿久悠。 「この『色つき』ちゅうのが嫌やなぁ」──当時、テレビで歌っているザ・タイガースを見て、私の母親が放った印象的な一言である。私の母親は中学校の社会科の教師。今で言う「意識高い系」の女性...
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メンバー5人がCMに登場する「直接的タイアップ」が最大のヒットに貢献した
今年もよろしくお願いします。 さて、ザ・タイガースのこのシングル。すでに何度か触れているが、1980年から85年における、沢田研二(「同窓会」ザ・タイガース含む)のシングルで、もっとも高い売上枚数を記録したものである。 ...
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【年末特別企画】連載前半総括「レコード大賞」を発表! 作詞・作曲・編曲・歌唱…そして大賞は?
「週4日、ほぼ毎日かよ、書けるのか?」と思いながら始まったこの連載も、今年は本稿で終わり。いよいよ前半戦が終了。折り返し地点に差し掛かりました。 進んだのは、ザ・タイガースのアルバム「THE TIGERS 1982」まで。 ...
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自分たちの作るメロディーを歌うと決めた事実が、アルバムの価値を押し上げる
作詞陣の多様さ、言い換えればバラバラさも、アルバムとしての統一感を見えにくくしている。 阿久悠、橋本淳、山川啓介、加橋かつみ、糸井重里、山上路夫、近田春夫、安井かずみ、小泉長一郎、滝御夏子──。 グループサウンズ(G...
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世界最先端にニュー・ロマンティックなサウンドが、普通にお茶の間に流れていた驚き
「麗人」という漢字2文字のタイトル。日の丸や日章旗を使った、まるで海外から見た(ヘンテコな)日本像をモチーフにしたジャケット。ウルトラヴォックスのような激しいギターのコードストローク。楽曲全体に漂うエレクトロなテイスト。そして何といっ...
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「ピアノ」「しあわせ」「墜ちて行く」の歌詞に驚いた
沢田研二と阿久悠との関係が復活している。「同窓会」ザ・タイガース「十年ロマンス」に続いて、「麗人」の作詞も阿久悠、そして翌月リリースのザ・タイガース「色つきの女でいてくれよ」も阿久悠だ。 糸井重里や三浦徳子ら、戦後生まれの新...
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この曲で注目すべきは、歌い出し直前の歪んだ音のギターだ
「作詞=阿久悠、作曲=沢田研二、編曲=後藤次利」という何とも豪華、かつ今風にいえば「多様性」な組み合わせだ。 沢田研二によるメロディーは、前年の「渚のラブレター」「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」「十年ロマンス」同様、いたってシンプル...
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ジェンダーレスの概念なき時代に演じきった「艶姿」
さあ、この連載でもっとも派手な1982年を迎えた。 この年初のシングルは、まるで年賀状のようなジャケットだ。 船長のような白い服の沢田研二が真ん中に。その後ろは、旭日旗のような赤い放射型デザインに「WELCOME」と...
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1982年は34歳の「中年」沢田研二がド派手に立ち回る最後の1年に
一言でいえば「1980-1985の中で、もっとも派手な1年!」。 シングルは3枚。1月の「麗人」、5月の「おまえにチェックイン」、9月に「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」をリリース。 アルバムは2枚。6月に「A WONDER...
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10年の「人間」の物語は決して幻ではなかった
「十年ロマンス」は歌詞が冴えている。 70年代後半、沢田研二のシングルでヒットを量産した阿久悠が書いた歌詞は、ザ・タイガースの再結成ならぬ「同窓会」に対して沢田研二が抱えていた思いを十分に把握した視点から、言葉を紡いでいる感じ...
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タイトルの「十年」に込められた万感の思い
もう少し、ザ・タイガース「同窓会」への経緯を追っておく。 10年ぶりの集結については、沢田研二自身の意向が、かなり強く反映されていたようなのだ。1985年に発売された沢田研二の自著(玉村豊男・編)「我が名は、ジュリー」(中央...
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京都を起点に全国拡大したGSブームは、「応仁の乱」以上の騒ぎだった
「十年ロマンス」──ザ・タイガースの再結成シングルだ。ただ公式には再結成ではなく「同窓会」とされた。 ザ・タイガースとは、言うまでもなく、沢田研二が属していたバンドであり、グループサウンズ(GS)ブームの中で、トップの人気を誇...
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ジョン・レノン(5)ジョンを意識した出で立ちで沢田研二を取材すると「どっちが芸能人?」と
ザ・ビートルズのファッションは解散(70年)後も生き続けた。影響を受けた私の服装の記憶をたどってみると、まずはパリで沢田研二との話。74年秋、私は「シャンソン音楽コンクール」関係の取材でロンドン-マドリード-パリを回っていた。そのパ...
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歌謡曲としても立派に成立してて理想的やん!
ニューウェーブ、ロックンロール、そして歌謡曲。この3つをまんべんなく押さえ、相乗効果を持って融合し、そして、売れた。 「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」はある意味で「沢田研二の音楽1980-1985」のピークだと言えよう。 前...
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豪華かつ変わった組み合わせの「2面 ジャンジャンロック」がなかなかいい
カップリング曲について、ジャケットには変わった書かれ方をしている──「●2面ジャンジャンロック」。普通「B面」だと思うが「2面」。 と思って、これまで取り上げたシングルのジャケットを見たら「渚のラブレター」も「おまえがパラダ...
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クライアントの要請に柔軟に応える作詞家・三浦徳子の精神性
この曲の作詞家・三浦徳子の功績についても、触れておかなければならない。 プロデューサー・木崎賢治は、島﨑今日子「ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒」(文芸春秋)でこう語っている。 ──<加瀬さんと話し合ったアルバム...