選挙においてSNS(交流サイト)の影響力が強まる中、ときに投稿が虚偽の内容を含み過激化する要因の一つに、閲覧数などに応じて収益を得られる仕組みがあるとされる。より多くの関心を集めて収入増につなげる「アテンション・エコノミー」が、投稿内容の正確性や公平性を等閑視した形で広がれば、民主主義の土台である選挙は危機にさらされる。
ユーチューブでは、チャンネル登録者数や動画の総再生回数などが一定数を超えると配分を受けられる。Xでは、投稿の表示回数や他の利用者から共感を示す「いいね」の反応を受けた数などに基づく。
それぞれ多数の利用者と共有できるメリットがある一方、注目を集めようと偽・誤情報が投稿される弊害もあり、与野党は法的対応の可否を検討している。公選法の「虚偽事項公表罪」の適用範囲や対象を見極める構えだが、立憲民主党幹部は「投稿内容への直接的な制限は、憲法が保障する表現の自由に抵触する恐れがある」と懸念する。真偽を客観的に判断するのも容易ではない。
自民党は投稿者への収益配分などを巡り、党内議論を始めた。プラットフォーム事業者が違法動画の収益支払いを停止できるよう情報流通プラットフォーム対処法を改正する案も浮上している。
自民の閣僚経験者は「SNSをきっかけに選挙への関心が高まることは望ましいが、誤情報が当落を左右するなら、民主主義の危機だ」と指摘する。
議論の背景には昨年4月の衆院東京15区補欠選挙で、政治団体「つばさの党」メンバーが逮捕、起訴された事件もある。他陣営の街頭演説を拡声器で妨げたり、選挙カーを追い回したりした様子をユーチューブで配信して再生回数を稼いだ。