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株式会社ジェーシービー 様

伝送システムのファイル収集・配信にクリプト便を採用|PCI DSS準拠やユーザビリティの課題を解決

株式会社ジェーシービー

ジェーシービー(JCB)は他社との間でファイルを授受するために、外部のASPサービスを使用して伝送システム(Web EDIシステム)を運用してきましたが、既存のASPサービスの提供終了を機にクレジットカード業界のセキュリティ基準であるPCI DSSに準拠したクリプト便を採用し、安全・安心なファイル収集・配信を実現しています。

課題

  • 新Web-EDIシステムにはPCIDSSへの準拠や、ユーザビリティの向上に課題

解決策

  • Web EDIでのファイルの収集・配信部分にクリプト便を採用

効果

  • 安全・安心かつ使いやすい外部サービスを活用することで、システム運用負荷を削減
  • PCI DSSに準拠したサービスを採用することで、より簡易的にWeb EDIシステム全体のPCI DSS準拠を実現
  • クライアント証明書による多要素認証やマルチブラウザ、多言語対応により、ユーザーの使い勝手が向上

導入の背景や課題

既存のWeb EDIシステムで採用していた外部ASPサービスの提供終了にともない、新たな手段を模索

fig-9795JCB システム本部 インフラ開発部 オープンインフラグループ担当次長 験馬 一弘 氏

 

日本発唯一の国際カードブランドである株式会社ジェーシービー(以下、JCB)は、キャッシュレス決済の拡大と手段の多様化、異業種からの決済業界参入の活発化を背景に、新たなサービスを次々に展開しています。その中でシステム本部が重視している要素がセキュリティであり、アジリティ(機敏性)です。

験馬氏:

当社はクレジットカード情報という絶対に漏洩してはならない情報を扱う立場として、PCI DSSをベースに、それ以上の厳しいレベルの社内規定を独自に定め、それに沿って情報の管理に当たってきました。同時に、価値あるサービスをタイムリーに提供すべくアジリティも追求しています。

新たなプロジェクトの開発に年単位の時間がかかるようでは、その間にビジネス環境が変化してしまいます。クラウドサービスなど外部に任せられるところは任せることで、ビジネススピードを止めないIT環境の提供に努めています。

システム本部が支えるシステムは多岐に渡ります。各種社内システムにはじまり、それら社内システムと外部接続先システムとの間でデータをやり取りするEDIシステム、そして、社外の加盟店やフランチャイジー(FC)も含め、さまざまな人とシステムとの間でデータをやり取りする伝送システム(Web EDIシステム)も運用してきました。

以前のWeb EDIシステムでは、伝送サーバをはじめとする社内側の仕組みを独自に開発する一方で、ユーザーが端末からファイルのアップロード・ダウンロードを行う部分ではファイル転送機能を提供する外部のASPサービスを用いていました。独自に作り込み、工数をかけてメンテナンスするよりも、外部のサービスを活用する方が合理的だという判断からでした。

しかし2020年、そのASPサービスが終了するというアナウンスを受け、新たな手段を模索する必要に迫られました。

選定のポイント

PCI DSS対応など新システムへの課題を解決し、自力でのメンテナンスも不要なクリプト便を採用

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験馬氏:

Web EDIシステムは、ホストシステムなどで生成されたファイルを担当者に送信し、目視で確認してもらったり、担当者から社内システム向けに作成したファイルを送信するといった用途に活用されてきました。約3000名のユーザーが利用し、月に約26万通ものファイルがやり取りされる大規模な仕組みです。しかも重要データも含まれているためセキュリティも欠かせません。

当初、EDIシステムを拡張する形で内製する方法を検討しました。しかし、お客様とつなぐインターフェイスの部分は、メンテナンスなどを考えても、オリジナルで作り込むのではなく、広くあまねく使われているサービスを採用する方がいいと考えたのです。

クラウドベースのファイル共有サービスも候補に挙がりました。しかし、単に人と人の間でファイルを共有するのではなく、社内システムとの連携を前提にAPIも含めて導入するJCBの使い方ではコストがかさむことが判明しました。そんな中で浮上したのが、クリプト便でした。

験馬氏:

クリプト便は、取引先からのファイル受信で利用したこともあり、元々馴染みのあるサービスだった上に、以前のWeb EDIシステムで感じていた複数の課題も解決できる点が魅力でした。

新システムでのPCIDSS準拠に向けてもクリプト便は、オプションを組み合わせることでPCI DSSの基準に適合した状態で利用でき、我々が個別にPCIDSS各種要件の対応を図らなくても済む点がよいと考えました。

加えて、以前のASPサービスでは利用できるWebブラウザがInternet Explorerに限られていました。しかもユーザーが席を移動したり、外部からモバイル接続したりして端末に割り振られたIPアドレスが切り替わるとユーザの認証情報を継続できず、再度利用者情報を登録し直す必要がありました。

サポートするこちらの運用負荷も、利用者のストレスも高い状態だったので、それらを解決できる要件をすべて満たし、しかも運用コストも他に比べ安価であることが、クリプト便を選ぶ決め手になりました。

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導入の効果

既存のアカウント情報も移行し、これまで以上の使い勝手を実現

fig-9848JCB システム本部 インフラ開発部 オープンインフラインフラグループ 副主事 田平大貴 氏

 

JCBは2023年10月から、クリプト便を組み合わせた新たなWeb EDIシステムの運用を開始しました。これに伴い、社内のホストシステムなどからファイルの収集・配信を行う伝送サーバを、従来のオンプレミスからAWS上に移行しています。

田平氏:

事前にしっかりテストを行ったこともあり、システム側では大きなトラブルなく移行が進みました。検証環境が充分な期間用意されたため、早め早めに課題を洗い出し、プロジェクト全体を円滑に進めていくことができました。

どちらかと言えば時間を要したのは、Web EDIシステムを利用する「人」への浸透でした。利用者のITリテラシーはまちまちで、中には海外で利用されるケースもあります。

田平氏:

クリプト便で英語版のページが用意されていることも、海外向けの対応で役立ちました。さらに、以前のASPサービスのアカウント情報を、IDを変えずにそのままクリプト便へ移行させ、そのまま利用できる環境を整えたことも、負荷の軽減につながりました。

験馬氏:

もし新たなIDで登録していたら、おそらく多数の問い合わせに対応する必要があったと思います。

この結果、以前と同じアカウントで、以前と同じようにシステムと人の間でファイル授受が行えています。加えて、PCI DSS対応やマルチブラウザ対応、無線・有線LANで分け隔てなく利用できる環境が整ったのも、我々が自力で開発するのではなく、クリプト便を採用したことで得られたメリットです。

田平氏:

クリプト便はすでにPCI DSSに準拠しているため、伝送サーバ側だけにスコープを限定でき、負荷が下がっています。加えて、クライアント証明書による認証方式に変更したことで、ネットワーク環境が変わってもシームレスに利用でき、しかもEdgeやChromeからも利用できるようになりました。結果として『急に利用できなくなったのですが、どうしたらよいでしょうか』といった問い合わせがなくなりました。

また、取引先からセキュリティ監査シートの提出を求められた際の対応も容易になりました。例えば『適切なバージョンのTLSを利用していること』といった要件に自社開発のシステムで対応しようとすると時間がかかることもありますが、クリプト便では随時新しいセキュリティ要件に対応してくれているので、お客様に即座によい回答ができています。

今後の展望

汎用的な機能をクリプト便に肩代わりしてもらうことで、本来注力すべき新たな開発に専念

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験馬氏:

運用から半年以上が経過した新Web EDIシステムは、クリプト便のGUIの使い勝手の良さもあり、ユーザーから「どう使えばよいのだろうか」といった問い合わせはほとんどありません。また、管理者側の画面でも、ログ取得が容易になり、ユーザーのファイル取得状況などの報告に要する工数を削減できています。

伝送データには価値があるが、集配信手段そのものが価値を生むわけではないので、そこにJCBのオリジナリティを出していく必要もありません。そこをクリプト便に肩代わりしてもらうことで、安全、安心にファイルを届けられるようになっています。

今後も、セキュリティを確保しつつ、アジリティを持ってサービスの開発に取り組んでいくJCB。

験馬氏:

今や、システムを自分たちで持つ時代ではなく、よりよいクラウドサービスやSaaSを見つけ、組み合わせて提供する時代です。私たちのシステムもどんどん身軽にしていき、運用負荷や保守工数を減らし、限られたエンジニアのリソースをビジネス部門が期待するアプリやサービスを世に出す方に振り向けていきたいと考えています。

※本文中の組織名、職名は2024年7月時点のものです