<当時の出来事や世相を「12歳の子供」の目線で振り返ります。ぜひ、ご家族、ご友人、幼なじみの方と共有してください。>
いとこのお姉さんはこの春、四年制大学を卒業して、私でも知っているような有名企業に入った。4月に男女雇用機会均等法という新しい法律が始まって、去年ぐらいから女子学生も就職活動がしやすくなったと言っていた。ただ、実際に働いてみると、男の人ばかりの職場は大変らしく、仕事が回ってこなかったり、「女にはわからん」とか言われてしまうらしい。
それでもお姉さんは「これからは女性も男性と同じように働くのよ」が口癖で、夜中まで残業することもあるんだって。「キャリアウーマンだね」と言うと、恥ずかしそうに笑っていた。
国会でも9月に社会党の土井たか子さんが日本の政党で初めての女性党首として社会党の委員長になったし、女性の社会への進出がどんどん進むのかもしれない。
海外では1月、米国でスペースシャトルが打ち上げ直後に爆発したり、ソ連では4月にチェルノブイリ原発で大事故があったりした。特に原発事故は「日本にも放射能が来る」という噂が流れて学校でも怖くて話題になったが、男の子が「最近何となく調子が悪いのはそのせい」とか言っていたのはウソか考えすぎだったと思う。
その証拠に6月になると、男の子たちはサッカーのマラドーナという選手が手でボールを入れたマネをして、ふざけていた。「神の手ゴール」というらしい。私はよく知らないが、サッカーにはワールドカップという世界大会があってテレビでも夜中に放送しているようだ。日本は関係ないので私はまったく興味ないが。
私たちの学校でもちょっとしたいじめはある。ただ、ニュースで繰り返しやっていた東京都中野区の中学生の自殺は、いじめなんていうものではなかった。先生まで一緒になって生徒の机の上に寄せ書きを置いて「葬式ごっこ」とかしたらしい。「このままじゃ生きジゴクになっちゃうよ」。そんな遺書を残して亡くなったと聞いて、私まで気持ちが落ち込んだ。
この年は、アイドル歌手の岡田有希子さんもビルの屋上から飛び降りて亡くなった。学校に友達が持ってきた写真週刊誌にはその時の写真が載っていて、ちょっとやり過ぎだと思った。
何だか、1人の人を集中して追い詰めるような出来事が増えているような気がする。もっとも年末には、この写真週刊誌の編集部に、私の好きなビートたけしさんがたけし軍団を連れて殴り込みに行く事件があり、ちょっとスカッとした。
いとこのお姉さんは男性社員と同じように、頑張れば課長とか部長にもなれるらしいけど、私はお母さんと同じように専業主婦がいい。明石家さんまさんと大竹しのぶさんが出ていた「男女7人夏物語」のドラマに出てくるような、かっこよくておしゃれな働く女性になれる自信はない。
お姉さんによると、この年末くらいから景気がすごくよくなっているそうだ。お姉さんの仕事も急に増えたようで残業が続いているという。お姉さんが定年の60歳まで働くとすると、その頃は2024年くらい。まだバリバリ頑張り続けているのかな。
※厚生労働省によると、企業規模100人以上の課長級以上に占める女性の割合は昭和63年には1・4%だったが平成30年には11・2%に伸びた。