米関税発動、日本車メーカーの供給網に〝圧力〟 営業利益4割減試算も打つ手なく

メキシコ北部チワワ州の自動車機器工場に展示された自動車。米国への輸出拠点として多くの自動車メーカーがメキシコに工場を置いている=(ロイター)
メキシコ北部チワワ州の自動車機器工場に展示された自動車。米国への輸出拠点として多くの自動車メーカーがメキシコに工場を置いている=(ロイター)

米国が4日にメキシコとカナダへ関税を発動することで、日本の自動車メーカーは大きな影響を受ける。メキシコとカナダ両国を米国市場向けの輸出基地として整備してきたためで、サプライチェーン(供給網)や投資計画の見直しを迫られる恐れがある。基幹産業である自動車の一大事に日本政府も省庁をまたいだ対策の検討に奔走する。

世界2位の自動車市場である米国に輸出するため、日本の自動車大手は人件費の安いメキシコや自動車産業の集積が厚いカナダを重要な生産拠点として位置付けている。

メキシコにはトヨタ自動車や日産自動車など自動車大手4社の工場があり、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると日産は生産台数約61万台の約4割、トヨタは約25万台の約9割(いずれも2023年)を米国に輸出する。カナダではトヨタとホンダが工場を構え、米国に輸出している。

これまで貿易協定の条件を満たせば、両国から米国への輸出に関税はかからなかったが、前提が変われば輸出基地としての魅力は著しく下がる。

野村証券が、両国に25%、中国に10%の関税が課された際の影響を試算したところ、関税分を販売価格に転嫁しなければ、マツダは米国での営業利益が44%、ホンダは28%、トヨタは17%下がる可能性があるという。

高関税による収益減は戦略や投資の修正圧力となるが、関係者は「(投資戦略は)簡単に変えられない。各国の動きも含め様子をしばらくみる」と話す。現地には部品・素材メーカーなど関連企業も集積し、裾野に大きな波紋を広げる生産体制の見直しには簡単に踏み切れないのが実情だ。

「われわれにとって車はすごく大事。守るために政府全体で俯瞰して対策を考えている」。経済産業省幹部はこう訴え、日本企業の稼ぎ頭である自動車産業の防衛に向けて経産、外務、財務、防衛などの関係省庁担当者らで「対策会議」を重ねていることを明かした。

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