「感想」とどう付き合えばいい?趣味は1秒でも長く楽しんだ者が優勝/カレー沢薫の創作相談
文/カレー沢 薫
「感想」との付き合い方をどうすれば…
「感想」は創作者にとっては酸素みたいなものです。創作をする楽しみという光合成でも辛うじて生きてはいけますが、たまには「他人の感想」という酸素も吸わなければ息が続きません。
つまり創作者の長生きの秘訣は「定期的な他人の感想の摂取」もしくは「神絵師の心臓をわさび醤油で食う」と言っても過言ではないのですが、創作者の息の根を止めるのも他人の感想だったりします。
実際、マシュマロのフィルターを巧みにかわした忍びの如き批判コメを食らって筆を折ったり、「あーもーやる気なくしたわ、しばらくyoutubeしか見る気しねーわ」という、お母さんに勉強しろと言われた中学2年生状態になったりしてしまう創作者は後を絶ちません。
創作を長く、そして楽しく続けるためには「感想」と上手くつきあっていくことが不可欠です。
ですが、その前に「感想との交際方法」を考える必要が出てきたという時点で、創作者として一門の人間になったということなので、まずその点を素直に喜びましょう。
「好きな絵師に感想を送りたいけど、キモがられそうで送れない」という、側溝で育ったのかと疑うぐらい自己評価が低いオタクの悩みをよく見かけると思いますし、そういうタイプでなくても、見ず知らずの人に「あなたの作品好きです」と告るのはなかなか勇気がいります。
つまり、あなたの作品は勇気を出す価値があるレベルに達しているということです。
また「望まないリプライ」に悩むようになったというのも「読む人が増えた」から起こる現象です。
今、大人気上映中の鬼滅の刃だって「おもしろさがわからない」という人間は一定数いるでしょうし、「みんなが見てるから見ない」という、自分で自分の人生の灯りを消している人間も大勢いるでしょう。
こういった「批判」や「逆張り」が現れるのは「母数」が多いから起こる現象です。逆に「好意的な感想しかない」というのはおもしろいからではなく、「いろんな意見が出るほど大勢に読まれていない」ということなので、特に商業作家にとってはあまり良いことではありません。
つまり、大手ジャンルに乗っているとは言え、あなたの作品には勇気を出して感想を言う価値があり、意に反した感想が来るほど大勢に読まれているということなので、まず創作者として自信をもってください。
「望まない感想を気にするな」は無理
それ故に発生してしまった「感想とどうつきあうか」という悩みについてですが「優しい感想をくれる人がたくさんいるんだから、わずかなモヤっとする感想なんか気にするな」と言う人もいるでしょうし、その通りなのですが、それは「無理」だと思いましょう。
美味そうなステーキが乗った皿にゆず胡椒がついていて「和風の味付けか~」と思っていたら「鼻くそ」だったと判明したとき「でもステーキが美味そうだからいいか!」と思えるでしょうか。
どれだけ皿に好物が乗っていようが、わずかでも鼻くそが乗っていれば、気になるに決まっているのです。
よって、気にすまいとして余計気にしてしまうよりは「意に沿わない感想は絶対に気になるもの」として割り切った方が、逆に気にならなくなります。
問題なのは、優しい感想よりも長い時間そちらに気をとられる、そちらの意見を重視してしまうことです。
人間というのは、1日の終わりに会社で褒められたことより、その帰りにウンコ踏んだことの方を反芻してしまうなど、良いことより嫌なことに貴重な時間と思考力を割きがちなところがあります。
それが必要なときもあるかもしれませんが、趣味というのは「1秒でも長く楽しい時間を過ごした人間が優勝」なのです。
つまり、モヤっとくる感想に悩んで、こんなところに相談を送っている時点でかなりのタイムロスであり、完全に予選敗退です。
あなたは「望まないリプライ」をもらったとき、それを何回も読み返し、さらにそれに対して延々と「最初からタメ口はどうかと思います~」「批評が欲しいわけではありません~」といったエアリプを心の中でしまくってないでしょうか。
どうせ実際リプはしないのですから、考えている時間もムダであり、何より気分が良くないでしょう。
それよりも好意的なリプを5万回見直した方が有意義です。
つまり、皿に鼻くそが乗っていたら迅速に二度と視界に入らないように遠ざけるか、一番最初に噛まず食って消化し、あとはステーキという好意的なリプに集中するように心がけましょう。
そのためには、ミュートやブロックと言った合法機能は積極的に使って、優しいコメントだけ来るようにカスタマイズしても良いと思います。
返信に関しても、プロフィール欄に「リプはタイミングがあったときにだけ返します」と一言そえて、しれっと気に入ったリプにだけ返信するというのもありです。
趣味は楽しいことが重要なのですから、害すものを排除することも大切です。それを怠ると早いうちに「疲れ」という、人が一番趣味から離れる理由が発生してしまいます。
私でも、モヤっとくるレベルのリプでカジュアルにミュートしていますし、ときにはエゴサで勝手に見つけた批判コメントすらミュートすることがあります。
そうやって批判的な意見も真摯に受け止めないからお前は売れないんだよと言われるかもしれませんし、反論もできませんが、創作をする上で一番大切なものはプロアマ問わず「モチベーション」です。それを著しく下げるものは、どれだけ貴重なご意見でも創作をする上では害悪なので、遠ざけた方が良く、仕事でないならなおさらです。
もし、ミュートなどは使いたくないというのなら、「モヤっとした感想はセルフ目つぶししてでも二度と見ない」など、望まない感想を気にする時間を極力減らし、好意的な感想の方に少しでも長く目を向ける訓練をしましょう。
「鼻くそを自ら深く長く味わうのをやめる」というのが、上手い感想とのつきあい方です。
ずっと中小ジャンルにおりましたが、最近人気ジャンルの二次創作を始めました。絵を描くこと自体はとても楽しいですし、いいねやRTも頂けるようになった一方で、望まないリプライなども受け取るようになりました。相手の方々に悪気があるというよりは、私の好き嫌いの問題で「初めて絡むのにタメ口」や「批評してくる感じの言い方」などが気になってしまいます。そういう感想を見ると自分がとても凹んでしまうことがわかっているので、「うれしい感想を言ってくれる人もいるかもしれないがリプライは全無視する」という方策を取っています。本当は優しい意見だけは見たいのですが……。
ネット上でどのように「感想」と付き合えば良いでしょうか。