(2025/3/5 05:00)

トランプ米政権の外交が目に余る。ウクライナとの確執が国際秩序を脅かしているだけではない。4日から4月にかけて発動する独善的な関税強化は、相手国との報復関税を招き、世界貿易を収縮させかねない。トランプ氏は日本も円安誘導しているとし、根拠もなく関税引き上げを示唆する。もはやディール(取引)と呼べない経済的威圧は、中国と何ら変わらない。関係国は結束し、暴走するトランプ政権に自制を促すべきだ。
トランプ米大統領は3日の会見で、4日からメキシコとカナダに25%の関税を課すと表明。すでに10%の追加関税を課している中国にも、同日からさらに10%を上乗せする。中国で製造した合成麻薬がメキシコ・カナダ経由で米国に流入していることへの制裁が、関税強化というのも筋違いだろう。両国の国境対策などが不十分であれば、対策こそ優先して促すべきだ。
メキシコとカナダ経由で米国に自動車を供給する日系メーカーへの影響が懸念され、輸入の8割を米国に依存するメキシコ経済も大打撃となる。中国とカナダは報復関税を講じる構えで、「米国第一」が自由貿易と世界経済に及ぼす影響を憂う。
トランプ氏は3日、日中も名指しで批判した。通貨安を誘導しているとし、是正されなければ関税引き上げの可能性を示唆する。日本の金融引き締めはむしろ円高に傾きやすく、トランプ氏の指摘は明らかに誤認。林芳正官房長官が4日の会見で「日本は通貨安政策はとっていない」と反論したのは当然だ。
トランプ政権は12日には鉄鋼・アルミニウムに25%の関税を課し、時期は不明だが欧州連合(EU)への25%関税も示唆。4月2日には非関税障壁も問題視する相互関税の導入を想定する。日本の自動車に対する環境規制や安全基準が非関税障壁とされる可能性には警戒したい。
トランプ政権の関税強化は米国のインフレを促し、自らの首も絞めかねない。「関税は我々を豊かにする」と思い込むトランプ氏に対し、関係国は2国間のディールでなく、結束して同氏の暴走に歯止めをかけたい。
(2025/3/5 05:00)
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