検査院は「当初は29年度に繰り延べられていた更新費用が前倒しで発生することになるが、更新は緊急に実施しなければならないもので、セキュリティー上のリスクを考慮すれば、繰り延べるべきではない」と、費用がかかることに理解を示した。その上で、「東電はこうした点にも留意し、コスト削減計画を策定する必要がある」と注文をつけた。
重要インフラへのサイバー攻撃の脅威
実際、2010年にはイランの原子力開発施設の制御系システムがウイルス感染したとされる。内閣官房情報セキュリティセンターのまとめによると、国内でも、情報通信や航空、鉄道、電力などの「重要インフラ分野」の事業者から寄せられたサイバー攻撃の情報連絡件数は、23年度は15件だったのに対し、24年度は76件、25年度は133件と増加の一途をたどっている。こうした状況も踏まえ、警視庁公安部と事業者らは昨年、重要インフラを狙ったサイバーテロ攻撃を念頭に訓練を開始するなど、脅威への対応を強化している。
すでに東電はOS更新を終えた。とはいえ、コスト削減への重圧があったにせよ、当初の計画を立てたことへの疑念は消えない。「想定内」のはずのことが、「想定外」であってはならないこと、それを思い知っているのが、東電自身のはずなのだから。