NTTコミュニケーションズは15日、スーパーコンピューターでは膨大な時間がかかる計算を短時間でできる量子コンピューターでも解読できない暗号技術を開発したと発表した。量子コンピューターが不得意な計算方法を使った暗号を複数組み合わせて情報漏えいを防ぐ。暗号を解く鍵にもセキュリティーを施しているため、通信全体の安全性を確保できるという。
NTTコムが開発した暗号技術は、量子コンピューターが苦手とする問題を基に設計された暗号アルゴリズム「耐量子計算機暗号」を複数利用。生成された暗号を解くための鍵も、外部から解読できないよう守られており、安全性を保っている。
ウェブ会議システムで実証実験を行い、スマートフォンやタブレット端末などでも、追加設定なしで安全に通信できることを確認した。金融サービスや防衛、医療など、高いセキュリティーが求められる領域での導入を目指すという。
量子コンピューターは2030年ごろの実用化が予想されている。米グーグルは昨年12月、スパコンで10の25乗年かかる計算を5分で完了できたことを明かしている。実用化に向け、さらに性能は向上するとみられ、悪意のあるハッカーが既存の暗号を無効化する懸念が広がっており、新しい暗号技術の開発が世界的な課題となっている。
内閣府は「量子技術イノベーションセンター戦略」で、次世代暗号技術を中核に位置付けているほか、金融庁も検討会を実施している。米国では国立標準技術研究所(NIST)が暗号技術の標準化の策定に取り組むなど、国内外で技術開発が進んでいる。(高木克聡)